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第29話
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---「なあ、なっちゃん」
「ん?」
皆が寝静まった頃、聡は俺に声を掛けてきた。まだそんなに眠くなかったから仕方なく返事を返した。
「俺、今度こそ夏海ちゃんに告白しようと思ってさ」
「……」
俺が返事を返すと聡は別に聞きたくもない恋バナをし始めた。コイツもなつのことが好きだっていうことは態度を見ていて分かる。多分、本人は気づいていないだろうが。
「けど俺、改めて考えてみてさー、今のままの俺じゃあダメだと思うばーよー」
「…はあ?」
しかし、聡は急に変なことを言い始めた。さっきまで告白するだとか言ってたから思わず声が出てしまった。
「俺みたいな万年補欠が恋愛なんかしてる場合じゃねー。レギュラーなるなら人一倍頑張んねーと!」
「……」
聡は笑いながらああ言っているが、聡が人一倍練習を頑張ってることを俺はよく知っている。なんだかんだで俺は聡のことを1番見てきてるからな。小さい頃は練習に付き合わされたこともあったっけ。まあ俺が野球をしなくなってからはそういうのはなくなったけどな。
多分、聡には野球の才能が全くないんだと思う。でなければ、毎日人一倍練習してる聡が一向に他のメンバーより上手くならない説明がつかない。
だが、そんなこと流石に俺でも本人に言えるわけがない。才能がないってことは聡の今までの努力は無駄だったと言っているようなものだ。
野球一筋の聡に野球を諦めさせるのはどうも気が引けてしまう。だから俺は何も言わなかった。いや、言えなかった。
「だから俺、今年は諦めるよ。だからなっちゃん!」
「ん? ぬーよ?」
すると、聡は優しい眼差しで俺を見つめてきた。俺もそれに釣られるように聡の目をしっかり見つめていた。聡はなにか大事なことを言いたそうだった。
「なっちゃんも頑張れよ!?」
「ッ!? 聡、おまえ…」
聡ははにかみながら俺にはっきりと聞こえるぐらいの小声でそう言った。
どうやら聡は俺がなつのことが好きだと気づいていたようだ。いつから気づいていたのかはわからないが。
聡は俺がなつのことが好きだと知ってたから気を遣って諦めたのだろうか? それとも本当にレギュラーになってから告白するつもりなのか? それとも両方か?
「それじゃあ一生恋愛なんかできねーなおまえ」
「なんでよや!?」
しかし、そんな冗談を言いながらも俺は心の中で聡に感謝している。なんだかんだで聡は良い奴だなと俺は再認識させられた。
そして、俺達は会話を終え眠りにつくのだった。
「ん?」
皆が寝静まった頃、聡は俺に声を掛けてきた。まだそんなに眠くなかったから仕方なく返事を返した。
「俺、今度こそ夏海ちゃんに告白しようと思ってさ」
「……」
俺が返事を返すと聡は別に聞きたくもない恋バナをし始めた。コイツもなつのことが好きだっていうことは態度を見ていて分かる。多分、本人は気づいていないだろうが。
「けど俺、改めて考えてみてさー、今のままの俺じゃあダメだと思うばーよー」
「…はあ?」
しかし、聡は急に変なことを言い始めた。さっきまで告白するだとか言ってたから思わず声が出てしまった。
「俺みたいな万年補欠が恋愛なんかしてる場合じゃねー。レギュラーなるなら人一倍頑張んねーと!」
「……」
聡は笑いながらああ言っているが、聡が人一倍練習を頑張ってることを俺はよく知っている。なんだかんだで俺は聡のことを1番見てきてるからな。小さい頃は練習に付き合わされたこともあったっけ。まあ俺が野球をしなくなってからはそういうのはなくなったけどな。
多分、聡には野球の才能が全くないんだと思う。でなければ、毎日人一倍練習してる聡が一向に他のメンバーより上手くならない説明がつかない。
だが、そんなこと流石に俺でも本人に言えるわけがない。才能がないってことは聡の今までの努力は無駄だったと言っているようなものだ。
野球一筋の聡に野球を諦めさせるのはどうも気が引けてしまう。だから俺は何も言わなかった。いや、言えなかった。
「だから俺、今年は諦めるよ。だからなっちゃん!」
「ん? ぬーよ?」
すると、聡は優しい眼差しで俺を見つめてきた。俺もそれに釣られるように聡の目をしっかり見つめていた。聡はなにか大事なことを言いたそうだった。
「なっちゃんも頑張れよ!?」
「ッ!? 聡、おまえ…」
聡ははにかみながら俺にはっきりと聞こえるぐらいの小声でそう言った。
どうやら聡は俺がなつのことが好きだと気づいていたようだ。いつから気づいていたのかはわからないが。
聡は俺がなつのことが好きだと知ってたから気を遣って諦めたのだろうか? それとも本当にレギュラーになってから告白するつもりなのか? それとも両方か?
「それじゃあ一生恋愛なんかできねーなおまえ」
「なんでよや!?」
しかし、そんな冗談を言いながらも俺は心の中で聡に感謝している。なんだかんだで聡は良い奴だなと俺は再認識させられた。
そして、俺達は会話を終え眠りにつくのだった。
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