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Episode8 聖遺物を求めて

第14話 酒場の戦い

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「…!!シューに、サリットじゃないか!」

「アコードとアルモ!二人こそ、どうしてここに!?」

 宿屋の従業員から教えてもらった、情報通が集まるという酒場の前まで来たところで、俺とアルモは反対側から歩いてきたシューとサリットに偶然出会った。

「俺とアルモは、宿の従業員から、この酒場のことを聞いてな…シュー達は!?」

「俺とサリットは、市場の露天商から、この酒場のことを聞いたんだ」

「正確には、私が手に入れた情報なんだけどね…」

「俺だって、重要な情報を手に入れたじゃないか!」

「シュー。重要な情報って!?」

「…名前とこの街にいた理由までは掴むことができなかったんだけど…数日前、この街にワイギヤの将軍が訪れていたらしい」

「数日前…と言えば、アルモ…月明りの丘での異変とも重なるよな…」

「アコード!その、月明りの丘の異変って言うのは!?」

 俺はサリットに、宿屋で聞いた一件を話した。

「…私も、この宿屋の情報を教えてくれた商人から、数日前に夜空が綺麗に見える丘で爆発事件が発生したって耳にしたわ」

「数日前に訪れたワイギヤの将軍と、月明りの丘の異変、そして爆発事件…」

「全てが無関係、という訳ではなさそうだな…」

「とにかく、この酒場に入って情報収集をするとしよう。ここまで明確な情報が俺たち4人に集まっているんだ。これで収穫無しって方が、おかしいだろ!?」

「アコードの言う通りね。それじゃ、入るわよ!」

 スウィングドアを開けたアルモを先頭に、俺たち4人はその酒場へと足を踏み入れた。


 ところが…

「…ねぇ…何だか、様子が可笑しくない!?」

 サリットが、蚊の鳴くような声で他の3人に問いただす。

 それもそのはず。店内はしんと静まり返り、椅子に腰かけた数名の客も、虚ろな目で遠くを見ているようだった。

“カチャッ…”

 アルモが月明りの剣の柄を持ち、居合切りを放つような体制になる。

 それに呼応するように、俺を含めた他の3人も、それぞれの得物の柄に手を当て、臨戦態勢を整える。

 そして…

「ウガァァァァ!!!!」

“ブゥン!”

“シュン”

“ギィン!”

 俺たちがちょうど店の中央付近に来たところで、アルモのすぐ近くにいた客が突然立ち上がり、太いこん棒を手にアルモに襲い掛かった。

「アルモ!!」

「私は大丈夫よ!それよりも!!」

“ドスン!”

“バタン!……ガラガラガラガラ…”

 アルモが居合切りで防いだ客の一撃が口火を切り、椅子に腰かけていた客が一斉に立ち上がると、俺たち目がけて襲い掛かってきた。

“ギィン!!”

“ヒュンヒュン……カン!…ザシュ…”

 俺とシューは剣で、サリットは距離を取りながら短曲剣(マインゴーシュ)を投げつけ応戦する。

「アコード!分かっていると思うけど…」

「ああ。傷つけないように戦えばいいんだろ!?」

「ええ!恐らく、この人たちは魔法で操られているだけよ」

「でもさ、アルモ!魔法が使える二人はいいとして、魔法が使えない俺とサリットは、どうすればいい!?」

「…それなら!!」

“パラライウェポン!!”

“シューーーー”

 アルモが魔法を放つと、シューとサリットが使っている武器を淡く黄色い光が包み込み、各々の刀身へと吸い込まれていった。

「これで、あなたたち二人の武器に触れたものを、一時的に麻痺させることが可能になったはずよ」

「なるほど!これなら、確かに傷つけないように戦うことが可能だな!」

「これって、相手の肌に直接当たらなくても効果があるの?」

「ええ。防具に当てられれば、そこから魔法が敵の体全体に行き渡って、効果が発現するはずよ」

「…ならば、シューとサリットは、俺たちに攻撃を仕掛けてくる人の体を片っ端から麻痺させてくれ!」

「それは構わないけど、アルモとアコードは!?」

「二人に時間稼ぎをしてもらっている間に、俺とアルモは“アノ”準備をする」

 俺は道具袋から小さな弓矢のオブジェを取り出すと、呪文を唱えた。

 そして次の瞬間…

“ボワン…”

 オブジェは元の大きさに戻り、そこにはそれまで存在しなかったショートボウと矢が存在していた。

「アコード!いつの間にそんなものを!?」

「漆黒の翼に格納されていた古代の兵器を一つ借りたんだよ。呪文一つで伸縮自在の弓矢だそうだ…そんなことより、アルモ!あの準備を!!」

「了解!」

「シューとサリットは、俺とアルモの周囲に敵さんを寄せ付けないようにしてくれ!」

「「了解!!」」

“ザザッ”

“ギィン!”

“ヒュンヒュン……カン!…ザシュ…”

 麻痺の魔法がかかった武器を手に、シューとサリットが襲い掛かってくる酒場の客に次々と攻撃を仕掛け、戦闘不能の状態にしていく。

 そして、店内の客があらかた二人によって痺れさせられた頃、俺とアルモの準備も整った。

「アルモ!行くぞ!!」

「ええ!!!」

”シャイニング・ネーーベルッ!!”

 次の瞬間、店内は眩い光に包まれると同時に、光の雨が降り注いだのだった。
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