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Episode7 三日月同盟

第12話 屍術師

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 アルモの聖なる矢(ホーリーアロー)で、ヴァジュラの横を無事にすり抜けた俺とサリット、ザイールの3人は、5人1組の陣を組んだワイギヤ教軍の兵士たちと対峙していた。

「1・2・3・4………敵さんは合計20組で100人と言ったところかしら…」

「100対3、か……分が悪いな………」

「…だが、魔術師(メイジ)はあの中に居ないようだ」

「魔法を使える敵が居ないとして、俺たちも魔法は使えないんだぞ!?」

「…いつ、私が『魔法は使えない』と言ったかね?」

「それじゃ!!」

「ああ。仮にも私は三日月同盟の『総帥代理』だぞ!?アルモ程ではないが、魔法の1つや2つ、朝飯前さ」

 そういうとザイールは、魔法の詠唱に入る。

「ウィル・オ・ウィスプよ。主である我が名において命ずる。この地に光の雨をもたらし、邪なる者どもに鉄槌を打ち込め!」

「この魔法…確かどこかで…」

”シャイニング・ネーーベルッ!!”

「!!アルモよ!フォーレスタの森で初めて見た、アルモが放った魔法よ!」

 ザイールが魔法を解き放った瞬間、神々しい光が礼拝堂の天井に向かって放たれた。そしてそれが天井を満たした瞬間、四方八方に離散し、まるで無数の流れ星のようにワイギヤ教軍の兵士たちに降り注がれた。

 あまりにも神々しい光景に、俺とサリット、そしてワイギヤ教軍の兵士たちは、天井から降り注ぐ無数の光の虜となった。

 そして、その光の直撃を受けたワイギヤ教軍の兵士たちが、一人また一人と倒れていき、光が収まるころには、副長と思しき人物と複数の兵士が残るのみとなっていた。

「…おのれ!教祖様より預かりし神の兵を、よくも!!!」

 ザイールの副長と思われる人物が、魔法を放ったザイールに向かって吠える。

「『神の兵』だと!?笑わせてくれる!!なぜ神の兵ともあろう者共が、光の精霊の魔法でダメージを受け、倒れるのだ!!!」

「問答無用!!」

 副長がそう言った次の瞬間、ザイールの魔法でも倒れなかった十数名の兵士が副長の前に立ちはだかった。

「サリット!!」

「ええ!!」

 即座に、ザイールの前に陣取る俺とサリット。

「君たち…」

「俺たち魔法は使えませんが、アコードとの修行と、自警団での活動で、接近戦は得意なんです」

「ザイールさんは、魔法で私たちの援護をして下さい!!」

「ああ、分かった。正直、さっきの魔法は魔力の消費が激しくてな…だが、君たちの援護なら問題ない!」

 刹那、俺とサリットの得物と身に着けた防具が青白く光り出した。

「さぁ、思う存分戦ってくれ!」

「いくぞ!」

“ザザッ”

 次の瞬間、俺とサリットは副長をガードするかのように布陣している兵士たちに向かって突撃した。

“キン!!”

 俺は鞘からカットラスを抜き去ると、先頭に布陣していた兵士に切りつけた。

“フラッ…”

 兵士は俺の攻撃を大盾で防いだものの、俺の攻撃の勢いが兵士の耐久力を上回り、一瞬大盾から兵士の喉元が露わとなった。

“ザシュ!”

 俺は躊躇することなく、兵士の喉元にカットラスの刀身を突き刺し、兵士は絶命した。

“シュッ…シュッ………バタッ…バタッ”

 サリットに目をやると、お得意の投剣術で短曲剣(マインゴーシュ)を敵の喉元に的確に投げ付け、確実に屠っていた。

「…相変わらず見事な投剣術だな!」

「無駄口叩かないで、前を見る前を!!」

「へいへい」

“ヒュンヒュンヒュンヒュン…”

 更に数歩後方にいるザイールからは、聖なる矢(ホーリーアロー)が打ち出され、俺とサリットの虚を突こうとする兵士達を狙い撃ちにしていた。

 一言礼を言おうと、俺は振り返ろうとしたが…

「サリットの言う通りだ!俺のことは気にせず、前を見たまえ!!」

「…ほら!ザイールにまで言われた!!」

「…」

 俺は返す言葉が見つからず、仕方なく前方にカットラスを構えた。

「………副長を守る壁は、あと少しで破れそうだな…」

 俺のカットラスの斬撃、サリットの投剣術、そしてザイールの魔法により、副長を守る兵士達は次々に倒れていき、気が付けば副長を入れて残り数名というところまで、その数を減らしていた。

「……君たちの奮闘で、私たちがアルモとアコードから託された使命は果たされそうだ!」

「あと少しです。最後まで気を抜くことなく叩きましょう」

「そうだな」

 その時だった。

“フシュゥゥゥゥゥゥ…”

 残り数名となった副長の盾の向こう側から、大量の黒いオーラが天井に向かい放たれていた。

「!!!!!なんだ!あの禍々しいオーラは」

「…何だか、とても嫌な予感がするわ…」

「あの副長の、あの出で立ち………屍術師(ネクロマンサー)か!?」

「その、ネクロマンサーって…」

「死体へ再度命を吹き込み、その体がバラバラになるまで使役する魔術師のことさ…まさか、教団の魔法研究がここまで進んでいたとは…」

「死体へ、命を吹き込む…だと!?」

「ああ。たが、蘇るわけじゃない。ネクロマンサーの操り人形となるのさ」

「そんな……死者への冒涜だわ…」

「……死の神タナトスよ………我の血肉をもって、我が同胞達に生の恵みを!!!」

“ブウォォォォォォ…”

 副長からの放たれている黒いオーラが数倍に膨れ上がる。

「来るぞ!!」

「!!!」

 そして…

“カダーウェルドーーーーール!!”

 副長が魔法を放った瞬間、副長から放たれていた膨大な黒いオーラが、俺たちに倒された兵士たちを包み込んだのだった。
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