BLOOD HERO'S

慶名 安

文字の大きさ
上 下
63 / 120
episode5「鬼人の報復」

episode5 #14「能力使用禁止!?」

しおりを挟む
 ---遠征前日

 「いいかい炎美君。これだけは守ってほしいんだ!」

 「? 何ですか?」

 志村から遠征の説明を受けた後のことだった。いつにもなく真剣で真っ直ぐな顔で炎美の顔を見る志村。炎美も目を逸らさずしっかりと志村の目を見つめて聞いた。

 「相手が能力を使ってこない以上は絶対に能力を使っては駄目だよ!?」

 「それは何か理由が?」

 更に聞いてくる炎美。志村は眼鏡の位置を直し口を開いた。

 「能力が使える人間とそうでない人間の身体は大きく違うんだ。もし能力者が無力の人間に攻撃をした場合、無力の人間は豆腐を崩すぐらい簡単に壊れてしまうのさ」

 「!!」

 その言葉を聞いて炎美の背中に寒気が走った。自分がもしそんなことをしてしまったかと想像してしまったのだ。

 万が一その鬼と呼ばれている存在が能力を使わないただの喧嘩の強過ぎるだけの人間だったとしたら…

 「まあ拳銃持った警官相手でも返り討ちにしちゃうぐらいだがらハッキリ言って能力者ではあるだろうけど、一応そのことだけは頭に入れておいてほしいだけだから」

 炎美が黙り込んでいるとフォローを挟む志村。

 「そう…ですよね」

 炎美も気を遣わせてしまったことに申し訳なさそうに志村の意見を肯定した。

 ---そして現在、鬼平と対峙している炎美は彼が能力を使うのを待っていた。

 しかし予想は裏切られ鬼平は能力を使ってこない。

 (ひょっとして身体能力を強化する能力なのか?)

 炎美は使うべきかどうか判断に迷っていた。

 「オラァ!!」

 判断に悩んでいる炎美を他所に攻撃の手を緩めず木の棒を振り回す鬼平。

 (くっ、近づけないうえ能力も使えないのはかなりキツイな!)

 鬼平の攻撃を次々と回避する炎美だが相手の懐まで近づくどころか後ろに下がっていくばかりだった。

 「ちっ、スバシッケーな~! なら…」

 舌打ちをする鬼平だったが次にとった行動は…

 「オラァ!!」

 「ッ!!」

 なんと振り回していた木の棒を炎美に向かって投げつけてきた。慌てて回避しようと試みるがその瞬間、鬼平は炎美の懐に入り込もうとしていた。

 (くっ、しまった!)

 「しゃあ!!」

 炎美の前まできた鬼平は気合いの声をあげると同時に回し蹴りを入れる。

 「うおっ!」

 炎美は反射的に横に跳んだ。回し蹴りは微かに炎美の脇腹をかすめただけだったが鬼平は笑みを浮かべていた。

 「あまいな!!」

 「!?」

 回し蹴りで一回転した鬼平は走った勢いでそのまま前に進んでいたがその先にはさっき投げた木の棒がコンクリートの壁に穴を開け突き刺さっていた。

 「へっ! これは避けられるか!?」

 鬼平は突き刺さった木の棒を掴みそのままコンクリートの壁を破壊しながら横に振り回した。

 「何!?」

 思わぬ攻撃に炎美は驚きを隠せなかった。飛び散るコンクリートの破片が炎美に向かって飛んでくるだけではなかった。

 (しまった! この距離は…)

 鬼平と炎美の距離は5メートル圏内。木の棒が届く範囲内に炎美はいた。そのうえさっきの横飛びでまだ足が地面についていなかった。

 「ぐうっ!!」

 炎美は咄嗟に片腕を縦に構え防御態勢に入るが鈍い打撃音と骨の折れる音がその場に響いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

黒豚辺境伯令息の婚約者

ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。 ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。 そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。 始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め… ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。 誤字脱字お許しください。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...