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第一章 クラヴェール王国編
第14話 「後日譚」
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公開処刑の日の翌日朝、王族の機関は全国民に対し、国王クラヴェール五世の崩御と、新たな王として第一王子シルベールが、クラヴェール六世として即位する事を正式に発表したのである。
なお、戴冠式は一週間後に行われる予定となっている。
今回の騒動を引き起こした私達は、レガリック将軍からの上申のお陰で全て不問に付されたとの事である。今回の陰の主役は本件を一手に引き受けてくれたレガリック将軍で間違いない。彼にはひたすら感謝である。
将軍のほか、イグノール達とエレノーラ様も国王の参謀役として抜擢されるらしい。国民の最大の関心事、税金問題や物価高騰など、様々な問題が今後解決されることを陰ながら願うばかりである。
私とレイアはあの後、レイアの体調が普段と違いかなり消耗していたという事で、
イグノール達と別れ、魔王城に帰還して休養を取った。
そのお陰で、ふたりとも体調を回復でき、しっかりと夜の営みで愛を確かめ合う事もできた。
私達は先ほど朝食を済ませ、そのまま食卓でくつろいでいる。何でもレイアから大事な話があるらしい。
「タクト、大事な話の前に、一つ悩みがあるのじゃが、聞いてくれるか?」
「いいよ、何?」
「実はのう、つい二日前くらいからなのじゃが」
「うん」
レイアは右手を胸に当てて言う。
「この辺りが何かぎゅーっという感覚になるのじゃ」
「はあ?」
「昨日もそういうのと、ズキッという変な感じがあってのう、少し疲れておったのじゃ」
「そうなのか」
「何か変なものでも食したのじゃろうか。昨日なんか、タクトが急にわらわに口づけしおったじゃろ。そのせいかもしれぬ」
「そうなのか!? それは悪かった」
昨日はそんな話をしてなかったので驚きだ。図々しかったかもしれないと思い、謝っておく。
「うーん、どうだろう。でも、私なんか、レイアと出会ってからずっとそんな感じばかりだけどなあ」
「え? そうじゃったのか?」
「ああ。症状としてはちょっと苦しくなるやつだろ?」
「そうじゃ」
「私は毎日いつもだよ」
私が笑いながら言っているのを、レイアは心配げな表情で見つめる。
「病気ではないのか?」
「まあ、病気みたいなもんだけど、死ぬことは無いとわかってるからな。あ、でも、拒否られたら死ぬほど辛くなるよなあ」
「何?それはまことか!? わらわもそうなってしまうのか……」
急にレイアの表情が曇る。
「私も一度経験したけど、死ぬほど辛かったもんなあ。立ち直るのにかなり長くかかっちゃったし……」
私は過去を思い出し、懐かしみながらレイアに伝える。
「何か嫌じゃのう」
「今は薬ももう出てるし、心配ないからな。でもレイアは魔族だからならないって言ってたし、私とは違う原因なのかもな」
「そうなのか。一体何なんじゃろうな」
私は少し考えこんだ後、勧めてみる事にする。
「それじゃあ、気休めかもしれないけど、ヒールをかけておこうか」
「ああ、助かる。やってくれ」
「わかった」
私はレイアの傍に立ち、ヒールをかける。
「うむ。温かい感じがする」
「ついでにキュアもかけておくか」
私は目を閉じ、念を込める。
「キュア」
ほとんどはヒールで大丈夫だとは思うが、内臓や器官にも効くキュアを施した。ん? 魔族の体内にも効くのだろうか?
「色々かたじけない。これで治ってくれればよいのじゃが」
「そうだな。あとは様子を見るしかないかな」
そう言った後、ある事を思い出し、私はふと無駄な事を試したくなる。
「そうだ、レイア」
「何じゃ?」
「さっき私が話した『薬』の事なんだけど、試してみる? もっとも私では効かないと思うんだけど」
レイアは目を光らせて私の提案に食いつく。
「おおお! それはぜひ試してみたいぞ! 死ぬほど辛い思いなど、まっぴらごめんじゃからな!」
「そうかそうか。わかった。でも、あんまり期待はしないでくれよ」
「うんうん! それで、何をくれるのじゃ?」
「物じゃなくて、ただのおまじないだよ。もっとも、レイアは聞き飽きて何とも思わないかもしれないけどな」
私は少し照れ笑いして言った。
「まあよい。ささ、おまじないとやら、早くやってみよ」
「では、いくよ」
レイアがワクワクしながら待っている。私は喉を整え、レイアの瞳を真っ直ぐ見ながら、ゆっくりと、気持ちを込めておまじないを唱える。
「レイア、貴女が大好きです。貴女の事をこれからも大切にし、愛し続けます」
言い終えて、呆れられると思っていた私だったが、意外にもレイアの表情は紅潮し、少し俯き加減になっている。
「どう? 効かないとは思うけど、少しでも心が軽くなるといいな」
しばらくレイアは黙ったまま俯いていた。突然、私の顔を直視して言いだす。
「そ、そのようなもの、き、効かぬぞ!! うん。どうやら違う原因のようじゃな!」
そう言って、後ろを向いてから何かをつぶやく。
「じゃが、タクトの思い、ちびっとだけじゃが、伝わったぞ……」
レイアが何か小声で言ったようだが、聞き取ることが難しい。でも、効いてないと言うなら、やはり違う原因なんだなと私は思った。
その後、レイアは私に大事な話をすることになる。それは今後の私の人生を巻き込む事になるが、改めて語る事とする。
それにしても、これまで魔王城に討伐に行って、レイアと出会い、様々な事がいっぱいあった。
そして今は、レイアというかけがえのない存在が傍にいてくれるようになり、私は過去には味わえなかった幸せをつかむことができた。
今後、色々な事があるかもしれないが、私はレイアと共に、乗り越えていこうと思う。
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なお、戴冠式は一週間後に行われる予定となっている。
今回の騒動を引き起こした私達は、レガリック将軍からの上申のお陰で全て不問に付されたとの事である。今回の陰の主役は本件を一手に引き受けてくれたレガリック将軍で間違いない。彼にはひたすら感謝である。
将軍のほか、イグノール達とエレノーラ様も国王の参謀役として抜擢されるらしい。国民の最大の関心事、税金問題や物価高騰など、様々な問題が今後解決されることを陰ながら願うばかりである。
私とレイアはあの後、レイアの体調が普段と違いかなり消耗していたという事で、
イグノール達と別れ、魔王城に帰還して休養を取った。
そのお陰で、ふたりとも体調を回復でき、しっかりと夜の営みで愛を確かめ合う事もできた。
私達は先ほど朝食を済ませ、そのまま食卓でくつろいでいる。何でもレイアから大事な話があるらしい。
「タクト、大事な話の前に、一つ悩みがあるのじゃが、聞いてくれるか?」
「いいよ、何?」
「実はのう、つい二日前くらいからなのじゃが」
「うん」
レイアは右手を胸に当てて言う。
「この辺りが何かぎゅーっという感覚になるのじゃ」
「はあ?」
「昨日もそういうのと、ズキッという変な感じがあってのう、少し疲れておったのじゃ」
「そうなのか」
「何か変なものでも食したのじゃろうか。昨日なんか、タクトが急にわらわに口づけしおったじゃろ。そのせいかもしれぬ」
「そうなのか!? それは悪かった」
昨日はそんな話をしてなかったので驚きだ。図々しかったかもしれないと思い、謝っておく。
「うーん、どうだろう。でも、私なんか、レイアと出会ってからずっとそんな感じばかりだけどなあ」
「え? そうじゃったのか?」
「ああ。症状としてはちょっと苦しくなるやつだろ?」
「そうじゃ」
「私は毎日いつもだよ」
私が笑いながら言っているのを、レイアは心配げな表情で見つめる。
「病気ではないのか?」
「まあ、病気みたいなもんだけど、死ぬことは無いとわかってるからな。あ、でも、拒否られたら死ぬほど辛くなるよなあ」
「何?それはまことか!? わらわもそうなってしまうのか……」
急にレイアの表情が曇る。
「私も一度経験したけど、死ぬほど辛かったもんなあ。立ち直るのにかなり長くかかっちゃったし……」
私は過去を思い出し、懐かしみながらレイアに伝える。
「何か嫌じゃのう」
「今は薬ももう出てるし、心配ないからな。でもレイアは魔族だからならないって言ってたし、私とは違う原因なのかもな」
「そうなのか。一体何なんじゃろうな」
私は少し考えこんだ後、勧めてみる事にする。
「それじゃあ、気休めかもしれないけど、ヒールをかけておこうか」
「ああ、助かる。やってくれ」
「わかった」
私はレイアの傍に立ち、ヒールをかける。
「うむ。温かい感じがする」
「ついでにキュアもかけておくか」
私は目を閉じ、念を込める。
「キュア」
ほとんどはヒールで大丈夫だとは思うが、内臓や器官にも効くキュアを施した。ん? 魔族の体内にも効くのだろうか?
「色々かたじけない。これで治ってくれればよいのじゃが」
「そうだな。あとは様子を見るしかないかな」
そう言った後、ある事を思い出し、私はふと無駄な事を試したくなる。
「そうだ、レイア」
「何じゃ?」
「さっき私が話した『薬』の事なんだけど、試してみる? もっとも私では効かないと思うんだけど」
レイアは目を光らせて私の提案に食いつく。
「おおお! それはぜひ試してみたいぞ! 死ぬほど辛い思いなど、まっぴらごめんじゃからな!」
「そうかそうか。わかった。でも、あんまり期待はしないでくれよ」
「うんうん! それで、何をくれるのじゃ?」
「物じゃなくて、ただのおまじないだよ。もっとも、レイアは聞き飽きて何とも思わないかもしれないけどな」
私は少し照れ笑いして言った。
「まあよい。ささ、おまじないとやら、早くやってみよ」
「では、いくよ」
レイアがワクワクしながら待っている。私は喉を整え、レイアの瞳を真っ直ぐ見ながら、ゆっくりと、気持ちを込めておまじないを唱える。
「レイア、貴女が大好きです。貴女の事をこれからも大切にし、愛し続けます」
言い終えて、呆れられると思っていた私だったが、意外にもレイアの表情は紅潮し、少し俯き加減になっている。
「どう? 効かないとは思うけど、少しでも心が軽くなるといいな」
しばらくレイアは黙ったまま俯いていた。突然、私の顔を直視して言いだす。
「そ、そのようなもの、き、効かぬぞ!! うん。どうやら違う原因のようじゃな!」
そう言って、後ろを向いてから何かをつぶやく。
「じゃが、タクトの思い、ちびっとだけじゃが、伝わったぞ……」
レイアが何か小声で言ったようだが、聞き取ることが難しい。でも、効いてないと言うなら、やはり違う原因なんだなと私は思った。
その後、レイアは私に大事な話をすることになる。それは今後の私の人生を巻き込む事になるが、改めて語る事とする。
それにしても、これまで魔王城に討伐に行って、レイアと出会い、様々な事がいっぱいあった。
そして今は、レイアというかけがえのない存在が傍にいてくれるようになり、私は過去には味わえなかった幸せをつかむことができた。
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