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第4章「実は私」
第23話「3人でお疲れ様会(後編)!」
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「でも信じられませんね」
「えっ? 何が?」
ふと放ったみのりの一言が気になり反射的に聞いてみた。
「中学の時は廊下ですれ違うくらいでお話しする機会なんてなかったのに、今では一緒にテスト勉強したりカラオケしたりしてるなんて驚きですよね?」
「ああ、確かに。みのり人気者だし住む世界が違ってたっていうか今でも時々信じられないと思う時あるし」
ホントにそうだよな。俺なんかただ彼女を見ているだけの存在だったもんな。別に好きだったというワケではないが学校一のマドンナだから誰もが彼女に釘付けだったからな。
俺もそのうちの一人で他の男子達と同じように遠くから見ているだけの存在。話しかける勇気も俺には備わっていなかったしな。
「大げさ過ぎですよ。私だってあの時は話す勇気なんてなかったんですから」
「まっさかー!?」
「むー、ホントですよー!」
そう言いながら彼女は頰を膨らまして怒った表情を見せてきた。やっぱり美少女が怒っても可愛いことに変わりはないな。
「まあ今はこうして楽しくお話し出来て嬉しいですけど」
「左様ですか」
しかし思いの外早めに矛を収めたみのり。まあ俺も正直なところ嬉しい気持ちは半分あるけどな。
「でも私、まだ諦めてませんからね」
「ん? ああ。あの時のことね」
嬉しい気持ちは半分はあると言ったがもう半分は不安であった。彼女が俺に近づいて来た理由。それは彼女が吸血鬼で俺の血を狙ってきているのだ。
あの時は有紗が居たからなんとかなった。その後も何度か危ない目にあったが現段階ではまだ血を吸われてはいない。
『私、まだ諦めてませんからね!』
あの時も電話で同じようなことを言っていたのをふと思い出した。あの言葉はまだ有効だったようだ。
「でももう一つやることが出来たんでそれは後でもいいですかね」
「もう一つ?」
そんな中、彼女から出た一言に面を食らった。『もう一つやること』。凄い気になるワードが出てきたな。
「それは…ふふ♡ ヒミツです♡」
「何それ? もしかしてまた俺関連!?」
そうなったら更に警戒が必要になってくるだろうか? しかしもし俺だとしたら血液以外に利用価値があるのか? 自分で言ってて悲しいことだが自分に取り柄がないのはとっくに自覚している。
「さてどうでしょう♪」
彼女は微笑みで誤魔化してきた。その微笑みとさっきの発言があいまって不気味に思えてくる。
「さて、私もちょっとお手洗い行って来ますね」
「ん? ああ。分かった」
結局、話を半ば強制的に終わらせられた。仕方なく俺は返事をするとソファーから立ち上がろうとした。ソファーとテーブルの間隔がかなり狭い為、俺が退かないと奥にいるみのりが出られないのだ。
「すいません。ありがと…キャッ!?」
すると俺より先に立ち上がったみのりが自分の足が絡まったようで俺の方向に向かって倒れてきた。
「あっぶ…おっふ!?」
倒れるまでの速度が速過ぎて俺は動けずみのりに押し倒されるような感じでソファーに倒れこんだ。
「いっづ! 意外とイテーなこのソフ…」
「んん…ごめんなさいかずひ…」
俺とみのりは一言言おうとしたが思考が一気に止まった。何故ならみのりとの顔の距離がほぼゼロ距離にあったからだ。みのりが呼吸する度にみのりの吐き出す息が俺の口元にかかっている。下手に2人が同時に喋り出すとお互いの唇が触れてしまうかもしれない。
俺のゲスい心が『そのままキスしろよ!』と語りかけてくる。確かにこの流れだとキスしてもいいんじゃないかとゲス心に侵食されそうになっていた。
「アンタ達!」
『!?』
そしてタイミングの悪過ぎることにドスの利いた声が扉の方から聴こえてきた。思わず2人共扉の方に視線を向けた。俺達は既に予想出来ていた。扉の方には予想通り有紗が立っていた。しかし有紗の目には輝きがなく冷淡な目でこちらをまじまじと見つめていた。そんな有紗を見て俺の背中に寒気が走った。
「私が数分居なくなっただけでよくそんなことが出来るわね」
再びドスの利いた声が有紗の口から発せられた。その声を聴くとサイコホラー映画のワンシーンを彷彿とさせる。
「あ、あの夏目さん、違うんですよ。これは本当にただの事故で…」
流石の事態に珍しくみのりが動揺している。慌てながら起き上がり身振り手振りで誤解を解こうとしてくれている。
「そ、そうだよ。落ち着けってあり…ヒイッ!」
俺も一緒に誤解を解こうとした瞬間、静かに俺に歩み寄ってきた。あまりの恐怖で思わず弱気な声が漏れてしまった。ヤバイ! マジで殺され…
「シネ!」
有紗は両手の指を絡めるようにくっつけ自分の頭の上まで振りかぶり、三度(みたび)ドスの利いた声とほぼ同時に『ド◯ゴンボ◯ル』ばりの勢いで振り下ろされた。
---視界が一気に闇に包まれその後の記憶は全くない。折角楽しくなってきたお疲れ様会が最後はホラー映画みたいな展開で終わりを迎えたのだった。
「えっ? 何が?」
ふと放ったみのりの一言が気になり反射的に聞いてみた。
「中学の時は廊下ですれ違うくらいでお話しする機会なんてなかったのに、今では一緒にテスト勉強したりカラオケしたりしてるなんて驚きですよね?」
「ああ、確かに。みのり人気者だし住む世界が違ってたっていうか今でも時々信じられないと思う時あるし」
ホントにそうだよな。俺なんかただ彼女を見ているだけの存在だったもんな。別に好きだったというワケではないが学校一のマドンナだから誰もが彼女に釘付けだったからな。
俺もそのうちの一人で他の男子達と同じように遠くから見ているだけの存在。話しかける勇気も俺には備わっていなかったしな。
「大げさ過ぎですよ。私だってあの時は話す勇気なんてなかったんですから」
「まっさかー!?」
「むー、ホントですよー!」
そう言いながら彼女は頰を膨らまして怒った表情を見せてきた。やっぱり美少女が怒っても可愛いことに変わりはないな。
「まあ今はこうして楽しくお話し出来て嬉しいですけど」
「左様ですか」
しかし思いの外早めに矛を収めたみのり。まあ俺も正直なところ嬉しい気持ちは半分あるけどな。
「でも私、まだ諦めてませんからね」
「ん? ああ。あの時のことね」
嬉しい気持ちは半分はあると言ったがもう半分は不安であった。彼女が俺に近づいて来た理由。それは彼女が吸血鬼で俺の血を狙ってきているのだ。
あの時は有紗が居たからなんとかなった。その後も何度か危ない目にあったが現段階ではまだ血を吸われてはいない。
『私、まだ諦めてませんからね!』
あの時も電話で同じようなことを言っていたのをふと思い出した。あの言葉はまだ有効だったようだ。
「でももう一つやることが出来たんでそれは後でもいいですかね」
「もう一つ?」
そんな中、彼女から出た一言に面を食らった。『もう一つやること』。凄い気になるワードが出てきたな。
「それは…ふふ♡ ヒミツです♡」
「何それ? もしかしてまた俺関連!?」
そうなったら更に警戒が必要になってくるだろうか? しかしもし俺だとしたら血液以外に利用価値があるのか? 自分で言ってて悲しいことだが自分に取り柄がないのはとっくに自覚している。
「さてどうでしょう♪」
彼女は微笑みで誤魔化してきた。その微笑みとさっきの発言があいまって不気味に思えてくる。
「さて、私もちょっとお手洗い行って来ますね」
「ん? ああ。分かった」
結局、話を半ば強制的に終わらせられた。仕方なく俺は返事をするとソファーから立ち上がろうとした。ソファーとテーブルの間隔がかなり狭い為、俺が退かないと奥にいるみのりが出られないのだ。
「すいません。ありがと…キャッ!?」
すると俺より先に立ち上がったみのりが自分の足が絡まったようで俺の方向に向かって倒れてきた。
「あっぶ…おっふ!?」
倒れるまでの速度が速過ぎて俺は動けずみのりに押し倒されるような感じでソファーに倒れこんだ。
「いっづ! 意外とイテーなこのソフ…」
「んん…ごめんなさいかずひ…」
俺とみのりは一言言おうとしたが思考が一気に止まった。何故ならみのりとの顔の距離がほぼゼロ距離にあったからだ。みのりが呼吸する度にみのりの吐き出す息が俺の口元にかかっている。下手に2人が同時に喋り出すとお互いの唇が触れてしまうかもしれない。
俺のゲスい心が『そのままキスしろよ!』と語りかけてくる。確かにこの流れだとキスしてもいいんじゃないかとゲス心に侵食されそうになっていた。
「アンタ達!」
『!?』
そしてタイミングの悪過ぎることにドスの利いた声が扉の方から聴こえてきた。思わず2人共扉の方に視線を向けた。俺達は既に予想出来ていた。扉の方には予想通り有紗が立っていた。しかし有紗の目には輝きがなく冷淡な目でこちらをまじまじと見つめていた。そんな有紗を見て俺の背中に寒気が走った。
「私が数分居なくなっただけでよくそんなことが出来るわね」
再びドスの利いた声が有紗の口から発せられた。その声を聴くとサイコホラー映画のワンシーンを彷彿とさせる。
「あ、あの夏目さん、違うんですよ。これは本当にただの事故で…」
流石の事態に珍しくみのりが動揺している。慌てながら起き上がり身振り手振りで誤解を解こうとしてくれている。
「そ、そうだよ。落ち着けってあり…ヒイッ!」
俺も一緒に誤解を解こうとした瞬間、静かに俺に歩み寄ってきた。あまりの恐怖で思わず弱気な声が漏れてしまった。ヤバイ! マジで殺され…
「シネ!」
有紗は両手の指を絡めるようにくっつけ自分の頭の上まで振りかぶり、三度(みたび)ドスの利いた声とほぼ同時に『ド◯ゴンボ◯ル』ばりの勢いで振り下ろされた。
---視界が一気に闇に包まれその後の記憶は全くない。折角楽しくなってきたお疲れ様会が最後はホラー映画みたいな展開で終わりを迎えたのだった。
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