9 / 28
袖すり合うと……side洸太 9
しおりを挟む
注)軽い性的表現があります。ちょっと短めです。
「や、やめっ!」
制止の声をあげるも、長い腕もすらりとした指もぬるりと動いて、僕の着ている物を一つ一つ剥いでいく。
剥き出しの身体が熱い熱に包まれて、重なり合った部分が融け合いそうな錯覚を覚える。
パソコンのモニタに気を取られていた僕は、部屋に入ってきた優真さんに気づくわけもなく、家探しをしていた僕を優真さんがどんな目で見ていたかも気づく事無く、気が付けば優真さんに運ばれて寝室のベッドに押し倒されていた。
「俺ね? 結構我慢してたと思うんだよね~。洸太がいちいち不慣れな処女みたいな反応するからさぁ~~。
ちゃぁんと囲い込んで~、俺に慣れさせて~、そっからラブラブセックスしたかったんだよね~。
……だけどさぁ~、俺から逃げようとするなんて、さ」
許すわけないよねぇ~。
緩い口調とは裏腹に、ギラギラとした目は不穏に満ちていて、まるで肉食獣に睨まれたかのように身体が動かなくなる。
がぷりとその咢を開いて、迫る唇。そのまま深く深く口づけられて。
思考が白く染まっていく。困惑も快楽もどちらも抱えながら……どんどん流されていく。
「はっ! ゆぅま……さん! んぐぅ……」
酸素を求めて離れた瞬間、直ぐにもう一度塞がれて。
ぐちゅぐちゅと耳奥に響く水音とか、ぐるぐると巡る思考とか。
なんで? とか、どうして? とか。
何故、笑みの形に弧を描く唇から吐き出される呼気は熱を孕んでいるんだ? とか。
何故、笑ってるみたいに弧を描いている目の奥に哀しみが満ちてるんだ? とか。
何故……なぜ……ナゼ?
泡沫のように何故が浮かんでは消えていく。
だけど……。
そんなの全部ぜんぶゼンブどうでもよくなる程に……。
ただひたすらにメチャクチャにグチャグチャに貪られた。
僅かに浮上した意識の向こう、スマホの着信音が聞こえて。
ぎしりと軋み音を上げるベッドと、僅かに外側に傾くマットレス。
夢うつつの向こう側で、ぽとりと落とされた台詞は。
「 」
目を覚ますと、朝だった。
ぎしぎしとあらぬ所と股関節とついでに色んな所が痛みに悲鳴を上げるのを無視して風呂へと向かう。
「うわっ」
鏡に映る自分の姿に……ドン引きした。
ありとあらゆるところに残された所有を、執着を示すような痕に、所々に付けられた歯形、ついでに腰の辺りには長い指の持ち主が残したであろう手形が赤々とその存在を示していた。
シャワーから流れる水が滲みて、思わず顔を歪めてしまう。
湯気に曇った鏡を掌で拭えば。
そこには情けなく眉を下げた、凡庸な男が映っていた。
風呂から出て改めて部屋を見回せば、部屋はしんと静まり返り、僕以外の気配を感じる事はなかった。
それはまるで……取り残されたようで。
「っ! なんなんだよっ! あの人はっ!!」
思わず悲鳴のような叫びが口を吐く。
防音が整っているのを良い事に、恥も遠慮もなく当たり散らす。
「なんでっ! なんで僕なんかに関わるんだっ! かかわったんだっ!
あの日っ! たまたますれ違ってっ! アクキー渡してっ! それだけで! それだけで終わりのはずだった!
なのにさぁ! なんでだよっ! なんで近づく?! なんで踏み込んできた?!
なんで……っ!」
僕を抱きながら、泣きそうな顔で笑ってた優真さんの顔が、軽い口調の筈なのに何かを求めて希う声色が、全部全部忘れられない。忘れることができない。
どういうことなのか一から十まで問いただしたいのに、その姿は今はない。
ポツンと取り残された部屋はどこか冷たくて……他人の顔をして拒絶していた。
その日から……。
優真さんが帰ってくることはなくて。
三日後、僕はその部屋を後にした。
「や、やめっ!」
制止の声をあげるも、長い腕もすらりとした指もぬるりと動いて、僕の着ている物を一つ一つ剥いでいく。
剥き出しの身体が熱い熱に包まれて、重なり合った部分が融け合いそうな錯覚を覚える。
パソコンのモニタに気を取られていた僕は、部屋に入ってきた優真さんに気づくわけもなく、家探しをしていた僕を優真さんがどんな目で見ていたかも気づく事無く、気が付けば優真さんに運ばれて寝室のベッドに押し倒されていた。
「俺ね? 結構我慢してたと思うんだよね~。洸太がいちいち不慣れな処女みたいな反応するからさぁ~~。
ちゃぁんと囲い込んで~、俺に慣れさせて~、そっからラブラブセックスしたかったんだよね~。
……だけどさぁ~、俺から逃げようとするなんて、さ」
許すわけないよねぇ~。
緩い口調とは裏腹に、ギラギラとした目は不穏に満ちていて、まるで肉食獣に睨まれたかのように身体が動かなくなる。
がぷりとその咢を開いて、迫る唇。そのまま深く深く口づけられて。
思考が白く染まっていく。困惑も快楽もどちらも抱えながら……どんどん流されていく。
「はっ! ゆぅま……さん! んぐぅ……」
酸素を求めて離れた瞬間、直ぐにもう一度塞がれて。
ぐちゅぐちゅと耳奥に響く水音とか、ぐるぐると巡る思考とか。
なんで? とか、どうして? とか。
何故、笑みの形に弧を描く唇から吐き出される呼気は熱を孕んでいるんだ? とか。
何故、笑ってるみたいに弧を描いている目の奥に哀しみが満ちてるんだ? とか。
何故……なぜ……ナゼ?
泡沫のように何故が浮かんでは消えていく。
だけど……。
そんなの全部ぜんぶゼンブどうでもよくなる程に……。
ただひたすらにメチャクチャにグチャグチャに貪られた。
僅かに浮上した意識の向こう、スマホの着信音が聞こえて。
ぎしりと軋み音を上げるベッドと、僅かに外側に傾くマットレス。
夢うつつの向こう側で、ぽとりと落とされた台詞は。
「 」
目を覚ますと、朝だった。
ぎしぎしとあらぬ所と股関節とついでに色んな所が痛みに悲鳴を上げるのを無視して風呂へと向かう。
「うわっ」
鏡に映る自分の姿に……ドン引きした。
ありとあらゆるところに残された所有を、執着を示すような痕に、所々に付けられた歯形、ついでに腰の辺りには長い指の持ち主が残したであろう手形が赤々とその存在を示していた。
シャワーから流れる水が滲みて、思わず顔を歪めてしまう。
湯気に曇った鏡を掌で拭えば。
そこには情けなく眉を下げた、凡庸な男が映っていた。
風呂から出て改めて部屋を見回せば、部屋はしんと静まり返り、僕以外の気配を感じる事はなかった。
それはまるで……取り残されたようで。
「っ! なんなんだよっ! あの人はっ!!」
思わず悲鳴のような叫びが口を吐く。
防音が整っているのを良い事に、恥も遠慮もなく当たり散らす。
「なんでっ! なんで僕なんかに関わるんだっ! かかわったんだっ!
あの日っ! たまたますれ違ってっ! アクキー渡してっ! それだけで! それだけで終わりのはずだった!
なのにさぁ! なんでだよっ! なんで近づく?! なんで踏み込んできた?!
なんで……っ!」
僕を抱きながら、泣きそうな顔で笑ってた優真さんの顔が、軽い口調の筈なのに何かを求めて希う声色が、全部全部忘れられない。忘れることができない。
どういうことなのか一から十まで問いただしたいのに、その姿は今はない。
ポツンと取り残された部屋はどこか冷たくて……他人の顔をして拒絶していた。
その日から……。
優真さんが帰ってくることはなくて。
三日後、僕はその部屋を後にした。
16
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【同級生BL】ミカヅキと太陽【完結済み】
DD
BL
話したことはないけど、互いに存在は認識している"よそのクラスの目立つ奴"同士。
そんなふたりが仲良くなったり、ぎくしゃくしたり、仲直りしたりする短編。
前後編で完結済みですが、加筆修正はしばらく入ります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
死に戻り騎士は、今こそ駆け落ち王子を護ります!
時雨
BL
「駆け落ちの供をしてほしい」
すべては真面目な王子エリアスの、この一言から始まった。
王子に”国を捨てても一緒になりたい人がいる”と打ち明けられた、護衛騎士ランベルト。
発表されたばかりの公爵家令嬢との婚約はなんだったのか!?混乱する騎士の気持ちなど関係ない。
国境へ向かう二人を追う影……騎士ランベルトは追手の剣に倒れた。
後悔と共に途切れた騎士の意識は、死亡した時から三年も前の騎士団の寮で目覚める。
――二人に追手を放った犯人は、一体誰だったのか?
容疑者が浮かんでは消える。そもそも犯人が三年先まで何もしてこない保証はない。
怪しいのは、王位を争う第一王子?裏切られた公爵令嬢?…正体不明の駆け落ち相手?
今度こそ王子エリアスを護るため、過去の記憶よりも積極的に王子に関わるランベルト。
急に距離を縮める騎士を、はじめは警戒するエリアス。ランベルトの昔と変わらぬ態度に、徐々にその警戒も解けていって…?
過去にない行動で変わっていく事象。動き出す影。
ランベルトは今度こそエリアスを護りきれるのか!?
負けず嫌いで頑固で堅実、第二王子(年下) × 面倒見の良い、気の長い一途騎士(年上)のお話です。
-------------------------------------------------------------------
主人公は頑な、王子も頑固なので、ゆるい気持ちで見守っていただけると幸いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
恭介&圭吾シリーズ
芹澤柚衣
BL
高校二年の土屋恭介は、お祓い屋を生業として生活をたてていた。相棒の物の怪犬神と、二歳年下で有能アルバイトの圭吾にフォローしてもらい、どうにか依頼をこなす毎日を送っている。こっそり圭吾に片想いしながら平穏な毎日を過ごしていた恭介だったが、彼には誰にも話せない秘密があった。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる