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03.溺れる、溺れたい。
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「私が心配なのは君の方だよ」
「私ですか?」
「そうだよ。飢えた狼の群れの中に純真無垢な赤ずきんちゃんを見付けた時にはどうしたものかと本気で思った」
「……赤ずきんなんて年じゃないです」
あまりにも子供扱いだったのがちょっと嫌でむくれた声を出すと彼は笑って短く謝罪をした後説明を続けてくれる。
「女性側の設定は分からないけれどあのアプリ、女性側の人気度が見えるんだ。若い女性に投稿が集中するのは自然な事だけれど長期的に利用している女性よりも新規の女性の方がより人気が出る」
「……はい、なんとなく分かります」
「君に届いたメッセージは100を超えていたと思うよ。…今だって掲示板に出さなくてもプロフィール検索からきっと届いているだろう?」
んー? 確かにメッセージは一杯来たけど勘違い野郎ばっかりで誠さんにしか返事をしていないし、今だってお気に入りユーザーで履歴欄のトップにピン止めした誠さん以外のメッセージなんて開封しても無い。
申し訳ないけれど最初に表示されるたった数文字でお腹いっぱいの出だしが多過ぎて見る気も起きないのだ。
「確かに沢山来ましたけど誠さんにしか返事してないし、今だって誠さん専用の連絡アプリだと思っているのでメッセージの開封もしてないですよ」
事実をありのまま告げただけだったのに彼はまたふーっと深く息を吐いて少しだけ余裕を失ったような口調で言う。
「だからそんな事を軽々しく言う物じゃないよ」
「でも本当です。…わた、し……誠さんだけが良いんです」
「君は私の理想を具現化した様な存在で、たまに怖くなるな」
え?なんだそれ?
思いもよらぬ言葉に説明を求めると、彼は続けた。
「私の性癖はちょっと歪んでいてね、SかMかで言うと間違いなくSではあるけれど乱暴な事も痛い事も無理な事も好きじゃ無いんだ」
「……はい」
「そのかわり相手を思い切り…本当に溺れる程甘やかして躾けて自分だけを教え込んで、可愛がりたい欲求がとても強いんだ。私無しではいられない様に精神的に囲い込んで、時に束縛して甘く捕えたい。自分だけの大事な宝物として管理して独占したいんだ」
その言葉に心臓が大きな音出したのを自覚した。
それは私が理想とする相手と完全一致しているのだから。
「私…私も、優しく甘く躾けてくれる人が理想なんです。そ、束縛も……された事無いから分からないけれど、嫌じゃ無いです。あの、誠さんの言う管理ってどう言うのですか?」
緊張したけれど興奮の方が強くて尋ねると彼は私の折角ふき取ったあそこがまたぐちゃぐちゃになってしまうくらい理想的な返事をくれた。
・一対一が基本で他の相手はお互い見ない。
・性に関する事は申告、許可制。
・どこで何をしているのかを簡単にで良いから把握していたい。
・本心を隠さない。遠慮はしない。出来る限り全てを曝け出して欲しい。
・色々な事を教え込みたい。
そんな内容で私の心が更に昂って呼吸が乱れてしまう。
だってそれ、本当に私の理想。こんな男性実在するの?夢にまで見た理想の人だ!
「勿論本心を言えば君に会って直接触れたいよ。でも勘違いしないで欲しい」
「……はい」
「私は何よりも精神的に深く繋がりたいんだ。だから、君が求めて許してくれるのを何年だって待てる。……今回の通話は偶発的だったけれど、これから君が気が向いた時に声が聞けたらそれだけで十二分に嬉しい」
「誠さん」
確かに今回の通話は意図したものでは無かった。でも、彼の声を聞きながらの行為はとても気持ち良かった。
だから私の方がもうメッセージだけの関係では満たされないと言う確信があるけれどそんな私の心を知らない彼は優しい声で続けた。
「メッセージだけでも嬉しかったのに今日は君の可愛らしい声まで聴けた。欲を言うといつか、顔を隠した状態で勿論構わないけれど君が写真を見せても良いと思える日がくれば嬉しいし、来なくても構わないと思っているよ。……こうして繋がっていられるならね」
優しい大人の男性の言葉に私はきゅうっとして、全てを曝け出す勇気は出ないくせに心配な事を言葉にする。
「私に飽きていきなりいなくなったりしませんか? 他の可愛い女の子が現れてそっちに行ったりしませんか?」
決死の覚悟で聞いた言葉なのに彼は穏やかに吐息で微笑んで殊更甘い声色で優しく囁く。
このたまに出る吐息がすごく好きだ。男性的なセクシーさってこういう事を言うんだな。
「五十を超えたおじさんに出会いなんてあるわけないでしょう?あった所で私にはもう君がいる。私の宝物は君だけだよ」
そこまで聞くともうきゅんきゅんした心臓が止まらなくて、私は完全にとろけた身体の中心を持て余しながら自分でもこんな声が出るのかと言う位甘えた頭の悪そうな声で強請った。
「誠さん……濡れました」
「ふふふ、ちゃんと言えて偉いね。次からは『おまんこ濡れました』って言ってくれると嬉しいな」
「あ……誠さん、燈子のおまんこ、濡れましたぁ……ンぅ」
「いい子だね。すごく可愛いよ……後でBluetoothのヘッドセットで良さそうなのを探して送るから、今度から使ってくれる?」
?へっどせっと?
良く分からずにふわふわした思考で止まると彼は「詳しい事は後でね」と言ってまた私を甘く支配してくれた。
おもちゃの強い刺激ばかりに慣れてしまうとそれはそれで駄目らしいので次はいつもの様に自分の指だけで達する様に言われた。
いつも自分でする時は一回しかイけないのに彼の囁きがあるとあっと言う間に上り詰めてしまう。
ヘッドセットを着けると耳には直で誠さんの声が聞こえて、彼も私の喘ぎ声が聞き取りやすくなるそうだ。
「ヘッドセット……買ってください」
「勿論。使いやすそうなのを探すから楽しみにしててね」
そんなやり取りをした次の日には商品の候補が送られて来て、即座に登録。
日本の物流は優秀であっと言う間に手元に届いたソレは私達の秘め事の濃度を一気に上げ、そこからはもう転げ落ちるように私の身体は貪欲にスマホ越しの彼から与えられる行為に溺れて行ったのである。
比較的都合を付けやすい状況と言ってもお互い仕事を持つ社会人ではあるのでいつも通話を繋いで快感に耽ると言う事は流石に難しい。
それでも誠さんは毎日のメッセージを絶対に欠かさないしおざなりのような適当な文章を返して来る事は無かった事も私が彼をどんどん信用していく要素だった。
ヘッドセットで両耳に甘い囁きが直で注がれてその上両手が自由に使える行為に溺れ数週間が経ったある日、奥さんが“友人”の家に泊りに行ったと通話状態で言われたある金曜日の夜。
私はドキドキしつつも自分で購入していた物を手元に用意して、事前に何度も装着し自分のスマホを動画モードにして確認を重ねた結果これなら安全だと判断したソレ…幾重にもレースが重なったヴェールを電波の先に居る彼には見えないのに、気持ち的に隠れる様な動作で被った。
花嫁さんが被る薄い物とは違い、それはコスプレか何かに使う為なのか長さは鎖骨の辺りまであってちょっと動いたくらいでは顔は絶対に見えない優れものなのだ。
彼が選んでくれたネックタイプのBluetoothヘッドセットは軽いし動いても外れないし音はちゃんと拾ってくれるしで最高だ。
それをいつもの様に装着して会話をしていたのだけれど、幸いな事にヴェールを被ってもなんの支障も無い。
私の今の服装は黒の薄いスリップ(ノーブラ)と既に濡れているショーツにヴェールと言う変態そのものなのだがまあそこは良いだろう。髪の毛は後ろでくくっているので髪色すら彼には見えない。
動画視聴用に元々買っていたスマホスタンドを床に置いて私はふーっと息を吐いてから切り出した。
「誠さん、あの…お話がありまして」
「何かあった?聞くよ」
妙な切り出し方をしたので身構えられてしまった感があるのだが悪い方に解釈されてしまうと嫌なので勢いで続ける。ええい、女だって度胸だ!!!
「あの、突然なので断って貰っても大丈夫なんですけれど、私…あの、顔を隠させて貰えれば……あの、ビデオ通話……して、みたくて」
「本当に良いの?無理していない?」
「勿論です!」
こんな時にまで気を使ってくれる優しい所にまた胸がときめいてしまう。即答すると彼は嬉しそうに「大歓迎だよ」と言ってくれた。
でも私の中で譲れない部分が一つある。
「あの、誠さんの顔も隠して欲しいんです。私だけ見ちゃうのは不公平なので、そこは嫌なんです」
「ふふ、君は本当に妙な所が律儀だね。じゃあお言葉に甘えて今回はカメラを制限させて貰って次までに何かマスク的な物を用意させて貰うって事で良いかな?」
「はい」
意外と私が頑固な事を彼は理解してくれている為あっさりと折れてくれた。
ドキドキする心臓を軽く押さえて、震える指先で操作すると、ビデオ通話に問題無く切り替えられて顔を隠した私が画面の端の四角の中に見える。……ああ、これが彼の方にも見えているのだ。
因みに誠さんの方はカメラオフの為通常通りのアイコンの表示だった。
「……」
なんて言えば良いのか分からなくて思わず口籠ると彼は心の底から言っているような深い声で「綺麗だ」と言ってくれた。
それが嬉しくてドギマギしていると嬉しそうな彼の甘い声が重なる。
「すごくセクシーだね、想像していたよりもずっと色っぽい」
「あ、…ありがとうございます……でも、お腹とかぽにょっとしてて…」
「そうかな?十二分に美しいよ。下着は付けているの?」
はぁ、と熱っぽい息が聞こえて胸が高鳴る。
人生で一度も彼氏が出来た事が無い私の大した事の無い身体でも彼を興奮させる事が出来るのかと言う喜びがテンションを上げた。
顔が見えないだけでちょっと大胆に慣れてしまうのだから人とは不思議な物である。
「ブラはしてませんけど、下は履いています」
「すごいな…はぁ、……年甲斐もなく興奮しているよ」
その言葉が嬉しくて女の子座りの体制のまま言ってみた。
「誠さん…」
「何かな?」
「『一番最初のプレゼント』……今、つけてます」
ごくり、と彼が唾を飲み込んだ音が鮮明に聞こえた。
彼も一緒に自慰行為をしてくれるようになっていたので私達のヘッドセットはお揃いなのである。
ドキドキしていると誠さんはタブレット側でも操作できる遠隔操作のおもちゃの操作アプリを起動したらしく一瞬だけクリが吸われた。
「あんっ」
意表を突かれた刺激に思わず背をのけぞらせて慌てて口を押さえると興奮したような息遣いだけが耳に届く。
「…燈子」
「はい」
いつもは燈子ちゃんと呼んでくれる彼が私を呼び捨てするのがいつの間にか決まったイケナイ事の開始の合図。
だから私は足をM字に開いて濡れて色が変わった下着を見せ付ける様にしていつもの様に強請る。
「誠さん、燈子を可愛がってくださ―――あああっ!」
「可愛いね、君は本当に最高だよ。ああ、どうか崩れ落ちないで、君の事をもっと見せて欲しい」
私の反応を見ながら責めが変わる。いつもと全然違う。
見られていると言う興奮が快感に直で変換されて私はもう唯のメスになっていた。
「ああ、そんなに腰を振って…今度はディルドをあげるね」
「あ、……まことさ、きもちい……あ、ああっ」
カメラにM字開脚をして崩れ落ちない様に腕を後ろで突っ張って快感に耐えているとそんな筈ないのに彼の視線が何処に集中しているのかが分かる。
ああ、絶対見られてる。
濡れて色が変わった恥ずかしいパンツ、見られてる。見て欲しい。もっといっぱい、見て欲しい。
「あーっ!!! アン、あ、うぅう、ン……クリ吸っちゃだぁめっ」
「燈子、そんなに喘いだらお隣さんに聞かれてしまうかも知れないよ?」
彼の方も弄っているのが音で分かった。
家の構造と部屋の配置からその心配は薄い事は彼にも伝えているので興奮を煽る為の言葉だと知っていても私の馬鹿な脳みそはあっさりと翻弄されて「やだ」とか「だめ」とか中身の無い単語だけを繰り返す。
乳首を触る様指示されたので私は思わず恥ずかしくて秘密にしていたことを白状してしまったのだ。それくらい理性が薄まっていた。ああ、でも良いのか。誠さんには知られて良いのだ、彼に隠す方がおかしいのだ。
「まことさ、…ッあのっ!あのぉ」
「どうしたの?」
私が何かを言おうとしたのを察して刺激を一番緩めてくれた彼にどきどきしつつも自分の肩から細いストラップを落とす。
するん、と滑り落ちて行った滑らかで薄い生地はお腹の辺りに溜まったがそれはそのままにして私は恥ずかしさから直ぐに胸を隠してカメラを見る。
「嫌いにならないで欲しいんですけれど……」
「うん?」
「燈子の乳首は……駄目乳首なんです」
急に怖くなった。
でも今更どうしようもなくて胸を押さえたまま俯くと彼は穏やかな声で「どういうこと?」と言う。
だから意を決してもう一歩分近付いて私は彼氏を作る事に勇気が持てなかったコンプレックスをカメラに映した。
「か、んぼ…つ……なんです」
「――」
ドキドキしつつ言い切ると反応が無い。え?引かれた?やっぱりこれ駄目なんだ! と血の気が引いたが、それは杞憂だった。
ゴトン、と言う音がしてびっくりすると直ぐに謝罪の言葉が聞こえる。そして、とても荒い息遣いも。
「ああ、すごい。すごいよ燈子、君は本当に素晴らしい。可愛いよ!すごいな、もっとよく見せて?」
「え? え?」
誠さん……まさかコレ、興奮してる?
驚きつつも指示された通りカメラを近付けると荒い息が聞こえて私もそれにつられる様に息を吸った。
「可愛い…吸い出してあげたいよ。君はこんな所まで私の理想なんだね」
「誠さん……これ、好きなんですか?」
傷付けない様にと言う配慮かな?とも思ったがどうやら違って本当に好きみたいだ。
「大好きだよ! はぁ、は……燈子、燈子可愛い。なんて綺麗な乳首なんだ。そんな慎ましく隠れて……ああごめん。私だけ楽しんでしまったね。出来ればそのまま胸を見せていて欲しい」
「あ、はい……ああっ!」
また始まった甘い責め苦に私は溺れた。
誠さんには何を見せても平気なのだ。彼は私の長年のコンプレックスすらこんなに愛してくれたんだから。
焦らしと強請る言葉と視線。
その全てに溺れてその夜、私はまた一つ深い快感を知ってしまった。
***
「私ですか?」
「そうだよ。飢えた狼の群れの中に純真無垢な赤ずきんちゃんを見付けた時にはどうしたものかと本気で思った」
「……赤ずきんなんて年じゃないです」
あまりにも子供扱いだったのがちょっと嫌でむくれた声を出すと彼は笑って短く謝罪をした後説明を続けてくれる。
「女性側の設定は分からないけれどあのアプリ、女性側の人気度が見えるんだ。若い女性に投稿が集中するのは自然な事だけれど長期的に利用している女性よりも新規の女性の方がより人気が出る」
「……はい、なんとなく分かります」
「君に届いたメッセージは100を超えていたと思うよ。…今だって掲示板に出さなくてもプロフィール検索からきっと届いているだろう?」
んー? 確かにメッセージは一杯来たけど勘違い野郎ばっかりで誠さんにしか返事をしていないし、今だってお気に入りユーザーで履歴欄のトップにピン止めした誠さん以外のメッセージなんて開封しても無い。
申し訳ないけれど最初に表示されるたった数文字でお腹いっぱいの出だしが多過ぎて見る気も起きないのだ。
「確かに沢山来ましたけど誠さんにしか返事してないし、今だって誠さん専用の連絡アプリだと思っているのでメッセージの開封もしてないですよ」
事実をありのまま告げただけだったのに彼はまたふーっと深く息を吐いて少しだけ余裕を失ったような口調で言う。
「だからそんな事を軽々しく言う物じゃないよ」
「でも本当です。…わた、し……誠さんだけが良いんです」
「君は私の理想を具現化した様な存在で、たまに怖くなるな」
え?なんだそれ?
思いもよらぬ言葉に説明を求めると、彼は続けた。
「私の性癖はちょっと歪んでいてね、SかMかで言うと間違いなくSではあるけれど乱暴な事も痛い事も無理な事も好きじゃ無いんだ」
「……はい」
「そのかわり相手を思い切り…本当に溺れる程甘やかして躾けて自分だけを教え込んで、可愛がりたい欲求がとても強いんだ。私無しではいられない様に精神的に囲い込んで、時に束縛して甘く捕えたい。自分だけの大事な宝物として管理して独占したいんだ」
その言葉に心臓が大きな音出したのを自覚した。
それは私が理想とする相手と完全一致しているのだから。
「私…私も、優しく甘く躾けてくれる人が理想なんです。そ、束縛も……された事無いから分からないけれど、嫌じゃ無いです。あの、誠さんの言う管理ってどう言うのですか?」
緊張したけれど興奮の方が強くて尋ねると彼は私の折角ふき取ったあそこがまたぐちゃぐちゃになってしまうくらい理想的な返事をくれた。
・一対一が基本で他の相手はお互い見ない。
・性に関する事は申告、許可制。
・どこで何をしているのかを簡単にで良いから把握していたい。
・本心を隠さない。遠慮はしない。出来る限り全てを曝け出して欲しい。
・色々な事を教え込みたい。
そんな内容で私の心が更に昂って呼吸が乱れてしまう。
だってそれ、本当に私の理想。こんな男性実在するの?夢にまで見た理想の人だ!
「勿論本心を言えば君に会って直接触れたいよ。でも勘違いしないで欲しい」
「……はい」
「私は何よりも精神的に深く繋がりたいんだ。だから、君が求めて許してくれるのを何年だって待てる。……今回の通話は偶発的だったけれど、これから君が気が向いた時に声が聞けたらそれだけで十二分に嬉しい」
「誠さん」
確かに今回の通話は意図したものでは無かった。でも、彼の声を聞きながらの行為はとても気持ち良かった。
だから私の方がもうメッセージだけの関係では満たされないと言う確信があるけれどそんな私の心を知らない彼は優しい声で続けた。
「メッセージだけでも嬉しかったのに今日は君の可愛らしい声まで聴けた。欲を言うといつか、顔を隠した状態で勿論構わないけれど君が写真を見せても良いと思える日がくれば嬉しいし、来なくても構わないと思っているよ。……こうして繋がっていられるならね」
優しい大人の男性の言葉に私はきゅうっとして、全てを曝け出す勇気は出ないくせに心配な事を言葉にする。
「私に飽きていきなりいなくなったりしませんか? 他の可愛い女の子が現れてそっちに行ったりしませんか?」
決死の覚悟で聞いた言葉なのに彼は穏やかに吐息で微笑んで殊更甘い声色で優しく囁く。
このたまに出る吐息がすごく好きだ。男性的なセクシーさってこういう事を言うんだな。
「五十を超えたおじさんに出会いなんてあるわけないでしょう?あった所で私にはもう君がいる。私の宝物は君だけだよ」
そこまで聞くともうきゅんきゅんした心臓が止まらなくて、私は完全にとろけた身体の中心を持て余しながら自分でもこんな声が出るのかと言う位甘えた頭の悪そうな声で強請った。
「誠さん……濡れました」
「ふふふ、ちゃんと言えて偉いね。次からは『おまんこ濡れました』って言ってくれると嬉しいな」
「あ……誠さん、燈子のおまんこ、濡れましたぁ……ンぅ」
「いい子だね。すごく可愛いよ……後でBluetoothのヘッドセットで良さそうなのを探して送るから、今度から使ってくれる?」
?へっどせっと?
良く分からずにふわふわした思考で止まると彼は「詳しい事は後でね」と言ってまた私を甘く支配してくれた。
おもちゃの強い刺激ばかりに慣れてしまうとそれはそれで駄目らしいので次はいつもの様に自分の指だけで達する様に言われた。
いつも自分でする時は一回しかイけないのに彼の囁きがあるとあっと言う間に上り詰めてしまう。
ヘッドセットを着けると耳には直で誠さんの声が聞こえて、彼も私の喘ぎ声が聞き取りやすくなるそうだ。
「ヘッドセット……買ってください」
「勿論。使いやすそうなのを探すから楽しみにしててね」
そんなやり取りをした次の日には商品の候補が送られて来て、即座に登録。
日本の物流は優秀であっと言う間に手元に届いたソレは私達の秘め事の濃度を一気に上げ、そこからはもう転げ落ちるように私の身体は貪欲にスマホ越しの彼から与えられる行為に溺れて行ったのである。
比較的都合を付けやすい状況と言ってもお互い仕事を持つ社会人ではあるのでいつも通話を繋いで快感に耽ると言う事は流石に難しい。
それでも誠さんは毎日のメッセージを絶対に欠かさないしおざなりのような適当な文章を返して来る事は無かった事も私が彼をどんどん信用していく要素だった。
ヘッドセットで両耳に甘い囁きが直で注がれてその上両手が自由に使える行為に溺れ数週間が経ったある日、奥さんが“友人”の家に泊りに行ったと通話状態で言われたある金曜日の夜。
私はドキドキしつつも自分で購入していた物を手元に用意して、事前に何度も装着し自分のスマホを動画モードにして確認を重ねた結果これなら安全だと判断したソレ…幾重にもレースが重なったヴェールを電波の先に居る彼には見えないのに、気持ち的に隠れる様な動作で被った。
花嫁さんが被る薄い物とは違い、それはコスプレか何かに使う為なのか長さは鎖骨の辺りまであってちょっと動いたくらいでは顔は絶対に見えない優れものなのだ。
彼が選んでくれたネックタイプのBluetoothヘッドセットは軽いし動いても外れないし音はちゃんと拾ってくれるしで最高だ。
それをいつもの様に装着して会話をしていたのだけれど、幸いな事にヴェールを被ってもなんの支障も無い。
私の今の服装は黒の薄いスリップ(ノーブラ)と既に濡れているショーツにヴェールと言う変態そのものなのだがまあそこは良いだろう。髪の毛は後ろでくくっているので髪色すら彼には見えない。
動画視聴用に元々買っていたスマホスタンドを床に置いて私はふーっと息を吐いてから切り出した。
「誠さん、あの…お話がありまして」
「何かあった?聞くよ」
妙な切り出し方をしたので身構えられてしまった感があるのだが悪い方に解釈されてしまうと嫌なので勢いで続ける。ええい、女だって度胸だ!!!
「あの、突然なので断って貰っても大丈夫なんですけれど、私…あの、顔を隠させて貰えれば……あの、ビデオ通話……して、みたくて」
「本当に良いの?無理していない?」
「勿論です!」
こんな時にまで気を使ってくれる優しい所にまた胸がときめいてしまう。即答すると彼は嬉しそうに「大歓迎だよ」と言ってくれた。
でも私の中で譲れない部分が一つある。
「あの、誠さんの顔も隠して欲しいんです。私だけ見ちゃうのは不公平なので、そこは嫌なんです」
「ふふ、君は本当に妙な所が律儀だね。じゃあお言葉に甘えて今回はカメラを制限させて貰って次までに何かマスク的な物を用意させて貰うって事で良いかな?」
「はい」
意外と私が頑固な事を彼は理解してくれている為あっさりと折れてくれた。
ドキドキする心臓を軽く押さえて、震える指先で操作すると、ビデオ通話に問題無く切り替えられて顔を隠した私が画面の端の四角の中に見える。……ああ、これが彼の方にも見えているのだ。
因みに誠さんの方はカメラオフの為通常通りのアイコンの表示だった。
「……」
なんて言えば良いのか分からなくて思わず口籠ると彼は心の底から言っているような深い声で「綺麗だ」と言ってくれた。
それが嬉しくてドギマギしていると嬉しそうな彼の甘い声が重なる。
「すごくセクシーだね、想像していたよりもずっと色っぽい」
「あ、…ありがとうございます……でも、お腹とかぽにょっとしてて…」
「そうかな?十二分に美しいよ。下着は付けているの?」
はぁ、と熱っぽい息が聞こえて胸が高鳴る。
人生で一度も彼氏が出来た事が無い私の大した事の無い身体でも彼を興奮させる事が出来るのかと言う喜びがテンションを上げた。
顔が見えないだけでちょっと大胆に慣れてしまうのだから人とは不思議な物である。
「ブラはしてませんけど、下は履いています」
「すごいな…はぁ、……年甲斐もなく興奮しているよ」
その言葉が嬉しくて女の子座りの体制のまま言ってみた。
「誠さん…」
「何かな?」
「『一番最初のプレゼント』……今、つけてます」
ごくり、と彼が唾を飲み込んだ音が鮮明に聞こえた。
彼も一緒に自慰行為をしてくれるようになっていたので私達のヘッドセットはお揃いなのである。
ドキドキしていると誠さんはタブレット側でも操作できる遠隔操作のおもちゃの操作アプリを起動したらしく一瞬だけクリが吸われた。
「あんっ」
意表を突かれた刺激に思わず背をのけぞらせて慌てて口を押さえると興奮したような息遣いだけが耳に届く。
「…燈子」
「はい」
いつもは燈子ちゃんと呼んでくれる彼が私を呼び捨てするのがいつの間にか決まったイケナイ事の開始の合図。
だから私は足をM字に開いて濡れて色が変わった下着を見せ付ける様にしていつもの様に強請る。
「誠さん、燈子を可愛がってくださ―――あああっ!」
「可愛いね、君は本当に最高だよ。ああ、どうか崩れ落ちないで、君の事をもっと見せて欲しい」
私の反応を見ながら責めが変わる。いつもと全然違う。
見られていると言う興奮が快感に直で変換されて私はもう唯のメスになっていた。
「ああ、そんなに腰を振って…今度はディルドをあげるね」
「あ、……まことさ、きもちい……あ、ああっ」
カメラにM字開脚をして崩れ落ちない様に腕を後ろで突っ張って快感に耐えているとそんな筈ないのに彼の視線が何処に集中しているのかが分かる。
ああ、絶対見られてる。
濡れて色が変わった恥ずかしいパンツ、見られてる。見て欲しい。もっといっぱい、見て欲しい。
「あーっ!!! アン、あ、うぅう、ン……クリ吸っちゃだぁめっ」
「燈子、そんなに喘いだらお隣さんに聞かれてしまうかも知れないよ?」
彼の方も弄っているのが音で分かった。
家の構造と部屋の配置からその心配は薄い事は彼にも伝えているので興奮を煽る為の言葉だと知っていても私の馬鹿な脳みそはあっさりと翻弄されて「やだ」とか「だめ」とか中身の無い単語だけを繰り返す。
乳首を触る様指示されたので私は思わず恥ずかしくて秘密にしていたことを白状してしまったのだ。それくらい理性が薄まっていた。ああ、でも良いのか。誠さんには知られて良いのだ、彼に隠す方がおかしいのだ。
「まことさ、…ッあのっ!あのぉ」
「どうしたの?」
私が何かを言おうとしたのを察して刺激を一番緩めてくれた彼にどきどきしつつも自分の肩から細いストラップを落とす。
するん、と滑り落ちて行った滑らかで薄い生地はお腹の辺りに溜まったがそれはそのままにして私は恥ずかしさから直ぐに胸を隠してカメラを見る。
「嫌いにならないで欲しいんですけれど……」
「うん?」
「燈子の乳首は……駄目乳首なんです」
急に怖くなった。
でも今更どうしようもなくて胸を押さえたまま俯くと彼は穏やかな声で「どういうこと?」と言う。
だから意を決してもう一歩分近付いて私は彼氏を作る事に勇気が持てなかったコンプレックスをカメラに映した。
「か、んぼ…つ……なんです」
「――」
ドキドキしつつ言い切ると反応が無い。え?引かれた?やっぱりこれ駄目なんだ! と血の気が引いたが、それは杞憂だった。
ゴトン、と言う音がしてびっくりすると直ぐに謝罪の言葉が聞こえる。そして、とても荒い息遣いも。
「ああ、すごい。すごいよ燈子、君は本当に素晴らしい。可愛いよ!すごいな、もっとよく見せて?」
「え? え?」
誠さん……まさかコレ、興奮してる?
驚きつつも指示された通りカメラを近付けると荒い息が聞こえて私もそれにつられる様に息を吸った。
「可愛い…吸い出してあげたいよ。君はこんな所まで私の理想なんだね」
「誠さん……これ、好きなんですか?」
傷付けない様にと言う配慮かな?とも思ったがどうやら違って本当に好きみたいだ。
「大好きだよ! はぁ、は……燈子、燈子可愛い。なんて綺麗な乳首なんだ。そんな慎ましく隠れて……ああごめん。私だけ楽しんでしまったね。出来ればそのまま胸を見せていて欲しい」
「あ、はい……ああっ!」
また始まった甘い責め苦に私は溺れた。
誠さんには何を見せても平気なのだ。彼は私の長年のコンプレックスすらこんなに愛してくれたんだから。
焦らしと強請る言葉と視線。
その全てに溺れてその夜、私はまた一つ深い快感を知ってしまった。
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