1 / 29
第1話
しおりを挟む
---『好きな季節は?』と聞かれると俺は迷わず『夏』と答える。自分の名前に夏が入ってるからというのも僅かながらにあると言えなくもないが、好きな理由は二つある。
一つは夏の空が好きなのだ。昼はスカイブルーの空と入道雲が視界一面に映ると嫌なことをスッキリと忘れさせてくれる。夜は一面の星々が線香花火のように美しく輝いている。まあ空なんてどの季節だってあんまり変わらないと思うが、暑い季節を乗り切るにはそれぐらいの気持ちでいないと外になんか出ようとは思わんだろう。要は気持ちの持ちようだ。
そしてもう一つの理由は、彼女に会えるからだ。彼女といっても付き合ってるという意味ではない。だがこの時期になると俺の脳裏に彼女の姿がちらつく。真っ白のワンピースに麦わら帽子を被った短髪黒髪の彼女の天真爛漫な笑顔は誰も忘れることなど出来ないだろう。
そんな彼女に俺はいつの間にか好意を寄せていた。初めて出会ったのは五歳くらいの時だったか。彼女が彼女の親と一緒に俺ん家に遊びに来たのが始まりだった。
ちなみに俺と彼女の関係はいとこにあたる。俺の父と彼女の父が兄弟なのだ。彼女の父が兄で俺の父が弟になる。元々俺の父は東京出身なのだが、沖縄出身である母と知り合い、そして結婚した後、沖縄に移住したのだ。親の馴れ初めなんてあんまり興味ない、というより聞きたくもなかったのだが。
話は戻るが最初は彼女に対して恋愛感情は全くなかったのだが、気がついたら彼女のことを意識するようになっていたのだ。
しかし彼女と一緒に居れるのは夏休みの間だけだった。大都会・東京から国内最南端の沖縄だと気軽には会いに行けない。その上、俺の住んでいる場所が北の方だから空港からだと更に時間がかかる。それでも俺は密かに楽しみにしていた。
だが俺も彼女ももう高校2年。来年は受験やら就活やらで忙しくなってくる。もしかすると会えるのも今年までかも知れない。大人になると中々会いに行ける時間も作れなくなるかもしれないしな。そうなると俺もいつまでも何もしないわけにはいかない。
そこで俺は密かに決意していた。彼女、工藤夏海に思いを伝えようと。彼女と過ごせる夏は今年で最後かもしれない。なら、後悔する前にきちんと俺の気持ちを彼女に伝えなければ。
---だがしかし、彼女と会えるのが本当の意味での最後になろうとは俺も彼女自身でさえも知る由もなかった。
俺と彼女の最後の夏休みが間も無く始まる。
一つは夏の空が好きなのだ。昼はスカイブルーの空と入道雲が視界一面に映ると嫌なことをスッキリと忘れさせてくれる。夜は一面の星々が線香花火のように美しく輝いている。まあ空なんてどの季節だってあんまり変わらないと思うが、暑い季節を乗り切るにはそれぐらいの気持ちでいないと外になんか出ようとは思わんだろう。要は気持ちの持ちようだ。
そしてもう一つの理由は、彼女に会えるからだ。彼女といっても付き合ってるという意味ではない。だがこの時期になると俺の脳裏に彼女の姿がちらつく。真っ白のワンピースに麦わら帽子を被った短髪黒髪の彼女の天真爛漫な笑顔は誰も忘れることなど出来ないだろう。
そんな彼女に俺はいつの間にか好意を寄せていた。初めて出会ったのは五歳くらいの時だったか。彼女が彼女の親と一緒に俺ん家に遊びに来たのが始まりだった。
ちなみに俺と彼女の関係はいとこにあたる。俺の父と彼女の父が兄弟なのだ。彼女の父が兄で俺の父が弟になる。元々俺の父は東京出身なのだが、沖縄出身である母と知り合い、そして結婚した後、沖縄に移住したのだ。親の馴れ初めなんてあんまり興味ない、というより聞きたくもなかったのだが。
話は戻るが最初は彼女に対して恋愛感情は全くなかったのだが、気がついたら彼女のことを意識するようになっていたのだ。
しかし彼女と一緒に居れるのは夏休みの間だけだった。大都会・東京から国内最南端の沖縄だと気軽には会いに行けない。その上、俺の住んでいる場所が北の方だから空港からだと更に時間がかかる。それでも俺は密かに楽しみにしていた。
だが俺も彼女ももう高校2年。来年は受験やら就活やらで忙しくなってくる。もしかすると会えるのも今年までかも知れない。大人になると中々会いに行ける時間も作れなくなるかもしれないしな。そうなると俺もいつまでも何もしないわけにはいかない。
そこで俺は密かに決意していた。彼女、工藤夏海に思いを伝えようと。彼女と過ごせる夏は今年で最後かもしれない。なら、後悔する前にきちんと俺の気持ちを彼女に伝えなければ。
---だがしかし、彼女と会えるのが本当の意味での最後になろうとは俺も彼女自身でさえも知る由もなかった。
俺と彼女の最後の夏休みが間も無く始まる。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説


【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる