俺の高校生活に平和な日常を

慶名 安

文字の大きさ
上 下
115 / 445
第4章「実は私」

第23話「3人でお疲れ様会(後編)!」

しおりを挟む
 「でも信じられませんね」

 「えっ? 何が?」

 ふと放ったみのりの一言が気になり反射的に聞いてみた。

 「中学の時は廊下ですれ違うくらいでお話しする機会なんてなかったのに、今では一緒にテスト勉強したりカラオケしたりしてるなんて驚きですよね?」

 「ああ、確かに。みのり人気者だし住む世界が違ってたっていうか今でも時々信じられないと思う時あるし」

 ホントにそうだよな。俺なんかただ彼女を見ているだけの存在だったもんな。別に好きだったというワケではないが学校一のマドンナだから誰もが彼女に釘付けだったからな。

 俺もそのうちの一人で他の男子達と同じように遠くから見ているだけの存在。話しかける勇気も俺には備わっていなかったしな。

 「大げさ過ぎですよ。私だってあの時は話す勇気なんてなかったんですから」

 「まっさかー!?」

 「むー、ホントですよー!」

 そう言いながら彼女は頰を膨らまして怒った表情を見せてきた。やっぱり美少女が怒っても可愛いことに変わりはないな。

 「まあ今はこうして楽しくお話し出来て嬉しいですけど」

 「左様ですか」

 しかし思いの外早めに矛を収めたみのり。まあ俺も正直なところ嬉しい気持ちは半分あるけどな。

 「でも私、まだ諦めてませんからね」

 「ん? ああ。あの時のことね」

 嬉しい気持ちは半分はあると言ったがもう半分は不安であった。彼女が俺に近づいて来た理由。それは彼女が吸血鬼で俺の血を狙ってきているのだ。

 あの時は有紗が居たからなんとかなった。その後も何度か危ない目にあったが現段階ではまだ血を吸われてはいない。

 『私、まだ諦めてませんからね!』

 あの時も電話で同じようなことを言っていたのをふと思い出した。あの言葉はまだ有効だったようだ。

 「でももう一つやることが出来たんでそれは後でもいいですかね」

 「もう一つ?」

 そんな中、彼女から出た一言に面を食らった。『もう一つやること』。凄い気になるワードが出てきたな。

 「それは…ふふ♡ ヒミツです♡」

 「何それ? もしかしてまた俺関連!?」

 そうなったら更に警戒が必要になってくるだろうか? しかしもし俺だとしたら血液以外に利用価値があるのか? 自分で言ってて悲しいことだが自分に取り柄がないのはとっくに自覚している。

 「さてどうでしょう♪」

 彼女は微笑みで誤魔化してきた。その微笑みとさっきの発言があいまって不気味に思えてくる。

 「さて、私もちょっとお手洗い行って来ますね」

 「ん? ああ。分かった」

 結局、話を半ば強制的に終わらせられた。仕方なく俺は返事をするとソファーから立ち上がろうとした。ソファーとテーブルの間隔がかなり狭い為、俺が退かないと奥にいるみのりが出られないのだ。

 「すいません。ありがと…キャッ!?」

 すると俺より先に立ち上がったみのりが自分の足が絡まったようで俺の方向に向かって倒れてきた。

 「あっぶ…おっふ!?」

 倒れるまでの速度が速過ぎて俺は動けずみのりに押し倒されるような感じでソファーに倒れこんだ。

 「いっづ! 意外とイテーなこのソフ…」

 「んん…ごめんなさいかずひ…」

 俺とみのりは一言言おうとしたが思考が一気に止まった。何故ならみのりとの顔の距離がほぼゼロ距離にあったからだ。みのりが呼吸する度にみのりの吐き出す息が俺の口元にかかっている。下手に2人が同時に喋り出すとお互いの唇が触れてしまうかもしれない。

 俺のゲスい心が『そのままキスしろよ!』と語りかけてくる。確かにこの流れだとキスしてもいいんじゃないかとゲス心に侵食されそうになっていた。

 「アンタ達!」

 『!?』

 そしてタイミングの悪過ぎることにドスの利いた声が扉の方から聴こえてきた。思わず2人共扉の方に視線を向けた。俺達は既に予想出来ていた。扉の方には予想通り有紗が立っていた。しかし有紗の目には輝きがなく冷淡な目でこちらをまじまじと見つめていた。そんな有紗を見て俺の背中に寒気が走った。

 「私が数分居なくなっただけでよくそんなことが出来るわね」

 再びドスの利いた声が有紗の口から発せられた。その声を聴くとサイコホラー映画のワンシーンを彷彿とさせる。

 「あ、あの夏目さん、違うんですよ。これは本当にただの事故で…」

 流石の事態に珍しくみのりが動揺している。慌てながら起き上がり身振り手振りで誤解を解こうとしてくれている。

 「そ、そうだよ。落ち着けってあり…ヒイッ!」

 俺も一緒に誤解を解こうとした瞬間、静かに俺に歩み寄ってきた。あまりの恐怖で思わず弱気な声が漏れてしまった。ヤバイ! マジで殺され…

 「シネ!」

 有紗は両手の指を絡めるようにくっつけ自分の頭の上まで振りかぶり、三度(みたび)ドスの利いた声とほぼ同時に『ド◯ゴンボ◯ル』ばりの勢いで振り下ろされた。

 ---視界が一気に闇に包まれその後の記憶は全くない。折角楽しくなってきたお疲れ様会が最後はホラー映画みたいな展開で終わりを迎えたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

Bグループの少年

櫻井春輝
青春
 クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...