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第11章「異世界編、始まる」
第72話「シルヴィアさんからの用件」
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---「そういえば、君達にも丁度話があった所だ。後で彼女達にも伝えておいて欲しい。まあ後々分かる事ではあるが」
「??」
アリアさんが厨房に向かった後、シルヴィアさんは思い出したかのように話題を変えてきた。なんの話なのかさっぱりわからん。
「近々国王からの招集が掛かる筈だ。まあその時には国王から招集状が届くと思うが、一応、その事を頭に入れて置いて欲しくてな」
「は、はあ」
話というのはどうやら国王からの招集があるとのことだ。なにかあるのだろうか?
「恐らく魔王軍の討伐に向けての招集だろう。魔王軍討伐は君達にも無関係な話では無いだろ?」
「ッ!?」
それを悟っていたかのようにシルヴィアさんが答えてくれた。すっかり忘れそうになっていたが、有紗が魔王討伐の報酬として元の世界に帰らせてもらうという契約を国王達と結んでいたんだった。当の本人はゴブリンに夢中で覚えているのかわからんが。
「魔王軍の討伐なんて、随分と急な話ですね」
しかし、随分と急な話に俺は少々疑問を抱いていた。俺達がこの世界に来てまだ1ヶ月ぐらいしか経っていないにも関わらず、「魔王を倒しに行くぞ!」と言われても正直不安でしかない。なにせ相手は一国の軍隊でも苦戦するレベルなのだから。今の俺達が加わっても大した戦力になるとは思えない。そう考えると事を急かす理由が俺にはわからなかった。
「なんでも、今この国にかなり腕の立つ冒険者が来ていると耳にしてな。その者達が他国に行ってしまう前に協力を仰いで出来る限り敵の戦力を削って置きたいというお考えらしい」
「敵の戦力を削るだけですか? それだけ強い人なら魔王の討伐もその人にお願いした方がいいんじゃ…」
シルヴィアさんの答えに多少納得したが、話を聞いていてさらに疑問が浮上した。魔王軍を倒しに行くなら勢いで魔王の討伐もその腕の立つ冒険者に頼めばいいはずなのだが、シルヴィアさんの言いかただと、『魔王はまだ倒さなくてもなくていい』という風に聞こえてくる。俺の考えすぎなのかもしれないが。
「魔王の討伐は君達が受けた依頼だ。今回の目的はあくまで敵の戦力を削る事。向こうの兵も決して有象無象に湧いて来る訳では無い筈だ。少しずつでも兵を減らし続け、最後に君達の力で魔王を討つ! 魔王を討てば私達の国に安寧が齎され、君達は自分達の居た世界に帰れる。正しく一石二鳥というやつでは無いか」
「そ、それはそうですけど…」
どうやらシルヴィアさんは俺達に魔王討伐を任せるようだ。依頼を受けたとはいえ、シルヴィアさん達でも魔王の手下に手こずったと聞いているのにそれを統率している輩を俺達が倒すなんてほぼほぼ無謀に近い行為だと思う。
理由は無論、俺達のレベルにある。ステータス値の高いやつが2人いるが、やはりレベル差が大き過ぎるとその意味もなくなってくる。
転移ゲートが完成するまで約1年の間に魔王倒せるぐらいまで強くなるのは現実的に不可能に近い。いや、絶対不可能だ。
「言いたい事は分かっている。勿論強制つもりは無い。ただ、彼女はそのつもりで言ったのだろうと思ってな」
「……」
シルヴィアさんも俺の気持ちを理解してくれていたようだが、この作戦は有紗のことも考慮された上での作戦だったらしい。たしかに有紗なら自分の手で依頼をこなさないと気が済まなさそう。いわゆる完璧主義者というやつだ。まああそこまで大見えきってしまった以上、引くに引けなくなったというのもあながちあるかもしれない。
「まあその話は後で彼女達と話し合って考えるといい。とりあえず国王から招集が掛けられるかも知れないという事だけは伝えて置きたくてな。それじゃあ私はこれで失礼する」
「あっ、はい! ありがとうございました!!」
シルヴィアさんは用件を伝え終えると、背を向け軽く手を振ってエルブを後にした。俺はぺこぺこ何度も頭を下げながらシルヴィアさんを見送った。
「??」
アリアさんが厨房に向かった後、シルヴィアさんは思い出したかのように話題を変えてきた。なんの話なのかさっぱりわからん。
「近々国王からの招集が掛かる筈だ。まあその時には国王から招集状が届くと思うが、一応、その事を頭に入れて置いて欲しくてな」
「は、はあ」
話というのはどうやら国王からの招集があるとのことだ。なにかあるのだろうか?
「恐らく魔王軍の討伐に向けての招集だろう。魔王軍討伐は君達にも無関係な話では無いだろ?」
「ッ!?」
それを悟っていたかのようにシルヴィアさんが答えてくれた。すっかり忘れそうになっていたが、有紗が魔王討伐の報酬として元の世界に帰らせてもらうという契約を国王達と結んでいたんだった。当の本人はゴブリンに夢中で覚えているのかわからんが。
「魔王軍の討伐なんて、随分と急な話ですね」
しかし、随分と急な話に俺は少々疑問を抱いていた。俺達がこの世界に来てまだ1ヶ月ぐらいしか経っていないにも関わらず、「魔王を倒しに行くぞ!」と言われても正直不安でしかない。なにせ相手は一国の軍隊でも苦戦するレベルなのだから。今の俺達が加わっても大した戦力になるとは思えない。そう考えると事を急かす理由が俺にはわからなかった。
「なんでも、今この国にかなり腕の立つ冒険者が来ていると耳にしてな。その者達が他国に行ってしまう前に協力を仰いで出来る限り敵の戦力を削って置きたいというお考えらしい」
「敵の戦力を削るだけですか? それだけ強い人なら魔王の討伐もその人にお願いした方がいいんじゃ…」
シルヴィアさんの答えに多少納得したが、話を聞いていてさらに疑問が浮上した。魔王軍を倒しに行くなら勢いで魔王の討伐もその腕の立つ冒険者に頼めばいいはずなのだが、シルヴィアさんの言いかただと、『魔王はまだ倒さなくてもなくていい』という風に聞こえてくる。俺の考えすぎなのかもしれないが。
「魔王の討伐は君達が受けた依頼だ。今回の目的はあくまで敵の戦力を削る事。向こうの兵も決して有象無象に湧いて来る訳では無い筈だ。少しずつでも兵を減らし続け、最後に君達の力で魔王を討つ! 魔王を討てば私達の国に安寧が齎され、君達は自分達の居た世界に帰れる。正しく一石二鳥というやつでは無いか」
「そ、それはそうですけど…」
どうやらシルヴィアさんは俺達に魔王討伐を任せるようだ。依頼を受けたとはいえ、シルヴィアさん達でも魔王の手下に手こずったと聞いているのにそれを統率している輩を俺達が倒すなんてほぼほぼ無謀に近い行為だと思う。
理由は無論、俺達のレベルにある。ステータス値の高いやつが2人いるが、やはりレベル差が大き過ぎるとその意味もなくなってくる。
転移ゲートが完成するまで約1年の間に魔王倒せるぐらいまで強くなるのは現実的に不可能に近い。いや、絶対不可能だ。
「言いたい事は分かっている。勿論強制つもりは無い。ただ、彼女はそのつもりで言ったのだろうと思ってな」
「……」
シルヴィアさんも俺の気持ちを理解してくれていたようだが、この作戦は有紗のことも考慮された上での作戦だったらしい。たしかに有紗なら自分の手で依頼をこなさないと気が済まなさそう。いわゆる完璧主義者というやつだ。まああそこまで大見えきってしまった以上、引くに引けなくなったというのもあながちあるかもしれない。
「まあその話は後で彼女達と話し合って考えるといい。とりあえず国王から招集が掛けられるかも知れないという事だけは伝えて置きたくてな。それじゃあ私はこれで失礼する」
「あっ、はい! ありがとうございました!!」
シルヴィアさんは用件を伝え終えると、背を向け軽く手を振ってエルブを後にした。俺はぺこぺこ何度も頭を下げながらシルヴィアさんを見送った。
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