432 / 445
第11章「異世界編、始まる」
第62話「緊急事態」
しおりを挟む
---「なるほど。これがゴブリンの足跡ですか」
「はい。数からして4、5体はこの村の近くに来ていたようです」
ゴブリンのクエストを受けた俺達は依頼主がいる村に来ていた。幸いなことにまだ村は襲われてはいないようだ。
とりあえず依頼主の男性と会い、改めて詳細を聞いたあと、ゴブリンの足跡を見た場所に案内された。
依頼主は足跡がある箇所に指を指した。指を指された方を見ると、村の外の道に小さい跡がいくつか残っていた。
一瞬、鶏の足跡かと思ったが、それにしては大きすぎるし、爪のところもどこか若干歪で普通の生き物の足跡ではなさそうだった。
「あの、ゴブリンを直接見たっていう人はいますか?」
「いえ、多分居ないと思います」
「見張りとかは付けてないんですか?」
「付けてないですね。なにぶん小さな村ですから人手が足りないものでして。一応、モンスター避けの花は植えてますし、村の塀は定期的に補強したり火は絶えないように火の魔道具を使ったり、村の防衛はしっかりしていると思いますが」
「そうですか」
足跡を確認したあと、俺は村の人といくつか質疑応答をした。
ゴブリン達の姿を見た人がいればどこからゴブリン達が往来したのか聞けたのだが、どうやらこの村には見張り番はいないようだ。まあ前にウルフ討伐で行った村よりかは防衛はしっかりしてそうだし問題ないのだろう。
しかし、安全なのは村の中だけで村の外に出るとなると話は別だ。だからギルドに討伐依頼を頼んだのだろう。
「あの、冒険者の方々ですか?!」
「えっ? は、はい。そうですけど?」
とりあえずゴブリン達の足跡を追おうとしたとき、1人のふくよかな女性が俺達に駆け寄ってきた。随分と慌てている様子だが、なにかあったのだろうか?
「じ、実は私の娘が隣村に行ったっきり帰って来なくて…」
「な、なんだって?!」
女性が事情を説明すると、依頼主が驚愕していた。帰って来なくて心配する気持ちはわからなくもないが、なぜわざわざ俺達にそのことを話しに来たのかがわからんな。
「隣村に行く道中、洞穴があるんですよ。ゴブリンは洞穴のような暗くて狭い場所を好んで住処にすると聞いた事があります。もしかしたら…」
「!?」
しかし、依頼主が補足したおかげでようやく理解できた。隣村に行く道中、その娘さんが万が一ゴブリンに襲われていたとしたら大変な事態だ。
「今朝、隣村に生活用品用の魔道具を買い足しに行くと言ったんです。私は何度か忠告したんですが、すぐ帰るから大丈夫だと言って言う事を聞かずに出て行ってしまって。馬に乗っていたのでそんなに掛からない筈ですから余計に不安で…」
「……」
女性は涙声になりながら経緯を話してくれたが、そんな女性になんと言えばいいのかわからず黙ってしまった。
「大丈夫ですよ! 必ず娘さんは助けますから!!」なんて軽々しいことは言えなかった。助けられなかった場合、その発言が裏目に出てしまうかもしれないからだ。
「大丈夫よ」
「…有、紗?」
だがしかし、俺が言えなかったセリフを有紗が口に出した。
「アンタの娘は必ず助けるわ。だから安心して」
「ほ、ほんとう、ですか?」
その言葉を聞いて涙を流しながらすがるように有紗にじわりと歩み寄ってくる女性の問いかけに有紗は首を短く縦に振った。
「ど、どうか娘を、お願い、します」
「ええ。任せて」
女性は有紗の手を握ると懇願するように頭を下げた。
---こうして俺達は女性の依頼も引き受けるかたちでゴブリンがいるらしき洞穴へと向かうことにした。
「はい。数からして4、5体はこの村の近くに来ていたようです」
ゴブリンのクエストを受けた俺達は依頼主がいる村に来ていた。幸いなことにまだ村は襲われてはいないようだ。
とりあえず依頼主の男性と会い、改めて詳細を聞いたあと、ゴブリンの足跡を見た場所に案内された。
依頼主は足跡がある箇所に指を指した。指を指された方を見ると、村の外の道に小さい跡がいくつか残っていた。
一瞬、鶏の足跡かと思ったが、それにしては大きすぎるし、爪のところもどこか若干歪で普通の生き物の足跡ではなさそうだった。
「あの、ゴブリンを直接見たっていう人はいますか?」
「いえ、多分居ないと思います」
「見張りとかは付けてないんですか?」
「付けてないですね。なにぶん小さな村ですから人手が足りないものでして。一応、モンスター避けの花は植えてますし、村の塀は定期的に補強したり火は絶えないように火の魔道具を使ったり、村の防衛はしっかりしていると思いますが」
「そうですか」
足跡を確認したあと、俺は村の人といくつか質疑応答をした。
ゴブリン達の姿を見た人がいればどこからゴブリン達が往来したのか聞けたのだが、どうやらこの村には見張り番はいないようだ。まあ前にウルフ討伐で行った村よりかは防衛はしっかりしてそうだし問題ないのだろう。
しかし、安全なのは村の中だけで村の外に出るとなると話は別だ。だからギルドに討伐依頼を頼んだのだろう。
「あの、冒険者の方々ですか?!」
「えっ? は、はい。そうですけど?」
とりあえずゴブリン達の足跡を追おうとしたとき、1人のふくよかな女性が俺達に駆け寄ってきた。随分と慌てている様子だが、なにかあったのだろうか?
「じ、実は私の娘が隣村に行ったっきり帰って来なくて…」
「な、なんだって?!」
女性が事情を説明すると、依頼主が驚愕していた。帰って来なくて心配する気持ちはわからなくもないが、なぜわざわざ俺達にそのことを話しに来たのかがわからんな。
「隣村に行く道中、洞穴があるんですよ。ゴブリンは洞穴のような暗くて狭い場所を好んで住処にすると聞いた事があります。もしかしたら…」
「!?」
しかし、依頼主が補足したおかげでようやく理解できた。隣村に行く道中、その娘さんが万が一ゴブリンに襲われていたとしたら大変な事態だ。
「今朝、隣村に生活用品用の魔道具を買い足しに行くと言ったんです。私は何度か忠告したんですが、すぐ帰るから大丈夫だと言って言う事を聞かずに出て行ってしまって。馬に乗っていたのでそんなに掛からない筈ですから余計に不安で…」
「……」
女性は涙声になりながら経緯を話してくれたが、そんな女性になんと言えばいいのかわからず黙ってしまった。
「大丈夫ですよ! 必ず娘さんは助けますから!!」なんて軽々しいことは言えなかった。助けられなかった場合、その発言が裏目に出てしまうかもしれないからだ。
「大丈夫よ」
「…有、紗?」
だがしかし、俺が言えなかったセリフを有紗が口に出した。
「アンタの娘は必ず助けるわ。だから安心して」
「ほ、ほんとう、ですか?」
その言葉を聞いて涙を流しながらすがるように有紗にじわりと歩み寄ってくる女性の問いかけに有紗は首を短く縦に振った。
「ど、どうか娘を、お願い、します」
「ええ。任せて」
女性は有紗の手を握ると懇願するように頭を下げた。
---こうして俺達は女性の依頼も引き受けるかたちでゴブリンがいるらしき洞穴へと向かうことにした。
0
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)
@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」
このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。
「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。
男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。
「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。
青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。
ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。
「カクヨム」さんが先行投稿になります。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる