16 / 29
第16話
しおりを挟む
---「ジンベエザメ、すっごく大っきくて私、ビックリしたの!」
「たしかに大っきーわよね、ジンベエザメ」
その日の夕飯時、無論なつからその話題があがった。なつが楽しそうにその話をすると、母さんも楽しそうになつの話を聞いていた。
「夏樹、夏樹はどうだった? 水族館なんて久しぶりだったろ?」
2人が話している中、父さんが俺に感想を求められた。
「…まあまあかな」
「そうか」
それに対して俺は曖昧に返した。なんだか気恥ずかしくなって素直な感想が出てこなかったのだ。
だが、それを悟ったかのように父さんはわずかに微笑みながら頷いていた。
「もー、なっちゃんってば、私が聞いたときは楽しかったって言ってたじゃん!」
「夏海ちゃん、夏樹は私達の前だと素直になれないのよ!? 察してあげて」
「………」
しかし、あとの2人は空気が読めずにそのことを口に出してしまった。なんで女ってこんなにも口が軽いのだろうか?
「そういえば夏樹ー、あんた小学生の時、遠足で水族館に行った時に一人だけ迷子になって泣き喚いて、先生達困らせたことあったわよね?」
「ッ!?」
「えー!? なにそれー?!」
すると母さんはとんでもない過去話を暴露してきた。なにサラッとバラしてるば、この人?!
「ち、ちげーし!? あれは幼稚園の頃だし!」
「へー、なっちゃんってば、かっわいー♡」
「………」
俺は誤解を解こうとしたが、結局なつにからかわれてしまった。仕方ないだろ? 5歳児があんな広い場所で一人になったらそりゃあ泣くだろ?
「ごちそうさま」
「あら? もういいの?」
「なんか急に食欲なくなった」
「えー? 急に? なんでー?」
「…ターのせいだと思ってるば?」
俺はこれ以上いるのがしんどくなりボソリと皮肉を言った後、逃げるように部屋に戻って行った。ちなみに『ター』とは『誰』という意味だ。
---「ふー」
部屋に戻り一息つくと俺は今日のことを思い返していた。皆んなの前ではああ言ったが、本当に楽しかった。また行きたいと思ってしまうほどに。
「………」
俺の頭の中にまだあのときの笑顔が鮮明に残っていた。あんだけ楽しいと思えたのはきっと、なつが居たからだと思う。
「…風呂、入ろ」
そんなことを思いながら俺は風呂場へと向かって行った。
「たしかに大っきーわよね、ジンベエザメ」
その日の夕飯時、無論なつからその話題があがった。なつが楽しそうにその話をすると、母さんも楽しそうになつの話を聞いていた。
「夏樹、夏樹はどうだった? 水族館なんて久しぶりだったろ?」
2人が話している中、父さんが俺に感想を求められた。
「…まあまあかな」
「そうか」
それに対して俺は曖昧に返した。なんだか気恥ずかしくなって素直な感想が出てこなかったのだ。
だが、それを悟ったかのように父さんはわずかに微笑みながら頷いていた。
「もー、なっちゃんってば、私が聞いたときは楽しかったって言ってたじゃん!」
「夏海ちゃん、夏樹は私達の前だと素直になれないのよ!? 察してあげて」
「………」
しかし、あとの2人は空気が読めずにそのことを口に出してしまった。なんで女ってこんなにも口が軽いのだろうか?
「そういえば夏樹ー、あんた小学生の時、遠足で水族館に行った時に一人だけ迷子になって泣き喚いて、先生達困らせたことあったわよね?」
「ッ!?」
「えー!? なにそれー?!」
すると母さんはとんでもない過去話を暴露してきた。なにサラッとバラしてるば、この人?!
「ち、ちげーし!? あれは幼稚園の頃だし!」
「へー、なっちゃんってば、かっわいー♡」
「………」
俺は誤解を解こうとしたが、結局なつにからかわれてしまった。仕方ないだろ? 5歳児があんな広い場所で一人になったらそりゃあ泣くだろ?
「ごちそうさま」
「あら? もういいの?」
「なんか急に食欲なくなった」
「えー? 急に? なんでー?」
「…ターのせいだと思ってるば?」
俺はこれ以上いるのがしんどくなりボソリと皮肉を言った後、逃げるように部屋に戻って行った。ちなみに『ター』とは『誰』という意味だ。
---「ふー」
部屋に戻り一息つくと俺は今日のことを思い返していた。皆んなの前ではああ言ったが、本当に楽しかった。また行きたいと思ってしまうほどに。
「………」
俺の頭の中にまだあのときの笑顔が鮮明に残っていた。あんだけ楽しいと思えたのはきっと、なつが居たからだと思う。
「…風呂、入ろ」
そんなことを思いながら俺は風呂場へと向かって行った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる