転生勇者が死ぬまで10000日

第5章 入学編

第5章ー①

　ソワレル学園の試験から一週間が経過した。今日は再び学園に向かう日。なにせ、ソワレル学園の生徒として学園に通う事となったからだ。

　「いよいっしょっと」

　前より大きめのリュックを背負い、外に出る。寮生活が始まる為、着替えだけでなく歯ブラシやら筆記用具やらの日用品もある程度必要になってくる。一週間分の着替えやタオルだけでパンパンになっていて、更に日用品も入れているからだいぶリュックが重くなっていた。油断したら後ろに倒れてしまいそうだ。

　「二人共、もう準備出来たの？」

　「あ、はい。俺はもう大丈夫です」

　「私も」

　教会の外に出ると、既にエリカさんが見送りの準備をしてくれていた。朝から忙しなくしていて、自分達よりソワソワしてそうだ。

　「そう。じゃあ…」

　「「ッ？！」」

　そんなエリカさんは準備が出来た事を確認し終えると、自分とミオに近づき、いきなり二人を抱き寄せた。

　「サダメ、ミオ。頑張って来てね。愛してる」

　「…エリカさん」

　抱き寄せると、耳元で囁くようにエールを送るエリカさん。エリカさんの目には薄っすらと涙が零れ落ちていた。そうだ。暫くは二人に会えないのだ。育ての親としては寂しいものがあるのだろう。

　「うん。私も大好きだよ、シスター」

　「ありがとう、ミオ」

　エリカさんのエールにミオはエリカさんを強く抱きしめながら素直な気持ちを伝えていた。それを聞いてエリカさんは嬉しそうな表情を浮かべている。彼女の純粋な言葉がよっぽど嬉しかったようだ。

　「…チラッ。チラチラ」

　「…へっ？」

　しかし、彼女の言葉を受け取った後、エリカさんはわざとらしく自分に視線を送る。もしかして、自分からも何か欲しいのか？

　「サダメ、あ・い・し・て・る」

　「ちょっ、エリカ、イタイイタイイタイ！？」

　自分がもたもたしていると、エリカさんは自分の肩をしっかりと掴み、先程の愛の言葉を強調するように口に出した。その言葉とは裏腹に、言うまで逃がさんと言わんばかりに肩をがっちり掴んでいる。いや、掴んでいるといより押さえつけられてる気がするのだが。なんか肩に段々重くなって痛くなってきたんですけど。今日のエリカさん、いつもよりなんだか怖いのだが。いつもの説教とは違う意味で怖い。ヤバイ。エリカさんの愛に押し潰されそうなんですけど。

　「シスター、そこまでにしなさい」

　「ッ？！　神父様！？」

　愛に押し負けそうになった時、神父様がエリカさんを一喝して止めに入ってきてくれた。流石神父様。神父様が居なければエリカさんの愛に飲みこまれる所だった。