転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第4章 入学試験編

第4章ー㉒

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 翌日、昼前にミオに叩き起こされ再び街へと繰り出されていた。くそ、なぜこの宿は鍵付きじゃないのだろうか。もうちょっとセキュリティーをなんとかして欲しいものだ。

 「何言ってんの? この鍵渡されたでしょ?」

 「…えっ?」

 そのことを街中を散策中愚痴に出したら、ミオにきょとんとした顔をされ、部屋番号が書かれたお札サイズの木の板を見せられた。どうやらこれをドアノブの所に翳しながら少量の魔力を流すと鍵を掛けるという仕組みらしい。なるほど。どういうわけか、自分はそのシステムが搭載されていた事を忘れてしまっていたらしい。言われてみればそんな説明を受付の人に聞いたような気がする。結果、今回の件は自分に落ち度があることが判明しただけであった。

 その話はさておき、自分達は昼飯を食べ終えた後、お土産を買う為良さげな店を物色して回っていた。本当は試験が終わった後に買うつもりだったが、試験後に色んな意味で余裕があるかもわからないし、だから今のうちに買ってしまおうという話になった。

 「うーん、何にすっかなー」

 しかし、何店舗か見てみたが、未だにどれにしようか決めあぐねていた。最初は都会でしか売ってなさそうな美味しい物をと思ったが、賞味期限の事とか考えたらあんまり良さそうな品がない。無論、美味そうなやつは沢山あるのだが。リーヴ村まで持って帰ることを考慮すると、食べ物系は止めた方がいいのかもしれないな。

 となると、手軽な置物かアクセサリー辺りが良いだろうか。だが、都会ならではの置物なんてあるのだろうか。正直、その辺の知識が疎いからよくわからんのよな。下手したらリーヴ村でも売ってるやつを買ってしまいかねない。それではお土産の意味がない。

 「…」

 次に雑貨屋の店に入った自分は、一つ一つ吟味しながら見て歩いた。うろ覚えの記憶で見覚えがあるかどうかを確認するが、どれもはっきりしない為相当苦戦を強いられていた。最悪、店員に聞いてみるしかないか。

 「ねえ、私もう買うの決めたけど、まだ時間掛かりそう?」

 自分が品物をじっくり見定めているなか、ミオの方は早い段階で決めていた。彼女の手にはおしゃれな服を着た可愛らしいうさぎのぬいぐるみを二つ。そういうのも売っていたのか。

 「んー、いや、すぐ決めるからさっき出といて」

 「そう? わかった。早くしてね」

 彼女にはああいったものの、ぶっちゃけまだ決めあぐねていた。けど、彼女の買い物を見て、あまり深く考えない方がいいかもしれないという思考に切り替わっていた。そうだよ。身内に買うものなんだし、そんなに深く考える必要なんてない。直観で良いと思ったものを選べばいいのだ。

 「…よし、これでいっか」

 辺りをもう一度見回り、良さげなスノードームを二種類購入。スノードームがこの世界に存在する事自体知らなかったし、こういうのエリカさんとかは好きそうだ。





 「ありがとうございましたー」

 「ふぅ。あんまミオ待たせたらまた不機嫌になるだろうし、早く行かねーと」

 会計を済ませた自分は、急いでミオの元へ向かって行く。あんまり待たせて苛つかせたら、またなんか奢らされるだろうし。

 「待たせて悪かったな、ミ…」

 店を出て、彼女の姿を見つけて声を掛けようとした。しかし、彼女に不審な男二人が迫って来ていた。
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