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episode5「鬼人の報復」
episode5 #4「見送り」
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---炎美が駅に向かう1時間程前、炎美がちょうど本部から出て行こうとした時だった。
「ちょっと待って!!」
「ん?」
後ろから女の人の声で呼び止められ炎美は立ち止まり後ろを振り返った。振り返るとそこには柑菜と涼子の2人が立っていた。しかし涼子が両手を前に組んでいるのにも関わらず柑菜は両手を後ろに隠しモジモジと体を動かしていた。
「どうした? 2人して?」
炎美が問いかけるとどっちから話そうかと柑菜と涼子の2人はお互い目を合わせながら目配せしながら相談していた。そして少ししてから涼子の方から口を開いた。
「炎美君、今日から遠征に行くんだよね!?」
「えっ? うんそうだけど…」
(もしかしてわざわざ送りに来てくれたのか?)
「暫く会えなくなっちゃうからね。せめて2人で送ってあげようって話になって」
『暫く会えない』。遠征は依頼を解決するだけでなくまたすぐに能力者が現れても対処出来るように念の為、1週間程滞在することになっている。つまり1週間は戻って来れないのである。
そして炎美の予想通り2人は炎美を送りに来てくれたようだが相変わらず柑菜は呼び止めてから全く喋る様子もなくずっと体をモジモジと動かしているだけだった。
「?」
流石に炎美も挙動不振な柑菜に気づき首を傾げながら柑菜の方に視線を向けた。柑菜は炎美と目が合うと顔を赤らめ視線を斜め下に向けた。
(さっきから柑菜の様子が明らかにおかしいんだけどどうしたんだ?)
「……」
「……」
「……」
柑菜の事を聞こうにも気まずい雰囲気が流れ聞き出しにくくなっていた。すると見兼ねた涼子が柑菜の横腹を肘で小さく2、3回突いてきた。
「ホラ柑菜!」
「わ、分かってるわよ!」
「??」
2人でヒソヒソと話し始めだしたがそのヒソヒソ話は炎美にも聞こえていた。しかし炎美には話の内容までは理解出来なかった。
「…あ、あの…これ…」
「えっ?」
するとようやく話してくれたがやはり様子がおかしく話し方も恥ずかしそうにかつ断片的で言葉数も5文字程度しか喋らなかった。
だが炎美にはその理由がなんとなく分かってきていた。なぜなら柑菜が隠していた両手を前に出すと手には黒い風呂敷が握られていた。
「そ…その…あの…えっと…これ…弁当なんだけど…その…」
必死に言い訳を探している柑菜。よく見ると柑菜の両手はあちこちに絆創膏が貼られていた。炎美は察したかのようにスッと風呂敷を受け取った。
「ありがとう柑菜! 大事に食べるよ!」
「!!」
炎美は笑顔で柑菜に心から感謝の言葉を述べた。だか柑菜は炎美に感謝されさらに顔が赤くなっていった。すると柑菜はイキナリ後ろを振り返ると両手で顔を隠しながら全速力で走り去って行った。
「ちょっと柑菜!?」
唐突な行為に涼子は唖然として柑菜の後ろ姿を見届けていた。
「ゴメンね炎美君! 遠征頑張ってね!!」
涼子はそう言って柑菜の後を追いかけて行った。
「……」
一方的に会話を終わらせられ少しの間、立ち尽くしている炎美。
「…フッ。行ってきます!」
しかし炎美はクスッと小さく笑うと誰もいない廊下に向かって一言言って本部を後にした。
「ちょっと待って!!」
「ん?」
後ろから女の人の声で呼び止められ炎美は立ち止まり後ろを振り返った。振り返るとそこには柑菜と涼子の2人が立っていた。しかし涼子が両手を前に組んでいるのにも関わらず柑菜は両手を後ろに隠しモジモジと体を動かしていた。
「どうした? 2人して?」
炎美が問いかけるとどっちから話そうかと柑菜と涼子の2人はお互い目を合わせながら目配せしながら相談していた。そして少ししてから涼子の方から口を開いた。
「炎美君、今日から遠征に行くんだよね!?」
「えっ? うんそうだけど…」
(もしかしてわざわざ送りに来てくれたのか?)
「暫く会えなくなっちゃうからね。せめて2人で送ってあげようって話になって」
『暫く会えない』。遠征は依頼を解決するだけでなくまたすぐに能力者が現れても対処出来るように念の為、1週間程滞在することになっている。つまり1週間は戻って来れないのである。
そして炎美の予想通り2人は炎美を送りに来てくれたようだが相変わらず柑菜は呼び止めてから全く喋る様子もなくずっと体をモジモジと動かしているだけだった。
「?」
流石に炎美も挙動不振な柑菜に気づき首を傾げながら柑菜の方に視線を向けた。柑菜は炎美と目が合うと顔を赤らめ視線を斜め下に向けた。
(さっきから柑菜の様子が明らかにおかしいんだけどどうしたんだ?)
「……」
「……」
「……」
柑菜の事を聞こうにも気まずい雰囲気が流れ聞き出しにくくなっていた。すると見兼ねた涼子が柑菜の横腹を肘で小さく2、3回突いてきた。
「ホラ柑菜!」
「わ、分かってるわよ!」
「??」
2人でヒソヒソと話し始めだしたがそのヒソヒソ話は炎美にも聞こえていた。しかし炎美には話の内容までは理解出来なかった。
「…あ、あの…これ…」
「えっ?」
するとようやく話してくれたがやはり様子がおかしく話し方も恥ずかしそうにかつ断片的で言葉数も5文字程度しか喋らなかった。
だが炎美にはその理由がなんとなく分かってきていた。なぜなら柑菜が隠していた両手を前に出すと手には黒い風呂敷が握られていた。
「そ…その…あの…えっと…これ…弁当なんだけど…その…」
必死に言い訳を探している柑菜。よく見ると柑菜の両手はあちこちに絆創膏が貼られていた。炎美は察したかのようにスッと風呂敷を受け取った。
「ありがとう柑菜! 大事に食べるよ!」
「!!」
炎美は笑顔で柑菜に心から感謝の言葉を述べた。だか柑菜は炎美に感謝されさらに顔が赤くなっていった。すると柑菜はイキナリ後ろを振り返ると両手で顔を隠しながら全速力で走り去って行った。
「ちょっと柑菜!?」
唐突な行為に涼子は唖然として柑菜の後ろ姿を見届けていた。
「ゴメンね炎美君! 遠征頑張ってね!!」
涼子はそう言って柑菜の後を追いかけて行った。
「……」
一方的に会話を終わらせられ少しの間、立ち尽くしている炎美。
「…フッ。行ってきます!」
しかし炎美はクスッと小さく笑うと誰もいない廊下に向かって一言言って本部を後にした。
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