転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第5章 入学編

第5章ー⑤

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 「目的、ですか?」

 自分の問いかけにリーフさんはこくりと頷く。なにかしらの意図があって試験内容を作っているのはわかるが、それを普通に他者に話してもいいものなのだろうか。

 「去年、十三名の生徒がこの学園から居なくなってしまってね。そのうち三名は亡くなっているんだ」

 「ッ?!」

 先程までの飄々とした口調とは違い、真面目な表情で語り始めるリーフさん。死者三名。前にリーフさんから命を落とす可能性もあると言っていたが、こうして生々しい数字を聞かされると、あれは誇張なんかじゃなくて本当のことなのだと思わざるを得ない。

 「皆、どこに出しても恥ずかしくないぐらい優秀な生徒達だった。しかし、度重なるアクシデントが続き、このような結果になってしまった。我ながら心が痛いよ」

 「…リーフさん」

 リーフさんの顔から哀愁が漂っている。嫌な事を思い出してしまったのだろう。そりゃあ生徒が三人も亡くなってるんだ。色々辛い思いをしてきたに決まってる。

 「私はそれから考えてみたんだ。今必要な人材とはなんなのか」

 「それが今回の試験内容に関わっていたと?」

 「うん、そうだね。私が思うに、今必要なのは【運】だと思っている」

 「運?」

 話を聞いていると、今回の試験の目的はなんとなく理解する事が出来た。しかし、まだ納得は出来ていない。流石に実力よりも運を必要とするものなのだろうか。仮にも名門と呼ばれている学園で。

 「どれだけ成績優秀で努力家で実績を積んだとしても、一度の不幸で全てを無に帰されてしまう」

 「ッ!?」

 「私はそんな光景を幾度となく見てきた。若者の人生をこれ以上摘みたくはない。だが、このままではこの国は衰退の一歩を辿ってしまいかねない。私なりに色々と考えた末、強運に恵まれた人材を発掘することにしたんだ」

 「…」

 どうやらリーフさんも色々考えた上でこの結論に至ったそうだ。言われるとたしかに、どれだけ研鑚を積み上げた人でも、死ぬ時は突然だ。リーフさんの話を聞いていて、ふと父の事を思い出した。父も間違いなく優秀な人材の一人だっただろう。そこに偶々奴が襲って来たばかりに命を落としてしまった。父の件を思い出すと、リーフさんの意見にも賛同しなくもない。

 「運の良し悪しはどう抗っても変えられない。なら、運の良い者を育てればどうなると思う?」

 「?」

 しかし、次の謎の質問に自分は首を傾げた。急に話が見えなくなってきて、この人の目的とやらがいよいよ分からなくなってきた。何が言いたいのだろうか。

 「不運にも負けない、真の意味での最強の戦士が誕生する。私の目的は、新たな勇者を生み出すことだよ」
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