俺の高校生活に平和な日常を

慶名 安

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第7章「夏休みが終わらない」

第22話「悪者扱いすんじゃねーよ!」

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 「…ハア…ハア…」

 「…ッ!?」

 「お二人とも、随分お疲れになっているようですね。どうしましたイーリスさん? 反撃はなさらないんですか?」

 俺とイーリスちゃんが呼吸を整えようとする中、ルイスさんは涼しそうな顔をしていた。さっきから防戦一方の状態だしな。

 けれどたしかにルイスさんの言う通り、イーリスちゃんは1度も反撃しなかった。イーリスちゃんなら強力な魔法をたくさん使えるはずなのにも関わらず、イーリスちゃんは攻撃を避けてばかりいる。まさかまたなにか予期せぬ事態が起こってしまっているのだろうか?

 「偽善、ですか?」

 「…えっ?」

 「……」

 そんなことを考えていると、ルイスさんが意味深な一言を放った。一体、何を言ってるんだ?

 「あなたは今、彼を守ることばかり考えている。先程からずっと彼のことばかり見ているのに私が気づかないと思いましたか?」

 「なに?!」

 「……」

 するとルイスさんからさらに衝撃の発言が飛び出てきた。イーリスちゃんが俺を守ってる? 最初はただの思い過ごしなのではないかと思ったが、さっきまでのことを思い返せば、俺が斬撃をかわすタイミングを間違えると必ずイーリスちゃんがかばいにきてくれていたような気がする。まあその度にバカだのトロいだのそれ以上の暴言を吐かれたけどな。

 それでもイーリスちゃんは俺を守ってくれていたのだ。だから反撃ができなかった。俺が足手まといになっているばっかりにイーリスちゃんに余計な負担をかけてしまっていた。

 「だがあなたのしていることはただの偽善だ。私を倒すことより彼を守ることを選んだ。それは彼女を殺したことに対する罪滅ぼしのつもりですか?」

 「…私は…」

 しかしルイスさんはそれを偽善だと言ってきた。それに対しイーリスちゃんは反論しようとしたが、言葉に詰まっていた。

 「やはり親も親なら子も子ですか。あなたの母親、アイリス・ヴァンドレッドもあなたと同じように魔女を殺し、その後は人助けをするようになった。あなたと同じように魔女を殺してしまったことに対する罪滅ぼしでもしたかったんですかね? 私には理解できませんよ。なら最初から殺さなければよかったのに」

 「…ッ!?」

 そしてルイスさんがさらに追い討ちをかけていく。まるでイーリスちゃんが悪者のようだ。するとイーリスちゃんは詰まっていた言葉を引っ込めなにも反論しなくなった。

 「……」

 そんなイーリスちゃんの頰に一筋の涙が流れ落ちたのを俺は見ていた。

 「…ふざけんなよ」

 「? はい?」

 それを見た俺は無性に腹が立った。イーリスちゃんになにがあったのかは知らない。反論しないっていうことはきっと事実なのだろう。イーリスちゃんは同じ魔女っ子を殺してしまったのかもしれない。

 だけど、俺を助けてくれたことが偽善だって? 罪滅ぼしのためだって?

 「そんなわけねーだろ!」

 「…あんた…」

 この前の愛咲祭の時だって、皆んなを安全な場所まで移動させていた。その前だって敵対関係にあったはずの梓を助けてくれた。それも全部偽善行為だっていうのかよ!?

 俺は知ってる。イーリスちゃんは本当はとてもいい子なんだって! 偽善者ないんだって!

 それなのに知った風な口をたたきイーリスちゃんを悪者扱いするルイスさんに俺は一言言い返したかった。

 「あんたなんかがイーリスちゃんを、悪者扱いすんじゃねーよ!」
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