転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

文字の大きさ
上 下
103 / 201
第4章 入学試験編

第4章ー⑰

しおりを挟む
 「二人とも、頑張って来いよー!」

 「はい、ありがとうございました」

 目的地に辿り着き、おじさんは自分達にエールを送りながらそのまま帰って行った。おじさんには感謝しかないな。

 「おー、ここがレッソか」

 「リーヴ村より人多いね」

 自分達は今、リーヴ村から約一日離れた町・レッソ。領土も人口もリーヴより一回り二回りも違っており、かなりの賑わいを見せていた。入学試験も近いから、同じように学園行きの馬車を待っている人もいるのかもしれないが。

 「それより、さっさと学園行きの馬車探そうぜ」

 「うん。そうだね」

 「ほらっ」

 「ええっ!?」

 町に来て早速、自分達は学園行きの馬車を探す事にした。人混みも多いし、初めて来た町だから離れたら大変だ。そう思った自分はミオに手を差し伸べた。

 「い、いや。大丈夫、大丈夫だから!?」

 「いやいや、迷子になったら大変だろ? 不慣れな町で合流すんのも面倒だし、手ぇ繋いでた方がまだ安心だろ?」

 「うっ!? うぅ…」

 「? ほら、急がないと」

 「ッ!? ちょ、ちょっとぉ!?」

 しかし、なぜか不安そうにキョロキョロと挙動不審な態度を取って手は取ろうとしないミオ。自分が道に迷ってしまうのではないかと考えてしまったのだろうか。一応リーフさんの地図があるからそれ通りに行けば大した問題ではないと思うのだが。むしろ地図を持っていない彼女が一人になることの方が自分としては不安なのだが。

 いつまでも手を取ろうとしない彼女の手を無理やり取る。流石にそんなに悠長に待っている時間はない。最悪道を間違ったら人に聞けばいいだけの話。何も問題はない。

 「…」





 『学園行きー、学園行きの馬車に乗られる方はこちらにお願いしまーす!』

 「おっ、あそこだ」

 「…」

 しかし、それも杞憂に終わる。目的地であろう場所にまで来ると、男の人のアナウンスが聞こえて来た。そっちの方向に向かうと、馬車が何台か待ち構えていた。恐らくここで間違いないだろう。にしても、アナウンスなんてこの世界で生きて来て初めて聞いた気がする。都会では機械による文化も進んでいると聞いたことはあったが、既にこの町にも浸透しているようだ。

 「ほら、俺達も早く乗ろうぜ!」

 「…う、うん」

 「??」

 それはさておき、馬車に乗ろうとミオの手を引くが、彼女は頷くものの下を向いてこっちを見ようとしない。ここに来るまでずっとこんな状態だが、人混みで酔ってしまったのだろうか。まあたしかに、見慣れない人の数の中に入ったら気分が悪くなってしまうのも無理はないのかもな。次はなるべく避けるようにするか。そんなことを考えながらも、ミオと一緒に馬車の方に走って行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太
ファンタジー
 深淵から漏れる生物にとって猛毒である瘴気によって草木は枯れ果て、生物は病に侵され、魔物が這い出る災厄の時代。  浄化の神の神殿に仕える瘴気の影響を受けない浄化の騎士のガルは女神に誘われて瘴気を止める旅へと出る。  近くにあるエルフの里を目指して森を歩いていると、土に埋もれた記憶喪失の転生者トキと出会う。  彼女は瘴気を吸収する特異体質の持ち主だった。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト
ファンタジー
ある日、背後から何者かに突然刺され死亡した主人公。 目覚めると神様的な存在に『転生』を迫られ 気付けば異世界に! 火を吐くドラゴン、動く大木、ダンジョンに魔王!! 有り触れた世界に転生したけど、身体は竜の姿で⋯!? 仲間と出会い、絆を深め、強敵を倒す⋯単なるファンタジーライフじゃない! 進むに連れて、どんどんおかしな方向に行く主人公の運命! グルグルと回る世界で、一体どんな事が待ち受けているのか! 読んで観なきゃあ分からない! 異世界転生バトルファンタジー!ここに降臨す! ※「小説家になろう」でも投稿しております。 https://ncode.syosetu.com/n5903ga/

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...