俺の高校生活に平和な日常を

慶名 安

文字の大きさ
上 下
148 / 445
第4章番外編「私の守りたいもの」

第16話「裁きの決断を」

しおりを挟む
 「…なんだよ…あの魔法は…?」

 ミシェーラは私の後ろのものを見て驚愕している。私には後ろに何があるのか見なくても分かっている。それは私の頭の中でイメージ出来ているから。

 白い翼を生やした全長10メートル以上ある女神のような女性が何かに祈りを捧げるようなポーズで出現している。

 最高神・アフラ。家の書庫にあったアフラの神話を見たことがある。善神・スプンタと悪神・アンラとの両者を裁ける立場であったと言われている。あの時のイメージは髭面のおじいさんかと思っていたが、まさか若い女が出てくるとは。

 「……」

 さっきまで怒声を放っていたミシェーラもあまりの神々しさに黙然と見とれてしまっている。

 「さあアフラよ。そこにいる者に聖なる裁きを」

 「!?」

 私がそう言うと今度は我に返り焦り始めるミシェーラ。

 「オイ! こんな事してタダで済むと思ってんのか?! 私をヤればママ達も黙ってねーぞ!?」

 「そう」

 ミシェーラが必死に脅してくるが私は素っ気なく返した。けれど、アイツの言っている事はあながち嘘ではないのかもしれない。

 魔女達は同族意識が高く他の魔女が倒されるとあらゆる手を使って復讐するのだそうだ。おそらくその事とミシェーラが言っていたママが同族殺しと言われている話が繋がっているのかもしれない。

 だが今の私にはそんなの関係ない。私はただこの場所を守りたいだけ。誰が来ようとこの場所を奪おうとするなら容赦はしない。たとえアイツを殺して魔女達を敵に回したとしても。

 「ハッ、親も親なら子も子ってか? 親子揃ってバカな奴等だな!? ハハハッ!!」

 そう言ってミシェーラは吹っ切れたように笑い出した。憎たらしい笑みだが今の状況を見ると腹ただしいというよりも哀れな気持ちになる。

 「なあイーリス? 分かってんだろう?魔女を敵に回すとどうなるか。お前ならよーく分かってるよな? ならどうするか、分かってんだろ?」

 そして畳み掛けるように脅しをかけるミシェーラ。アイツも必死のようだが、確かにこのままアイツを殺せば少なくとも魔女達を敵に回す事にはなるだろう。

 少しの間、私の頭の中で色々な事を考えさせられた。もし他の魔女がこの場所を奪いに来たら? もし私を殺しに来たら?

 さっきまで敵に回す事を恐れてはいなかったが、考えれば考える程、現状の厳しさを思い知らされる。高い魔力を持つ魔女の実力は生半可な私の実力とでは圧倒的な差がある。

 「ほらイーリス、私を解放しろよ。今回は特別に見逃してやってもいいんだぜ?」

 「……」

 ミシェーラのその一言は天使の囁きのように聞こえた。そしてその一言で私の判断は決まった。

 「ッ!? があああっ!!!」

 「無駄よ。その程度で私が揺らぐ訳ないでしょ」

 私はアフラの審判を発動させた。するとミシェーラは息が出来なくなったかのように悶え苦しみ出した。いや、かのようにではなく、本当に息が出来なくなっているのだ。

 「イ…イーリス!! ふざ…けんなよ!! テメエ……!!」

 さっきまで憎たらしい笑みを浮かべていたのに今は苦痛の表情を浮かべている。だがもう少しでその苦痛ともおさらばすることになるだろう。自分の命と共に。

 「たとえ魔女達を敵に回したとしてもなんとかしてみせるわよ。だって私はママの、最強の魔女、アイリス・ヴァンドレッドの娘なんだがら!」

 「…ッ!? クソ…がああああ…!!」

 私の決意を告げると共にミシェーラは呻き声をあげそれからピクリとも動かなくなった。

 「…さようなら、ミシェーラ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Bグループの少年

櫻井春輝
青春
 クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...