トラウマ抱えた冴えない男は、異世界で魔王を妻にします

ワスレナ

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第一章 クラヴェール王国編

第15話 「魔王の疼き」

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 わらわの名はクライスライン=リータ=レイア。リータ魔王国の魔王じゃ。

 よわいは言わぬが、先代魔王から引き継いで約三十年程になる。まだまだひよっこ魔王じゃ。

 わらわ達は人間の勇者共に攻略され、多くの配下を失い、不覚にも敗北をきっしてしまった。わらわの命もこれまでと覚悟しておったが、勇者の仲間とおぼしき奴がわらわを封印してしまいおった。

 封印されている間は不思議と居心地もよく、悪い気はせなんだ。身体のダメージも自然に治ってしまったしのう。

 じゃが、あやつ、なぜわらわを殺さなかったのだ? すごく気になる。もし願わくば、奴から訳を聞き出したいと思った。

 それからしばらく経ち、わらわの願いが通じたのか、何と復活を果たすことができたのじゃ。しかもわらわを復活させたのは例のあやつじゃった。

 何のために生かされたのか気になっておったが、何とこやつ、わらわに対して結婚を申し入れてきおった!!

 わらわは褒美ほうびを取らすつもりじゃったが、よりによってこのわらわと結婚したいじゃと!? まこと愉快ゆかいではないか。

 わらわはこやつの願いをかなえてやることにした。じゃが、この時から感じていたのかもしれない。わらわの中に今まで感じたことのない、変なものが芽生めばえた事を。

 それからこやつと色々経験したが、面白き事ばかりじゃった。こやつ、結婚を受けた理由を聞いてきおったから、面白きやつじゃからと正直に答えてやったわ。あの時の驚いたあやつの顔と言ったらなかったわ。

 いや、本当は正直ではなかったのかもしれぬ。わらわに根付き始めておる、かすかなうずきの事を……

 じゃが、わらわにもはっきりとはわかっておらなんだ。そのうずきが何なのかという事を。

 今は少しそれを理解するようになってきた。その時は無意識ではあるが、認めたくなかったのかもしれぬ。魔王であるわらわがそのようなものにとらわれ始めているかもしれないという事を。じゃが、不思議と不快な思いは無かった。

 タクトには、まだ黙っておくつもりじゃ。こんな事を言うとあやつをつけ上がらせるだけじゃからのう。

 そんな事よりも今後の事じゃ。タクトにはきちんと話さねばならぬ。わらわの国が直面している問題を。協力してくれるかはわからぬが、ダメならその時はまた考えるとするか。

 そして急ぎ再建せねばならぬ。この国をここで滅ぼすわけにはいかぬのだ。先代までの魔王達が築き上げてきたものを。わらわの代で終わらせるわけにはいかぬのじゃ。


 それがわらわの生きる使命でもあるのじゃからな。


                第一章 クラヴェール王国編 完

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ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回から第二章になります。お楽しみに。
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