夏空模様

慶名 安

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第27話

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 ---「ふー、楽しかったね、なっちゃん!」

 「あ、ああ。そうだな」

 夕日が見えてきた頃、帰りながら俺達は他愛もない会話をしていた。

 たしかに、泳ぐのが苦手な俺だったが、割と楽しかった。別に泳ぎが上手くなったわけではないが。

 きっとなつと一緒だったからかもしれないな。普段プールなんて行かないし、そもそもそんな発想が俺にはなかった。なつが誘ってくれなければ絶対行かなかっただろう。

 「よーし、明日はなにしよっかなー」

 「気がはえーよ」

 「なっちゃん。予定は早めに立てとかないと。夏休みなんてあっという間に終わっちゃうよ」

 「そりゃあそうだけど、毎日毎日動いてたら身体動かなくなるやっし」

 「それはなっちゃんが普段家にこもってるからでしょ!?」

 「ゔっ!? まさかなつに正論言われるとはな」

 半ば口論になりかねたが、なつに正論を言われ、ぐうの音も出なくなった。なつに正論で返されるとは思わなかったからな。

 ---「ただいまー!」

 「…んっ?」

 家につくとなつが元気よく声をかける中、俺はふと玄関に並べられた靴に目が入った。

 若干ボロボロになっている運動靴。父さんのも母さんのもでもない。なつにはサイズが大きいし、俺にはちょっと小さい。だけど、どこかで見覚えのある靴だった。

 「あら? おかえりなさい」

 「ただいま、おばちゃん!」

 「おかえりなさい、夏海ちゃん。プール、楽しかった?」

 「うん! すっごい楽しかったよ!!」

 「そう。それはよかった」

 そんな中、キッチンから母さんが顔を出してきた。母さんは顔を出すなりなつに今日の感想を求めてきた。それに対してなつは嬉しそうに感想を述べた。

 「母さん。この靴…」

 「まず挨拶は?!」

 「…ただいま」

 「それでよし! おかえりなさい」

 俺は2人の話を遮るように靴のことを聞こうとしたが、逆に母さんに説教を受ける羽目になってしまった。いちいち挨拶ぐらいで説教しなくてもいいだろう。

 「夏樹にお客さんよ」

 「俺に、客?」

 「ええ。今、あんたの部屋に居るはずだから早く行ってあげなさい」

 「う、うん」

 しかし、俺の言いたいことは理解していたようで、俺の言いかけた発言に対してそう言った。こんな時間帯に俺に客とは珍しいなー。まあ俺に客が来ることなんてほとんどどころか、滅多にないんだけどな。

 そう思いながらも俺は自分の部屋に向かって行った。

 ---「おう! なっちゃん、おかえりー!!」

 「……」

 部屋に行ってみると、そこにはあぐらをかいて我が物顔でいる聡があった。
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