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08.【最終話】
しおりを挟む「――?…ケホッ」
目が覚めた自覚はあるけれど身体がとても重くて、声も出ない事が不思議で小さく咳をするとすぐ隣に居た誰かが優しく背中をさすって身体を優しく起こしてその上よく冷えたペットボトルの蓋を開けてストローまで刺して差し出してくれる。
僕の目は水に釘付けになっていたので一気にそれをほとんど飲み干して一息ついてから自分に水をくれた相手の顔を探した。
「……せがわくん」
「うん、湊ね。……身体は大丈夫? ごめんね、止まれなくて無茶した」
ちゅ、とこめかみに一つキスを落とされて驚いたと同時にいろんな事が断片的にだけれど思い出されて混乱する。
「え?…と、あの……」
「どこまで覚えてる?」
心配そうに僕の顔をのぞき込んでくる瀬川君……ああ、そう言えば確かに湊って呼べって何回も言われた気がする。
でも、夢じゃ無かったのかな? ええと……。
湊が待っていてくれるから僕は少しの時間をかけて記憶をさらった。
「えと、お! お付き合いすることになってから、湊が僕に『発情フェロモン』を当ててそれで僕が反応するか試すことになって」
「うん。いいよ続けて」
湊的にはかなり遡っているような印象を受けている表情をしたけれど彼は僕に合わせてくれた。
いつも通りの穏やかな平坦な雰囲気ではあるけれどなんだかとても……何というか空気が甘ったるい。
「それで僕は……」
「……うん」
じっと言葉を待ってくれる湊を見て、僕は多分多少抜けはあるだろうけれど色々途切れた記憶を結びつけることが出来た。
「お、『Ω』になって……湊の番にしてもらった、と思う」
「『してもらった』って言うか、頼んだのは俺だからね」
一つ訂正は入ったが僕の言葉に湊は安心したように笑って、今度は唇に優しいキスを一つくれる。
「良かった、全部記憶から消えてたら俺泣くところだった」
「はは。……あ、もう夜なんだ。寝ちゃってごめんね」
カーテンが閉められて間接照明だけが灯る部屋の状況から眠ってしまった事を謝ると湊はちょっと気まずそうな顔をしてスマホを僕の目の前に出してきた。
時間の確認かと思うと「日付も見て」と言われてて………え?
「げ、月曜日?!」
「うん。俺も気づいたときはびっくりした」
確か僕達は土曜日のお昼ご飯を終えてから……なんだろう、そんな雰囲気になった気がする。
でも今の時刻は月曜日になったばかりの深夜とも言える午前二時半をさしているけれど僕の中には日曜日の記憶は一秒たりとも無い。
ぽっかりと抜け落ちた日曜日、一日中一体何を……そう思っていると湊が涼しい顔をして言った。
「土曜の昼過ぎからなんかずっとセックスしてたみたい。俺が最初に時計を見たのは日曜日の午後六時で、そこから三時間くらい泥のように眠って、起きてから泉水と一緒に風呂に入ってぴくりともしない泉水をソファに寝せて首を手当てしてベッド綺麗にしてからこっちに寝せ直してからの今」
に、二十四時間以上そんな事をするって本当だったんだ。
いや普通Ωの発情期は五~七日間が平均らしいけれど個人差はあれど最初がかなり濃密でそこからはお互いちょっとは普通に戻る時間を持ちつつも続く……的な事は聞いていた。
聞いていたけれど、いざ自分が本当に長時間そんな事に及ぶ日が来るとは思わなかった。
驚きで目を見開いているとなんだかとても良い匂いがする。
そのとても安心できる匂いの元を探すと、湊だった。
「どしたの? くっついて来てくれて嬉しい」
「あ、ごめん。なんかすごい安心する良い匂いがして……これがまさかフェロモンなのかな?」
なんとなく確認しただけなのに湊はとても嬉しそうに笑って、抱き締めてくれる。
僕もそれがとても嬉しくて腕を回し返すと、彼はとても満足そうに息を吐いた。
「もう『不確か』じゃないね。……一応明日…いやもう今日か、目が覚めて動けそうなら……いや無理かもしれないけれど、とにかく数日中に一緒に病院に行こう」
「病院?」
「そう。ちゃんと診断して貰って、身体に異常が無いかとか診て貰おう」
――俺はもう泉水がΩになってるのは分かるけど、それは俺しか分からない事でもあるんだからさ。
そう優しい顔で言った湊に僕は頷いた。
自分の第二性が確定した事をはっきりと科学的な形で見たかったのは事実だけど、僕の腰は完全に抜けてしまっていて自力で立ち上がるまでに二日掛かった。
だから月曜日、火曜日は完全にベッドの上で安静にして湊から全部お世話になったのだけれど彼は実は家事も炊事も掃除も洗濯も何もかも人並み以上に出来る人だったのだ。
やらなかった理由は勿論「面倒くさい」だった事にはさすがに笑ったけれど甲斐甲斐しく甘ったるい笑顔で甘やかしてくれる『番』の優しさを僕はちょっとの照れはあったけれど素直に受け入れて過ごした。
そして今僕達は手を繋いで僕の家に向かっている。
正式に『Ω』の結果が出た病院の診断書を持って僕の母に正式に番った事を知らせるために。
「あー、緊張する」
「大丈夫だよ。うちの母さんはサバサバしてるから」
いつも飄々としている湊なのに今日はずーっと「緊張する」しか言っていないのがおかしくて笑うと、湊はちょっと拗ねたような顔で僕を見て言った。
「世界でたった一人の『番』のお母さんだよ? 嫌われたら俺どうしよう……仲良くなりたい」
「だから大丈夫だって」
僕の家のマンションのエントランスまで来て湊は足を止めて、また深く深呼吸をする。
その彼らしからぬ行動が僕に対する愛情を表しているのかと思うととても愛おしくて僕の胸はぎゅうっとなった。
「絶対に大丈夫だよ! ずーっと『判別不能』だった僕を見付けて、あるべき姿にしてくれた恩人なんだから自信もって!」
「……うん、頑張る」
大丈夫しか出てこない僕の励ましだったけれど湊はようやく笑ってくれた。
客観的に見て僕と湊は釣り合っていないと思う。勿論僕が下の方ね。
だけど、番ったからには僕達の人生にはもうお互いしかいないのだから僕は僕に出来る事を最大限頑張ってずっと彼の隣で仲良く生きていく為の努力は怠らないつもりだ。
「もし万が一反対される事があったとしても、僕は湊を選ぶから! だから、いつか祝福して貰えるように一緒にずっと頑張ろう!」
少し大きめの声ではっきりと宣言すると湊は一瞬だけ目を見開いて、それから今までで一番優しく微笑んでくれた。
――大丈夫だよ、安心して。
君が僕を見付けて『番』にしてくれたんだよ。
そのおかげで僕は君にこれから一生、死ぬまで嫌というほど愛を囁けるんだ。
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中野学校 様
こんばんは、ようこそおいでくださいました(n*´ω`*n)
おおおお!
ありがとうございます、お気に召して頂けてとっても嬉しいです!
アホ丸出しとか普通に下品とか色々ありますが何か一つでも中野学校様の癖に刺さってくれれば私的には最高に幸せです!
何か話が浮かんだらじゃんじゃん書けるように頑張ります!
感想ありがとうございました。
感謝です!!!
あちらに感想を書いたの最近だったから、コチラに書いた気でいたよ💦
狙ってじっくり機会を待ちすぎて見失うのは、どうしてもニヤリとしてしまう 笑
でもちゃんとハッピーエンドで良かったです✨
ももたん 様
こんばんは、こちらにもありがとうございます(n*´ω`*n)
どこでもよかとよ~♪
いつも遊びに来てくれて本当に感謝でございます(*ノωノ)
はい! 弊社は勝手にハッピーエンド専門家を目指し、水戸〇門的な安心安全ワンパターン企業として日夜取り組んでおります(`・ω・´)ゞ
感想ありがとうございました。
感謝です!!!