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袖すり合うと……side洸太 6
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「みんにゃー! 今日も来てくれてありがとにゃん!
みんにゃのくーにゃん! 登場にゃん!
しばらく配信空いてごめんにゃん……。ちょっとくーにゃん、生きるか死にゅかの瀬戸際だったにゃん……。
にゅ? 違うにゃんっ! 中の人なんていにゃいにゃん! くーにゃんはくーにゃん。そこんとこお間違いなくーにゃん。
あ、メタロンにゃん! 早速コメありがとにゃん! 大丈夫! くーにゃん元気にゃんよー!」
火事やらなんやらのゴタゴタで、いつも二日おきには配信してたのに、一週間程空いてしまった。
流行り廃りの早い世界だからどうなるかと思ったけど、配信を始めた途端、いつもの常連さんたちのコメントが、猫耳の生えた可愛らしいフレームにしたコメント欄を流れていく。
その中には、少し前まで姿を見せなかったメタロンさんのコメントもあった。
どうやら非常に落ち込むことがあって配信に顔を出せないでいたけど、なんかいい事があって復活したそうだ。
例のホラゲ配信の日に、浮かれまくったメタロンさんのコメントが来てその復活を知った。
「ちょっと久しぶりだし、ちょっと準備不足にゃのもあって、今日は雑談配信にゃん!
なんかくーにゃんに聞きたい事あるにゃんかー?」
ゆらゆらと揺れるネコミミ美少女を動かしながら、タイミングを合わせて目パチや口パクを入れていく。
そうすればまるで生きてるみたいに彼女は動く。
「んにゃ? まずは最初の質問にゃんねー。スリーサイズはいくつですか? って昭和かっ! にゃっ!! セクハラにゃっ!」
顔を赤くして怒りの表情を浮かべる、画面の中のくーにゃんを目にして、本当に無事で良かったと安堵の息を吐いた。
「……まさにっ! 奇跡っ!! 神よっ! かんしゃしますぅぅぅ!!」
貴重品とパソコンの様子を見に、水浸しになった部屋を訪れたあの日。
普段盆暮れ正月の時にしか意識しないような神サマに感謝を捧げていた。
「おぉ~。よかったねぇ~。パソコン周りだけ無事とか、ホント奇跡的ぃ~」
優真さんの言うとおりだった。
部屋のあちこちは上階からの漏水やなんやかんやで水浸しだったのだが、本当に何の奇跡なのか、パソコンデスクの周りだけ水がかかっていなかった。
まぁ、その分クローゼットの中身は全滅していたけど。いやホント、明日から何着ればいいんだ?
今日は優真さんの服を借りたけど、こんなお高そうな服、おちおち着てられない。
あと、パンツの丈とか……ね。はぁ。
「何があるか分からないから、通電するのは後にして、とりあえず運び出しちゃおう~」
そう言って腕まくりをするのは、言わずもがな優真さんだ。
『なんでも屋』とかいう胡散臭さ満載の職業であったとしても、仕事があるなら付き合ってもらうのは悪いと一度は断ったのだが、それなら荷運びを『なんでも屋』に依頼してよと言われて断り切れなくなったのだ。
しかも……料金は洸太からのキスで良いよ~とかふざけたことを宣うから……してやった。キスを。
……まぁ、ほっぺにだったんだけどさ。妙に柔らかい頬に唇が触れた時、やたらと鼓動が早くなったのは気のせいだと思いたい。
……その後「おつりだよ~~!」とか言われて、がっつりキスされたのは未だに腑に落ちない。
ていうか僕。流されてるな? だいぶ流されてるな? 色恋沙汰に自信が無くて、もちろん女性とオツキアイしたことなんか生まれてこの方無くて。
だけど、好きになる対象は……女性だと思っていたんだけど……な?
だけど……優真さんとキスをするのは……嫌いじゃない……むしろ……気持ちい……
「うわぁぁぁ!!!!!」
自分の思考回路に驚いて、非常時持ち出し用にしていた貴重品を詰めたバッグを取り落としそうになる。
いやなんで? ホントなんで? 僕ってそんなチョロかったっけ? いやいやいやいや……。
「なになに?! なにごと~?! どしたの~? 虫でもでた~?」
リビングの方で無事な物の確認をお願いしていた優真さんが、何かを片手に持って顔を覗かせた。
「い、いえ。なんでもないですだいじょうぶです優真さんのほうはどうですか……って何もってんだあんたっ!?」
優真さんが持っていた赤いボディに白いラインが入ったブツは……ちょっと前に行われた友人達との飲み会で押し付けられたものだった。
「えぇ~? なんかテレビボードんトコ大事そうにしまってあるからなにかな~? と思ってさぁ。
ふぅ~ん、洸太も……こういうの興味あるんだねぇ~~、だけどさ?」
ぐぐっと身体ごと近づいて、鼻先が触れそうな距離まで端正な顔が近づいてきて……。
悪戯っ子のようにグレーに彩られた瞳を輝かせて……。
「今度から、俺がシテあげるから~~、ね?」
洸太のキモチイイトコ、教えてね? なんて言われてにんまりと微笑まれて……一瞬期待してしまった自分が信じられなくてずさりと後ずさった。
「お、おかまいなくぅぅっ!!」
熱いほどに真っ赤になった顔も耳も、優真さんにはバレバレなんだろうと思いつつ、僕はトイレに籠城するしかできなかった。
ちなみにトイレは水浸しで使えなくなっていた。
みんにゃのくーにゃん! 登場にゃん!
しばらく配信空いてごめんにゃん……。ちょっとくーにゃん、生きるか死にゅかの瀬戸際だったにゃん……。
にゅ? 違うにゃんっ! 中の人なんていにゃいにゃん! くーにゃんはくーにゃん。そこんとこお間違いなくーにゃん。
あ、メタロンにゃん! 早速コメありがとにゃん! 大丈夫! くーにゃん元気にゃんよー!」
火事やらなんやらのゴタゴタで、いつも二日おきには配信してたのに、一週間程空いてしまった。
流行り廃りの早い世界だからどうなるかと思ったけど、配信を始めた途端、いつもの常連さんたちのコメントが、猫耳の生えた可愛らしいフレームにしたコメント欄を流れていく。
その中には、少し前まで姿を見せなかったメタロンさんのコメントもあった。
どうやら非常に落ち込むことがあって配信に顔を出せないでいたけど、なんかいい事があって復活したそうだ。
例のホラゲ配信の日に、浮かれまくったメタロンさんのコメントが来てその復活を知った。
「ちょっと久しぶりだし、ちょっと準備不足にゃのもあって、今日は雑談配信にゃん!
なんかくーにゃんに聞きたい事あるにゃんかー?」
ゆらゆらと揺れるネコミミ美少女を動かしながら、タイミングを合わせて目パチや口パクを入れていく。
そうすればまるで生きてるみたいに彼女は動く。
「んにゃ? まずは最初の質問にゃんねー。スリーサイズはいくつですか? って昭和かっ! にゃっ!! セクハラにゃっ!」
顔を赤くして怒りの表情を浮かべる、画面の中のくーにゃんを目にして、本当に無事で良かったと安堵の息を吐いた。
「……まさにっ! 奇跡っ!! 神よっ! かんしゃしますぅぅぅ!!」
貴重品とパソコンの様子を見に、水浸しになった部屋を訪れたあの日。
普段盆暮れ正月の時にしか意識しないような神サマに感謝を捧げていた。
「おぉ~。よかったねぇ~。パソコン周りだけ無事とか、ホント奇跡的ぃ~」
優真さんの言うとおりだった。
部屋のあちこちは上階からの漏水やなんやかんやで水浸しだったのだが、本当に何の奇跡なのか、パソコンデスクの周りだけ水がかかっていなかった。
まぁ、その分クローゼットの中身は全滅していたけど。いやホント、明日から何着ればいいんだ?
今日は優真さんの服を借りたけど、こんなお高そうな服、おちおち着てられない。
あと、パンツの丈とか……ね。はぁ。
「何があるか分からないから、通電するのは後にして、とりあえず運び出しちゃおう~」
そう言って腕まくりをするのは、言わずもがな優真さんだ。
『なんでも屋』とかいう胡散臭さ満載の職業であったとしても、仕事があるなら付き合ってもらうのは悪いと一度は断ったのだが、それなら荷運びを『なんでも屋』に依頼してよと言われて断り切れなくなったのだ。
しかも……料金は洸太からのキスで良いよ~とかふざけたことを宣うから……してやった。キスを。
……まぁ、ほっぺにだったんだけどさ。妙に柔らかい頬に唇が触れた時、やたらと鼓動が早くなったのは気のせいだと思いたい。
……その後「おつりだよ~~!」とか言われて、がっつりキスされたのは未だに腑に落ちない。
ていうか僕。流されてるな? だいぶ流されてるな? 色恋沙汰に自信が無くて、もちろん女性とオツキアイしたことなんか生まれてこの方無くて。
だけど、好きになる対象は……女性だと思っていたんだけど……な?
だけど……優真さんとキスをするのは……嫌いじゃない……むしろ……気持ちい……
「うわぁぁぁ!!!!!」
自分の思考回路に驚いて、非常時持ち出し用にしていた貴重品を詰めたバッグを取り落としそうになる。
いやなんで? ホントなんで? 僕ってそんなチョロかったっけ? いやいやいやいや……。
「なになに?! なにごと~?! どしたの~? 虫でもでた~?」
リビングの方で無事な物の確認をお願いしていた優真さんが、何かを片手に持って顔を覗かせた。
「い、いえ。なんでもないですだいじょうぶです優真さんのほうはどうですか……って何もってんだあんたっ!?」
優真さんが持っていた赤いボディに白いラインが入ったブツは……ちょっと前に行われた友人達との飲み会で押し付けられたものだった。
「えぇ~? なんかテレビボードんトコ大事そうにしまってあるからなにかな~? と思ってさぁ。
ふぅ~ん、洸太も……こういうの興味あるんだねぇ~~、だけどさ?」
ぐぐっと身体ごと近づいて、鼻先が触れそうな距離まで端正な顔が近づいてきて……。
悪戯っ子のようにグレーに彩られた瞳を輝かせて……。
「今度から、俺がシテあげるから~~、ね?」
洸太のキモチイイトコ、教えてね? なんて言われてにんまりと微笑まれて……一瞬期待してしまった自分が信じられなくてずさりと後ずさった。
「お、おかまいなくぅぅっ!!」
熱いほどに真っ赤になった顔も耳も、優真さんにはバレバレなんだろうと思いつつ、僕はトイレに籠城するしかできなかった。
ちなみにトイレは水浸しで使えなくなっていた。
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