俺の高校生活に平和な日常を

慶名 安

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第8章番外編「私の罪」

第16話「後日」

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 ---「いやー、ごめんね綴さん。心配かけちゃってー」

 しかし、後日、病室にいた彩香はいつものように笑顔で私に話しかけてきた。

 どうやらあの後、他の人が倒れている彩香を発見し、119番通報しされた後、救急車で近くの病院まで搬送されたそうだ。命に別状はなかったらしい。

 ただ、その日の出来事を全て忘れてしまったらしい。強く頭を打ち付けてしまったようだ。

 思い返せば転がり落ちたときに何度か頭を打っていたような気がする。

 その話を学校の先生から聞いた私は意を決して彩香のところに行くことにしたのだ。

 ひょっとしたら私に会ったら記憶が元に戻るんじゃないかという恐怖もあったが、行かないと逆に怪しまれるかもしれないとも思い、仕方なくお見舞いに行くことにしたのだ。

 ちなみに司は連れては行かなかった。私はともかく司まで連れて行ったら余計に思い出してしまうかもしれないと思ったからだ。そもそも、彩香があそこまでおかしくなったのは司が原因でもあるしね。

 「それにしても私ってば、なんで雨の日買い物なんか行っちゃたのかなぁ? しかも傘も持ってなかったみたいだし。天気予報見てなかったのかなあ?」

 「……」

 しかし、彩香は私と会っても取り乱したり、罵詈雑言を浴びせたりするようなことは一切なかった。私に気を遣ってる様子も見えないし、いつも通りの私の知っている彩香だった。

 どうやら本当にあのときのことを覚えていないらしい。こういうときはよかったというべきなのだろうか?

 「そんでさー、警察の人の話だと私、滑って河川敷の下の方まで転がり落ちてったらしいの!? まああくまでも警察の予想みたいなんだけど、それにしてもほんっと私ってバカだよねー! へへへ」

 そんな彩香は笑いながら警察から聞いた話をしてきた。どうやら警察の方も私がしたとは疑ってないようだ。

 「…身体の方は大丈夫なの?」

 色々聞きたいことがあったが、それで思い出す可能性もあったため、あえて別のことを聞いてみることにした。

 「身体? んー、まだ頭がクラクラするぐらいかな? いちおうお医者さんから『しばらく安静にして様子を見ましょう』って言われて、退院するのはまだ数日ぐらいかかりそうなんだよねー」

 「そう…なんだ」

 すると、彩香はお医者さんのモノマネを入れつつ私の問いかけに答えてくれた。私は密かに冷汗を掻きながらも適当に相槌をうった。

 ---それからしばらく、彩香の様子を慎重に伺いながらも2人っきりで話をするのだった。
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