転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第5章 入学編

第5章ー㉔

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 「俺は、友達作りしに来たわけでも、思い出を作りに来たわけでもねぇ」

 「…」

 「…サダメ…」

 彼にどういう思惑があるかなんて知った事じゃない。だから自分は、思いの丈を彼にぶつけた。

 「お前がなんで俺を敵視しているのかは分からないけど、俺だって勇者目指す為にここに居るんだ。お前がどうしようが、そこだけは絶対にまげねぇから」

 「…」

 自分の意見を伝えるが、彼の表情は全く変わらず、冷たい目でこっちを見ていた。きっと、高校生ぐらいの自分だったら彼の視線を見ただけで萎縮して物を申すなんて出来やしなかっただろう。けど、今は不思議と恐怖を感じない。ただ、自分の意志を曲げたくはないという意地の方が勝っていた。

 「…はあ。そうか」

 自分の意志が変わらない事を理解したのか、彼はため息を一つ零してその場を去ろうとしていた。思いの外物分かりがいいのか? それとも、呆れ果ててしまったのだろうか。

 「なら、お前は俺の敵、いや、俺の目的を果たす為の踏み台にしてやる」

 「ッ!?」

 と思っていたが、去り際彼の口から衝撃発言が飛んだ。それは、完全なる宣戦布告の合図だった。

 「おい、なーにが踏み台だー! 先にこいつに勇者になるって言われた手前、同じ事言えなくって言い方変えただけの癖によー! 偉そうにしてんじゃねーぞ、黒歴史拗らせヤロー!」

 「ギ、ギリスケ。あんま大声出すなって…」

 「許せぬ! 其方! 今の発言、撤回せよ!!」

 「ちょっ、マヒロまで?! 駄目だって、ここで刀抜いちゃ!?」

 「うぬぬ、離すでござるミオ。友人を馬鹿にされ黙っているなど武士の恥! そやつには発言を撤回させるまで許す訳にはいかぬ!」

 それを機に、自分よりもギリスケとマヒロの怒りに引火してしまい、暴言を吐いて殴り掛かりに行きそうなギリスケは自分、刀を抜いて襲い掛かろうとしているマヒロをミオで必死に押さえつけた。マズい。初日から問題行動を起こしたら、最悪退学処分だ。それだけは避けなければ。けど、二人共ヒートアップしすぎて手が付けられない。何事かと周囲の野次馬が増えて来てるし、先生が来る前になんとかこの騒動を終わらせねば。

 「…な」

 「あ゛あ゛っ?! なんだってー?! 聞こえねーよ痛《いた》眼帯野郎!」

 そんな中、アラガはぼそりと何か呟いた。ギリスケがお怒り状態のまま聞き返すと、アラガがゆっくりと後ろを振り返った。








































            「うるせえな、虫けら共!」

 彼の初めて見せた怒り剥き出しの一言は、一瞬で周囲の空気を凍らせた。
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