転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第4章 入学試験編

第4章ー⑮

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 翌日の早朝、リーヴ村に騎士団の人が訪れていた。村にはそぐわない程の全身鎧に身を包んだガタイの良い連中がぞろぞろと入って来るものだからか、村の連中のざわつきようはすさまじかった。自分も朝起きて顔を洗おうと外に出たら、皆がざわついていた事に気がづき、顔を洗うのも忘れて少し離れた場所からその様子を見ていた。

 「リーフ殿、ご苦労様です」

 「やあ、わざわざすまないね。まさか貴方が訪ねて来るとは思わなかったよ」

 「いえいえ。リーフ殿のお力添えのおかげで被害は少なく済んだそうで、感謝致します」

 捕まえた賊を連行する最中、騎士団の一人がリーフさんに敬礼しながら感謝の言葉を述べていた。あの人が例の知り合いだろうか。顔が隠れているから素顔は見えないが、声で判別出来たのかな。

 「それでは我々はこれで。話は後日改めて」

 「ああ」

 荷台に賊を押し込み終わると、休憩する暇もなく騎士団の人はそそくさと帰って行った。遠方からわざわざ来たにも関わらず、村への滞在はわずか一時間にも満たなかった。あまりの仕事の早さに驚かされる。村の人達の視線が気になったからというのもあるかもしれないが。

 「さて、私もそろそろお暇させてもらおうかな」

 「ッ!?」

 騎士団を見送ったリーフさんも背伸びをしながらこの村から立ち去ると言いだした。ヤバイ。リーフさんが帰る前に昨日の事言っておかないと。そう思った自分は、慌ててリーフさんの元に駆け寄って行った。

 「リーフさん!」

 「ん? ああ、君か。おはよう」

 「おはよう、ございます。それより、もう行っちゃうんですか?」

 「うん。用は済んだし、一度学園に戻ろうと思ってね」

 慌てて呼び止め、少しばかり息を切らしながら話をすると、やはり先程の発言はこの村が去るという意味だったそうだ。朝早く起きれたのは幸いだったな。

 「あの、昨日の件なんですけど…」

 「うん?」





 それから、昨日神父達に話し、許可も貰えた事を伝えた。

 「そうか。それはよかった、とは個人的に素直に喜べないのは少々残念だが、覚悟は決まっているようだね」

 「はい!」

 リーフさんは複雑そうな表情を浮かべているが、自分の覚悟を見て少しだけ笑顔に変わった。仕事上仕方のないことなのだろうが、多分リーフさんも手放しでは喜べてはいないのだろう。きっとスカウトして後悔したこともあるのだろう。大変な仕事である。

 だけど、自分は絶対に学園に入り、無事に卒業して立派な勇者になってみせる。神父達にそう言って承諾を貰ったんだ。中途半端な気持ちで望む気はない。

 「試験はちょうど一か月後。ここに行けば学園付近まで送ってくれる馬車が出ているだろうから、乗る日程を間違えないようにね」

 「はい、ありがとうございます」

 リーフさんは学園まで行ける方法が書かれた簡易的な地図と、試験の日程やらが書かれた紙を自分に渡し村を去って行った。

 試験まで残り一ヶ月。今日から鍛錬をいつも以上に厳しくしなければ。

 ―転生勇者が死ぬまで、残り4143日
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