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第11章「異世界編、始まる」

第44話「逃走」

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 「くっ!?」

 「ウルアァァァ!!」

 有紗に向かって突っ込んでくるベオウルフマンに有紗は銃で応戦した。

 しかし、それをもろともせず突っ込んでいくベオウルフマン。

 「はあぁっ!!」

 「ッ!?」

 そのとき、みのりはベオウルフマンの側頭部にラ◯ダーキックをお見舞いした。

 そうか。ほぼほぼ忘れていたが、みのりは吸血鬼のハーフだった。ステータスではなぜか有紗に若干劣っているものの身体能力は高い方だし、なにより翼があるから空を飛べる。

 「グヴゥゥゥ」

 みのりに不意を突かれたベオウルフマンはふらふらとよろけた。

 「ウアァァァ!!」

 なんとか体勢を立て直したベオウルフマンはこんどはみのりを標的にした。

 「はっ!」

 ベオウルフマンはみのりを捕まえようとするが、みのりはそれを空中でひらりと回避し距離を取った。

 「グルルルルル」

 そんなみのりに露骨に苛立ちを見せるベオウルフマン。今のはけっこう頭にキタようだ。

 「私はまだ戦えます! だから、今のうちに逃げてください!」

 みのりは俺達に向かって逃げるように促した。たしかに疲弊しきった有紗よりかはまだ戦力にはなる。ここはみのりに時間を稼いでもらって、その間に有紗達を逃した方がよさそうだ。

 「有紗、行くぞ!?」

 「なっ?! ちょっと?!」

 俺はとりあえず有紗を逃がすために半ば強引に背負って逃げることにした。

 「梓、行くぞ!?」

 「う、うん!」

 有紗を背負った俺は梓にも促しながら走り出した。

 とにかく逃げることしか考えておらず、来た道かどうかもわからない獣道をひたすら走り続けた。

 「ウルアァァァ!」

 無論、ベオウルフマンは逃げる俺達を追いかけてくる。足の速さは向こうの方が圧倒的に速いし、後ろから迫って来るような足音がめちゃくちゃ怖い。

 「はあっ!!」

 しかし、空からみのりが良いタイミングでちょっかいを出してくるおかげで距離を詰められてもすぐに離せた。

 「ウガアァッ!!」

 それに対してベオウルフマンはちょっかいを出してくる度にみのりを捕まえようとするが、中々捕まえられない上に獲物との距離が一向に詰められないからさらに苛立っていた。

 とにかく俺達の目標はこの森から抜けることだ。それからどうするかはまだ考えていないが、とりあえず人気のある場所まで行ければ他の冒険者が助けてくれるはずだ。

 あのモンスターの体力もそこそこ減っているだろうし、他の冒険者と協力できれば倒せるかもしれない。

 そんなわずかな望みに賭け、俺達はひたすら走り続けた。
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