433 / 445
第11章「異世界編、始まる」
第63話「痕跡」
しおりを挟む
---「洞穴がある場所ってここら辺かな?」
「そうですね。足跡もこの付近にありましたし」
村を出た俺達は依頼主が言っていた洞穴の付近まできていた。
付近を調べてみるとゴブリンの足跡は所々ではあるがいくつか見受けられる。ここら辺を歩いていたのはたしかだな。
「なあ有紗」
「なに?」
洞穴を探しながら俺は有紗に話しかけた。有紗はこっちを振り向かずに返事だけ返した。
「あんなこと言っといてよかったのか?」
俺はさっきの有紗の発言がいまだに不安だった。大見栄きっといて助けられなかったじゃシャレにならないぞ。
「不安に押し潰されて自殺紛いなことされるよりマシでしょ?」
「それはそうかもしれないけど…」
「それに必ず助けるわよ。だから今はアイツらの寝所突き止めることに集中しなさいよね」
「…わかった」
しかし、有紗も有紗なりに考えがあっての発言だったようだ。たしかにあのときの女性は精神的にけっこうヤバそうでなにをやらかすかわからない。
あれだけ期待された以上、娘さんを無事連れ帰らないといけない。とにかく早くゴブリン達の居所を見つけるために俺は有紗に言われた通り集中して他に痕跡がないか辺りを探すことにした。
「みなさん、あそこ!?」
「ん?」
痕跡を探して少ししてみのりがみんなに声をかけた。なにか見つけたのか?
「っ?! ア、アレってもしかして…」
みのりが指を指す方を見ると、少し離れた道沿いに茶色い大きな物体が倒れていた。俺達は急いでその物体を確認しにいった。
「っ!!?? ひ、ひどい」
茶色い物体の近くまで来ると、その物体の正体がはっきりと判明した。
茶色い物体の正体は馬だったのだが、無残な姿で横たわっているのを見て、梓が思わず悲痛の声を漏らした。
身体のあちこちに槍のようなものでめった刺しにされており、大量出血していてかなりエグい姿になっていた。地面には血溜まりもできている。すでに息もしていないし、完全に死んでしまったようだ。
「どうやら帰りの道中に襲われたらしいわね」
「えっ?」
俺達が馬の死体を呆然と見つめている中、有紗は馬の死体を近くで観察しながらぼそりとなにか呟いた。
「向こうに血の跡が残ってる。襲われてここまで逃げてきたんでしょうね。ここまでは一本道だし、私達が来た方角には血の跡はなかったから間違いないわね。ほら、血の跡が向こう側に続いてるわ」
有紗は俺達が理由を聞く前に説明してくれた。たしかに向こう側から血の跡がここまで点々と続いている。
刺されたあと、逃走を図ったものの出血量が多くてここで息絶えてしまったのだろう。想像するととても歯がゆい。
「それとここら辺に散らばってるのはきっと魔道具ね。さっきの村には売ってなかったし、隣の村で買ってきたやつだと思う」
さらに有紗は話を続けていた。なんか久しぶりに名探偵アリサの推理が始まったな。
馬の死体の近くには割れた小瓶や血溜まりで赤く染色した紙などが散乱していた。馬が息絶え倒れた際にぶちまけたのか。
「死体はわずかだけどまだあったかいわね」
「っていうことは…」
「死んだのは私達が来る少し前」
「ついさっきまで生きていたってことですね」
「じゃあ馬に乗ってた人は…」
「まだ近くにいるかもしれないわね」
「!?」
有紗の発言で一気に俺達の緊張感が高まった。馬に乗っていた、おそらくあの女性の娘さんがまだこの近くにいるかもしれない。そう考えると、どこかになにかしらの痕跡がまだ残ってる可能性がある。
「みんな、もう一度手分けして…」
「きゃあぁぁぁぁ!!??」
「ッ!!??」
もう一度近くを捜索しようとしたそのとき、道脇の木々の奥から女性の悲鳴が聞こえた。
「向こうからだわ。急ぐわよ!」
女性の悲鳴が聞こえた瞬間、有紗が悲鳴が聞こえた方角を指差し、その方向に走って行った。そのあとを追いかけるように俺達も続いて行くのだった。
「そうですね。足跡もこの付近にありましたし」
村を出た俺達は依頼主が言っていた洞穴の付近まできていた。
付近を調べてみるとゴブリンの足跡は所々ではあるがいくつか見受けられる。ここら辺を歩いていたのはたしかだな。
「なあ有紗」
「なに?」
洞穴を探しながら俺は有紗に話しかけた。有紗はこっちを振り向かずに返事だけ返した。
「あんなこと言っといてよかったのか?」
俺はさっきの有紗の発言がいまだに不安だった。大見栄きっといて助けられなかったじゃシャレにならないぞ。
「不安に押し潰されて自殺紛いなことされるよりマシでしょ?」
「それはそうかもしれないけど…」
「それに必ず助けるわよ。だから今はアイツらの寝所突き止めることに集中しなさいよね」
「…わかった」
しかし、有紗も有紗なりに考えがあっての発言だったようだ。たしかにあのときの女性は精神的にけっこうヤバそうでなにをやらかすかわからない。
あれだけ期待された以上、娘さんを無事連れ帰らないといけない。とにかく早くゴブリン達の居所を見つけるために俺は有紗に言われた通り集中して他に痕跡がないか辺りを探すことにした。
「みなさん、あそこ!?」
「ん?」
痕跡を探して少ししてみのりがみんなに声をかけた。なにか見つけたのか?
「っ?! ア、アレってもしかして…」
みのりが指を指す方を見ると、少し離れた道沿いに茶色い大きな物体が倒れていた。俺達は急いでその物体を確認しにいった。
「っ!!?? ひ、ひどい」
茶色い物体の近くまで来ると、その物体の正体がはっきりと判明した。
茶色い物体の正体は馬だったのだが、無残な姿で横たわっているのを見て、梓が思わず悲痛の声を漏らした。
身体のあちこちに槍のようなものでめった刺しにされており、大量出血していてかなりエグい姿になっていた。地面には血溜まりもできている。すでに息もしていないし、完全に死んでしまったようだ。
「どうやら帰りの道中に襲われたらしいわね」
「えっ?」
俺達が馬の死体を呆然と見つめている中、有紗は馬の死体を近くで観察しながらぼそりとなにか呟いた。
「向こうに血の跡が残ってる。襲われてここまで逃げてきたんでしょうね。ここまでは一本道だし、私達が来た方角には血の跡はなかったから間違いないわね。ほら、血の跡が向こう側に続いてるわ」
有紗は俺達が理由を聞く前に説明してくれた。たしかに向こう側から血の跡がここまで点々と続いている。
刺されたあと、逃走を図ったものの出血量が多くてここで息絶えてしまったのだろう。想像するととても歯がゆい。
「それとここら辺に散らばってるのはきっと魔道具ね。さっきの村には売ってなかったし、隣の村で買ってきたやつだと思う」
さらに有紗は話を続けていた。なんか久しぶりに名探偵アリサの推理が始まったな。
馬の死体の近くには割れた小瓶や血溜まりで赤く染色した紙などが散乱していた。馬が息絶え倒れた際にぶちまけたのか。
「死体はわずかだけどまだあったかいわね」
「っていうことは…」
「死んだのは私達が来る少し前」
「ついさっきまで生きていたってことですね」
「じゃあ馬に乗ってた人は…」
「まだ近くにいるかもしれないわね」
「!?」
有紗の発言で一気に俺達の緊張感が高まった。馬に乗っていた、おそらくあの女性の娘さんがまだこの近くにいるかもしれない。そう考えると、どこかになにかしらの痕跡がまだ残ってる可能性がある。
「みんな、もう一度手分けして…」
「きゃあぁぁぁぁ!!??」
「ッ!!??」
もう一度近くを捜索しようとしたそのとき、道脇の木々の奥から女性の悲鳴が聞こえた。
「向こうからだわ。急ぐわよ!」
女性の悲鳴が聞こえた瞬間、有紗が悲鳴が聞こえた方角を指差し、その方向に走って行った。そのあとを追いかけるように俺達も続いて行くのだった。
0
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説
プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜
三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。
父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です
*進行速度遅めですがご了承ください
*この作品はカクヨムでも投稿しております
居候高校生、主夫になる。〜娘3人は最強番長でした〜
蓮田ユーマ
青春
父親が起こした会社での致命的なミスにより、責任と借金を負い、もう育てていくことが出来ないと告白された。
宮下楓太は父親の友人の八月朔日真奈美の家に居候することに。
八月朔日家には地元でも有名らしい3人の美人姉妹がいた……だが、有名な理由は想像とはまったく違うものだった。
愛花、アキラ、叶。
3人は、それぞれが通う学校で番長として君臨している、ヤンキー娘たちだった。
※小説家になろうに投稿していて、アルファポリス様でも投稿することにしました。
小説家になろうにてジャンル別日間6位、週間9位を頂きました。
優等生の美少女に弱みを握られた最恐ヤンキーが生徒会にカチコミ決めるんでそこんとこ夜露死苦ぅ!!
M・K
青春
久我山颯空。十六歳。
市販の安いブリーチで染め上げた片側ツーブロックの髪型。これ見よがしに耳につけられた銀のピアス。腰まで下ろしたズボン、踵が潰れた上履き。誰もが認めるヤンキー男。
学力は下の下。喧嘩の強さは上の上。目つきも態度も立ち振る舞いまでもが悪い彼が通うのは、言わずと知れた名門・清新学園高等学校。
品行方正、博学卓識な者達ばかりが集まる学校には似つかわしくない存在。それは自他ともに持っている共通認識だった。
ならば、彼はなぜこの学校を選んだのか? それには理由……いや、秘密があった。
渚美琴。十六歳。
颯空と同じ清新学園に通い、クラスまでもが一緒の少女。ただ、その在り方は真逆のものだった。
成績はトップクラス。超が付くほどの美少女。その上、生徒会にまで所属しているという絵にかいたような優等生。
彼女の目標は清新学園の生徒会長になる事。そのため"取り締まり"という名の点数稼ぎに日々勤しんでいた。
交わる事などありえなかった陰と陽の二人。
ひょんな事から、美琴が颯空の秘密を知ってしまった時、物語が動き出す。
魔法少女の敵なんだが魔法少女に好意を寄せられて困ってる
ブロッコリークイーン
青春
この世界では人間とデスゴーンという人間を苦しめることが快楽の悪の怪人が存在している。
そのデスゴーンを倒すために魔法少女が誕生した。
主人公は人間とデスゴーンのハーフである。
そのため主人公は人間のフリをして魔法少女がいる学校に行き、同じクラスになり、学校生活から追い詰めていく。
はずがなぜか魔法少女たちの好感度が上がってしまって、そしていつしか好意を寄せられ……
みたいな物語です。
ペア
koikoiSS
青春
中学生の桜庭瞬(さくらばしゅん)は所属する強豪サッカー部でエースとして活躍していた。
しかし中学最後の大会で「負けたら終わり」というプレッシャーに圧し潰され、チャンスをことごとく外してしまいチームも敗北。チームメイトからは「お前のせいで負けた」と言われ、その試合がトラウマとなり高校でサッカーを続けることを断念した。
高校入学式の日の朝、瞬は目覚まし時計の電池切れという災難で寝坊してしまい学校まで全力疾走することになる。すると同じく遅刻をしかけて走ってきた瀬尾春人(せおはると)(ハル)と遭遇し、学校まで競争する羽目に。その出来事がきっかけでハルとはすぐに仲よくなり、ハルの誘いもあって瞬はテニス部へ入部することになる。そんなハルは練習初日に、「なにがなんでも全国大会へ行きます」と監督の前で豪語する。というのもハルにはある〝約束〟があった。
友との絆、好きなことへ注ぐ情熱、甘酸っぱい恋。青春の全てが詰まった高校3年間が、今、始まる。
※他サイトでも掲載しております。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる