転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

文字の大きさ
上 下
156 / 201
第5章 入学編

第5章ー⑲

しおりを挟む
 「えっ? 今、勇者って言った?」

 「マジで? ウケるー」

 「…」

 「…サダメ…」

 予想通り、周囲の反応はあまりいいものではなかった。滅茶苦茶馬鹿にされているかは定かではないが、嘲笑はちらほら聞こえた。けど、これでいい。分かっていたことだ。反論するのはお門違い。だから、自己紹介を終えた自分は何も言わずにスッと席に座った。ミオが心配そうな表情を見せているが、彼女が気にする必要はない。自分はここに青春を送りたくて来た訳じゃない。自分の夢を叶える為に来たのだから。

 「うん。私は素晴らしい夢だと思うよ。それでは次、行ってみようか」

 リーフさんはさりげなくフォローしているが、元々リーフさんは知っている事だ。初めて話した時も笑わずに聞いてくれているような人だしな。それに、あの人も新たな勇者を求めているようだし、そう考えると都合がいいのかもしれない。

 「ギリスケ・アンドリューズ。出身はソルード村で、好きなものは…」

 次はギリスケの番となり、彼も自己紹介を始めるのだが、途中で深呼吸を一度挟みだす。

 「女の子、です!!」

 「ッ?! ギリスケ?」

 すると、教室に響き渡る程の大声量で自分の趣味を暴露し出した。隣で大声を上げられ、思わず耳を塞いでしまった。急に何やってんだこいつは。

 「好みのタイプは特に定めてません! 背が高くても低くても、長髪でも短髪でも、おっぱいがデカくても小ぶりでも基本なんでもイケます!」

 「う、うん…?」

 熱くなってきたのか、暴露が止まらないギリスケに対して、流石のリーフさんも困った反応をしている。あんなに困惑しているリーフさんは初めて見たかもしれない。

 「将来の夢は自分だけのハーレムを作ること! この学園を卒業出来ればそれだけで箔が付く筈。それを上手く使えば女の一人二人寄ってきますよね?!」

 「んー、どう、だろう…」

 「その前に、まずはこの学園に居る女の子百人と付き合う事から始めたいと思います! ここに居る女性陣、このギリスケ・アンドリューズは何時でも何処でも如何なる時でも貴方達の告白を待っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします! 以上! あざっした!!」

 「…」

 リーフさんすら圧倒されるギリスケの熱弁が終わり、教室が一瞬にして静寂の空気に変わった。色々言いたい事はあるものの、あまりの熱量に言葉が出ない。

 「…ぎ、ギリスケ、お前…」

 着席したギリスケにようやく話しかける事が出来た。けど、まだ熱量に負かされて上手く言葉が出せない。

 「ふっ。この勝負、俺の勝ちだな」

 「…」

 そんななか、彼はこちらを見るなり勝ち誇ったような顔でサムズアップを見せつけてくる。傍から見ると相当ムカつくだろうな。

 「…ぷっ。なんの勝負だよ」

 けど、不思議な事に自分は腹が立つより変な笑いが込み上げて来た。それと同時に、いい友人を持ったなとしみじみと思わされた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太
ファンタジー
 深淵から漏れる生物にとって猛毒である瘴気によって草木は枯れ果て、生物は病に侵され、魔物が這い出る災厄の時代。  浄化の神の神殿に仕える瘴気の影響を受けない浄化の騎士のガルは女神に誘われて瘴気を止める旅へと出る。  近くにあるエルフの里を目指して森を歩いていると、土に埋もれた記憶喪失の転生者トキと出会う。  彼女は瘴気を吸収する特異体質の持ち主だった。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト
ファンタジー
ある日、背後から何者かに突然刺され死亡した主人公。 目覚めると神様的な存在に『転生』を迫られ 気付けば異世界に! 火を吐くドラゴン、動く大木、ダンジョンに魔王!! 有り触れた世界に転生したけど、身体は竜の姿で⋯!? 仲間と出会い、絆を深め、強敵を倒す⋯単なるファンタジーライフじゃない! 進むに連れて、どんどんおかしな方向に行く主人公の運命! グルグルと回る世界で、一体どんな事が待ち受けているのか! 読んで観なきゃあ分からない! 異世界転生バトルファンタジー!ここに降臨す! ※「小説家になろう」でも投稿しております。 https://ncode.syosetu.com/n5903ga/

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば
ファンタジー
シキは勇者に選ばれた。それは誰かの望みなのか、ただの伝統なのかは分からない。しかし、シキは勇者に選ばれた。果たしてシキは勇者として何を成すのだろうか。

処理中です...