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Episode7 三日月同盟
第14話 変貌
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風勢が治まると、ヴァジュラの立っていた場所に、巨大な人影が姿を現した。
それまで身に着けていた鎖帷子(くさりかたびら)は姿を消し、上半身は裸の状態で、筋骨隆々な姿を露わにしている。
そして、それまで得物としていたレイピアから、幅広な刀身を持つクレイモアに代わっていた。
“ブゥン…ブゥン…”
得物を振り回す豪快な音が周囲に木霊する。
「…とうとう本性を現したわね!!」
「アルモ…さっきまでのヴァジュラからは感じ取ることのできない、けた違いのパワーを感じる!油断は禁物だ…」
「ええ。分かっているわ」
クレイモアを振り回す音に混じり、今度は“ドシン…ドシン…”という音が響き始めた。
“ギィン!”
そして、クレイモアの切っ先をレンガ造りの地面の隙間に刺しこみ、直立不動の状態でヴァジュラが問う。
「…さぁ、最初に我の刃の餌食になるのはどいつだ!!」
「アルモ…分かっているよな……」
「ええ…『騎士道』って奴には、反するのだろうけどね…」
「…違いない!!」
“ザザッ”
俺とアルモは、同じタイミングで地面を蹴った!!
「笑止!さすが、崇高な理想を掲げる教団を裏切った騎士の子孫だな!!!」
「生憎、全世界を裏切っている邪悪教団に向ける寛大さなんて、持ち合わせていないわ!」
“ギィン!!”
アルモの一撃を、クレイモアで難なく防ぐヴァジュラ。
「アルモ!引け!!」
“ササッ” “ブゥゥゥゥン!!!”
アルモがヴァジュラから一歩下がった瞬間、ヴァジュラの切っ先が空を切った。
受け止めた月明りの剣と共に、アルモを薙ぎ払う算段だったのだろう。
そして、この時できた一瞬のスキを、俺は見逃さなかった。
“ササッ………ズシャ!!”
アルモの数歩後にいた俺は、すかさずヴァジュラに突撃し、その脇腹にショートソードの一撃を食らわせた…はずだった。
“ギィン!!”
俺の切っ先がヴァジュラの脇腹にヒットした瞬間、まるで金属と金属がぶつかり合うような音が周囲に木霊したのだ。
俺は身の危険を感じ、咄嗟にアルモの横へと退いた。
「ショートソードが効かないなんて、初めてだ…」
俺の使うショートソードは、長年アルモが持っていたことで魔力を帯びている。それを、潜在的に魔法の素質があった俺が使用することで、その威力は数倍、いや…十数倍に膨れ上がっていた。
だが、その攻撃がヴァジュラには微塵も効かなかった。
「…きっと、身体的にも私たちの想像以上に鍛えられていて、その上にさらに強化魔法がかけられているんだわ…」
「俺のショートソードの魔力が、やつの身体と魔力に勝てなかったという訳か…」
「ハッハッハッ!そんな鈍(なまく)らで、我の鍛え抜かれた身体を貫けると本気で思うたか!!」
「アルモ。君の月明りの剣なら…」
「…私だけの力では無理ね………アコード、あなたの力もないと!!」
「俺の、力!?」
「あなたは、三日月同盟を創設した伝説の英雄クレスが、その生涯を賭して守り抜いた教団の創設者ワイギヤの子孫。潜在的な魔力の量は、間違いなく私よりも上のはず」
「…確かに、フォーレスタの試練を受けてから、詠唱呪文が自然に頭に浮かんできて、それまで使ったことのない魔法を放つことができたりしたけど…」
その時だった。
“…フォーレスタの血を受け継ぎし者よ。私の子孫よ。その力で、我が同胞クレスの子孫を助けるのだ!!”
フォーレスタ村で試練の洞窟に入る直前に聞いた声が、アルモを助けるよう言っている。
「アコード…今の声って…」
「アルモにも、聞こえているのか!?」
「ええ。アコードに、私を助けるようにって語りかけているように聞こえたけど…」
「(精霊シャムスに我命ずる…)」
「(言葉が…詠唱呪文が頭に自然と浮かんでくる…俺の先祖ワイギヤは、この魔法を放てと言っているのか…)」
「…アコード!?」
「アルモ!月明りの剣を構えて!!」
「えっ!?……ええ、分かったわ」
俺の要求に困惑しながらもアルモの身体は瞬時に応え、目の前に月明りの剣を構えた。
そして俺は、構えられた月明りの剣に向かって右手を伸ばし、手をかざしながら脳裏に浮かんだ通りに詠唱呪文を復唱した。
「精霊シャムスに我命ずる。光の力を、我が同胞に貸し与えよ!!」
“ライトエスパーーダ!!”
すると、かざした右手から眩い無数の光がほとばしると、それらの光はアルモの持つ月明りの剣へともれなく吸収され、その刀身は神々しい光を放っていた。
「何だ!その剣は。アルモに…クレスの剣に、一体何をした!!?」
神々しい光を放ち出した月明りの剣に恐れを抱いたのか、ヴァジュラが俺に問う。
「…明らかに動揺しているわね。でも、それもそのはずよ。なぜなら、アコード…あなたが今放った魔法は、かなりの使い手でないと発現させられない、とても高度な魔法なのよ…」
「…俺は脳裏に浮かんだ言葉を復唱しただけなんだが…」
「私たちは、ご先祖様に守られているってことかしら、ね」
「ああ、どうやらそうらしい。ご先祖様のご加護があるうちに、ヴァジュラをどうにかしないとな…」
「ごちゃごちゃと、何を話している…まぁ、いい。ライトエスパーダには驚いたが、それも魔法をかけられた武器の使い手の力量あってこそ。お前らの希望、我がクレイモアで一刀両断にしてくれるわ!!!」
“ブゥゥゥゥン!!!”
次に瞬間、ヴァジュラはクレイモアの強烈で素早い一撃を、俺とアルモに対し繰り出したのだった。
それまで身に着けていた鎖帷子(くさりかたびら)は姿を消し、上半身は裸の状態で、筋骨隆々な姿を露わにしている。
そして、それまで得物としていたレイピアから、幅広な刀身を持つクレイモアに代わっていた。
“ブゥン…ブゥン…”
得物を振り回す豪快な音が周囲に木霊する。
「…とうとう本性を現したわね!!」
「アルモ…さっきまでのヴァジュラからは感じ取ることのできない、けた違いのパワーを感じる!油断は禁物だ…」
「ええ。分かっているわ」
クレイモアを振り回す音に混じり、今度は“ドシン…ドシン…”という音が響き始めた。
“ギィン!”
そして、クレイモアの切っ先をレンガ造りの地面の隙間に刺しこみ、直立不動の状態でヴァジュラが問う。
「…さぁ、最初に我の刃の餌食になるのはどいつだ!!」
「アルモ…分かっているよな……」
「ええ…『騎士道』って奴には、反するのだろうけどね…」
「…違いない!!」
“ザザッ”
俺とアルモは、同じタイミングで地面を蹴った!!
「笑止!さすが、崇高な理想を掲げる教団を裏切った騎士の子孫だな!!!」
「生憎、全世界を裏切っている邪悪教団に向ける寛大さなんて、持ち合わせていないわ!」
“ギィン!!”
アルモの一撃を、クレイモアで難なく防ぐヴァジュラ。
「アルモ!引け!!」
“ササッ” “ブゥゥゥゥン!!!”
アルモがヴァジュラから一歩下がった瞬間、ヴァジュラの切っ先が空を切った。
受け止めた月明りの剣と共に、アルモを薙ぎ払う算段だったのだろう。
そして、この時できた一瞬のスキを、俺は見逃さなかった。
“ササッ………ズシャ!!”
アルモの数歩後にいた俺は、すかさずヴァジュラに突撃し、その脇腹にショートソードの一撃を食らわせた…はずだった。
“ギィン!!”
俺の切っ先がヴァジュラの脇腹にヒットした瞬間、まるで金属と金属がぶつかり合うような音が周囲に木霊したのだ。
俺は身の危険を感じ、咄嗟にアルモの横へと退いた。
「ショートソードが効かないなんて、初めてだ…」
俺の使うショートソードは、長年アルモが持っていたことで魔力を帯びている。それを、潜在的に魔法の素質があった俺が使用することで、その威力は数倍、いや…十数倍に膨れ上がっていた。
だが、その攻撃がヴァジュラには微塵も効かなかった。
「…きっと、身体的にも私たちの想像以上に鍛えられていて、その上にさらに強化魔法がかけられているんだわ…」
「俺のショートソードの魔力が、やつの身体と魔力に勝てなかったという訳か…」
「ハッハッハッ!そんな鈍(なまく)らで、我の鍛え抜かれた身体を貫けると本気で思うたか!!」
「アルモ。君の月明りの剣なら…」
「…私だけの力では無理ね………アコード、あなたの力もないと!!」
「俺の、力!?」
「あなたは、三日月同盟を創設した伝説の英雄クレスが、その生涯を賭して守り抜いた教団の創設者ワイギヤの子孫。潜在的な魔力の量は、間違いなく私よりも上のはず」
「…確かに、フォーレスタの試練を受けてから、詠唱呪文が自然に頭に浮かんできて、それまで使ったことのない魔法を放つことができたりしたけど…」
その時だった。
“…フォーレスタの血を受け継ぎし者よ。私の子孫よ。その力で、我が同胞クレスの子孫を助けるのだ!!”
フォーレスタ村で試練の洞窟に入る直前に聞いた声が、アルモを助けるよう言っている。
「アコード…今の声って…」
「アルモにも、聞こえているのか!?」
「ええ。アコードに、私を助けるようにって語りかけているように聞こえたけど…」
「(精霊シャムスに我命ずる…)」
「(言葉が…詠唱呪文が頭に自然と浮かんでくる…俺の先祖ワイギヤは、この魔法を放てと言っているのか…)」
「…アコード!?」
「アルモ!月明りの剣を構えて!!」
「えっ!?……ええ、分かったわ」
俺の要求に困惑しながらもアルモの身体は瞬時に応え、目の前に月明りの剣を構えた。
そして俺は、構えられた月明りの剣に向かって右手を伸ばし、手をかざしながら脳裏に浮かんだ通りに詠唱呪文を復唱した。
「精霊シャムスに我命ずる。光の力を、我が同胞に貸し与えよ!!」
“ライトエスパーーダ!!”
すると、かざした右手から眩い無数の光がほとばしると、それらの光はアルモの持つ月明りの剣へともれなく吸収され、その刀身は神々しい光を放っていた。
「何だ!その剣は。アルモに…クレスの剣に、一体何をした!!?」
神々しい光を放ち出した月明りの剣に恐れを抱いたのか、ヴァジュラが俺に問う。
「…明らかに動揺しているわね。でも、それもそのはずよ。なぜなら、アコード…あなたが今放った魔法は、かなりの使い手でないと発現させられない、とても高度な魔法なのよ…」
「…俺は脳裏に浮かんだ言葉を復唱しただけなんだが…」
「私たちは、ご先祖様に守られているってことかしら、ね」
「ああ、どうやらそうらしい。ご先祖様のご加護があるうちに、ヴァジュラをどうにかしないとな…」
「ごちゃごちゃと、何を話している…まぁ、いい。ライトエスパーダには驚いたが、それも魔法をかけられた武器の使い手の力量あってこそ。お前らの希望、我がクレイモアで一刀両断にしてくれるわ!!!」
“ブゥゥゥゥン!!!”
次に瞬間、ヴァジュラはクレイモアの強烈で素早い一撃を、俺とアルモに対し繰り出したのだった。
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