異世界人がよく落ちて来る世界にある日落ちた僕の、よくあるお話でも聞いてくれませんか。

一片澪

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05.

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「あーっ♡ あ、あー、ぁ」


あれからどれ程時間が経ったのか咲哉には分からなかった。
もう自分の口からは意味のある言葉は出て来なくて、馬鹿みたいに涎を垂らしてあーとしか言えない。

ただ何をされても気持ちよくて、じれったいまでに解された自分の中にやっとレネが入って来てくれたのに、それはたった数センチのみの挿入で入り口付近を行き来するだけだ。
解される段階で幾度となく射精してもう立ち上がる事すら出来ずに情けなく揺れる自分のペニスを視界の淵で微かに見ながら咲哉は涙目でレネを見詰めて小さく首を振るしか出来ない。

「まだ駄目だよ、咲哉」
「や、いや!」

なけなしの力を振り絞って彼を奥に導こうと腰を動かしたのにあっさり押さえ込まれて状態は何も変わらなかった。

――なんで? なんでもっと入れてくれないの? 入るじゃん。もう絶対に入るじゃん。
レネが馬鹿みたいに舐めたり指で解すから、僕の穴はもう緩み切って早くその太くて硬い熱を奥まで入れて下さいって媚びまくってるのに、どうして入れてくれないの?
なんで? 僕が処女じゃ無かったから? 処女じゃないから入れてくれないの? 全部くれないの?

口は全然回らないし、欲しい物が全く与えられない状況に絶望した思考が完全にネガティブ方向に転んで咲哉の瞳から快感の涙では無く悲しみの涙がボロボロと出る。
普段のレネだったら「泣かないでぇ!!!」ときっと慌ててあわあわしただろうに、セックス中の大人レネは咲哉の涙の理由すらお見通しの様に喉の奥で低く笑って、零れた涙を長い舌先で優しく拭った。

「泣かないで? 咲哉が考えて居る事が理由じゃ無いよ。見せてないから分かんないだけで、俺のペニスは先端よりここから更に太くなるんだ。だから傷付けない様にゆっくり愛してるだけ。……本当にそれだけだからそんな風に悲しい泣き方しないで」
「だって! だって、だっ、だっ」

しゃくりあげながらなんとかそう絞り出した咲哉をレネは長い腕で優しく抱き締めて、顔中に愛しいと言う感情しかない唇を落としながら続ける。

「ごめんね。俺が大人げなくヤキモチ妬いて変な事言ったから気にしちゃったんだね」
「~~うーっ!!!」

言い当てられてまた何故か涙が溢れる咲哉をレネは殊更優しく撫でて、大きな身体全体で咲哉を包む。

「ごめん。俺の種族はちょっと鼻が良過ぎてさ、咲哉の『中』に微妙に残る昔のオスのニオイにヤキモチ妬いちゃったんだ。でもね? 全然怒ってないんだよ、それは本当」
「じゃあッ、なんで意、地悪するのッ」

しゃくりあげながらなんとか返した咲哉にレネはまた穏やかに目を細めて宥めるキスを落としながら答える。

「意地悪してないよ。ただ本当に傷付けたく無いから大事にシてるだけ。それにさ、咲哉の世界にはヒト族しかいないんでしょ」
「……そうだけど」

それがどうしたの? と返す前に咲哉は目の前で妖艶に目元を細めた大人の男の表情に思わず息を飲んだ。
男は確かにレネの筈なのに、咲哉がずーっと仕切り板越しに見ていた『大型わんこレネ』ではなくて……完全に『妖艶な狼』だった。
レネは余裕の表情で微笑みながら咲哉にキスを重ねつつ続ける。

「『弱いオス』のニオイなんてさ、俺がちょっと繋がっただけでもう完全に消えちゃったんだ。だからもうヤキモチ妬かないよ。安心して」
「……え?……ぁっ!?」

緩い数センチを繰り返していたもどかしい挿入が僅かに深まった。
それは咲哉に確かな存在感を教えて、レネの言動が嘘では無い事を証明する。

「苦しくない? 俺ね、百年分の休暇を一気にもぎ取って来たから時間だけはあるんだ。……だから、ゆっくりシようね? 何時間でも付き合えるから」
「…ぁ、……あっ♡あっ♡」
「ふふふ、コリコリに掠ってるもんね。気持ちいいトコに届く様になった?」
「あんっ、レ、レネっ、レネ、れっ、んっ」

ゆっくりと時間を掛けて優しく侵入して来た大きなレネのペニスの先端が咲哉の気持ちいい所を優しく宥める様に穏やかなリズムでとんとんと甘く突く。
それは咲哉にとってはやっと与えられた内部での望んだ刺激であり、元から覚束なくなっていた彼の理性をゆっくりと確実に剥ぎ取って行く。

「咲哉、気持ちいいね」
「ぅん! うん、気持ちいい! きもちいっ、あっ! あ、あっ」
「はは、かーわい」

満足そうに微笑んだレネが優しく咲哉のお腹を押した。
女性なら子宮があるからその刺激で快感を得る場合もあるらしいと知識では知っているけれど咲哉の身体は男なので意味がない筈……それなのに、何故か咲哉の口からは甘い吐息が漏れる。

「いーっぱいシて、早くここに子宮作ろうね」
「し、――きゅ?」

依然途切れることなく続く甘い刺激に心地よく酔いながらオウム返しして来た咲哉の事をレネはまた愛しそうに笑いながら見て言葉を返す。――理解していない事は明白だと知りながら。

「咲哉のメスマンコに毎日俺の魔力がたんまり籠った子種を注ぐとね、咲哉の身体が徐々に変わるんだ」
「……?」
「今はまだ良く分からなくてもいいよー、ダイジョウブダイジョウブ」
「……?……うンっ」

自身がゆったりと与え続けるただ甘く優しいだけの快感を享受して完全に自分に身を委ねる咲哉を見てレネはぺろりと自分の唇の舐めてから咲哉の頬を優しく大きな左手で包んだ。
その間も「ああ、可愛いな」と特に意識しなくても口から愛しさが零れ落ちるが、獰猛な狼の掛け値なしの本音もまた顔を覗かせ出す。

――ここまで解したんだ。もう一気に根元までブチ犯しても良いんじゃねェか? この薄い腹を突き破らんばかりに埋めて、奥まで一気にぶち抜いて自分のモノにしちまえよ。想像しただけで興奮すンだろ?

脳内の本能が物騒な囁きをするのがうざったくてレネは小さく舌打ちをして頭を振った。
自分自身の危険な本能に身体を乗っ取られない様に敢えて独り言を続ける。

「子供ね、本当に俺は急いで無いんだ」
「んっ、あっ、レネ♡ レネっ、れねっ」
「うん、可愛いね咲哉。……ホーント、急いで無いんだけどさぁ」

咲哉はもう完全に甘い快感の虜になっていて可愛らしく子犬の様に鳴くしか出来ない。
その痴態を見て満足そうに笑ったレネは鋭い犬歯を一瞬覗かせたが、まだ早いと自分を戒めて理性を繋いだ。

――まだだ。
まだ、早い。壊してしまっては意味が無いのだ。
ゆっくり、大事に大事に自分の身体に馴染ませて、思い切り貪り尽くす様に抱くのはそれからでも遅くは無い。
やっと出会えたこの世でたった一人の唯一無二の宝物を自分の手で壊して堪るか。

そう思う心には一切の偽りは無いが、獰猛な本性もまた確かに理性を強く揺さぶって来る。

「こうやって触れちゃうとさ、本能が叫ぶんだよねー『孕ませろ』ってすんごいの」
「ンっ♡ んっ、あっ……ぃい、きーち、いぃ」
「んー? うん、気持ちいいねえ。俺も気持ちーよ、咲哉のメスシコリとんとんするの、すっげぇいい♡」

潤み切った目で自分を見て来る咲哉を最大限に甘くあやしながら、狼は今にも暴れ出しそうな獰猛な本性を押さえつけて自分の唯一に殊更優しく触れ続けた。
そして咲哉が甘い声を上げのけ反って前立腺だけの刺激で達すると賛辞の言葉と甘い口付けを贈りはするが、決して優しい動作を止める事は無い。

「でもきっとこの『孕ませろ』って言う叫びは君との愛の結晶を望む声じゃ無くてさ、君の全てを一ミリも余すことなく自分のモノにしろ! っていう単なるエゴなんだろうね」
「あー、れ、れっ! イってる、いま、イってぇ!!!!」

絶頂から降りる間も無く与えられ続ける快感から逃れようと頭を振る咲哉をレネは甘くシーツに縫い留めて、その涙と涎でぐしゃぐしゃになった顔を目に焼き付けた。
そして咲哉の反応をしっかりと確認しながら咲哉の中に侵入する自身のペニスを注意深く見定める。

――うん、もう少しなら大丈夫そうだ。
そうはいってもまだ三分の一にやっと届くかどうかで、体格差を考えるとレネのペニスを咲哉の根元まで埋めるのは普通に考えたら不可能だ。

だが自分達はこれから番う。
そしてずーっと死んでも一緒に居て、これから何百回も何千回も何万回だってセックスするのだ。
自分はいずれ咲哉の結腸の先も勿論貰うし、どれだけの時間を掛けてでも彼の腹の中に子宮を完成させてみせる。

そして自分が丹精込めて作り上げたその出来立ての子宮に溢れる程の子種を注ぐことを考えれば、つい先ほどまで微かに残っていた張り合う気すら起きない赤子同然の弱いカスみたいな別のオスの事なんて心底どうでもよくなった。
そいつらが自分と同程度の力を持つオスであったなら、レネは今ここまで手間暇かけて咲哉の身体を拓く事は出来なかったのだから、それを思うとこの時間と歯痒さやもどかしさすら愛しい。
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