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第4章 入学試験編
第4章ー⑧
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先程まで微笑んでいた塩顔イケメンは、突然右手を自分の目の前に居る男に向けた。
「創造せよ、悪事を働く不届き者を制する捕具を」
「は?」
「【拘束《リストゥレイン》】」
「う゛っ?!」
途端に塩顔イケメンの方が魔法を詠唱。すると、賊の男が一瞬のうちに鉄製の縄のようなものに拘束されていた。
「んな゛っ!?」
「がっ!?」
「きゃあっ!?」
「ッ!?」
気が付けば他の賊も同じように拘束され、なにが起きたのかわからず人質にされていた女性達も困惑が隠せていなかった。
「よし、これで制圧は完了かな」
「ク、クソォ…」
「…」
僅か数秒足らずの出来事である。十数人に居た賊をたった一人で制圧してしまった。一人の犠牲も出すことなく。
「大丈夫ですか?」
「えっ?」
賊を制圧すると、すかさず人質に取られていた女性の元へ歩み寄り、手を差し伸べていた。
「あ、ありがとう、ございます」
思わず手を取る女性だが、何が何やらと顔に書かれていた。相当困惑しているな。
「な、なにもんだてめぇ?」
女性達を立たせ、賊から離れるよう促していると、賊の一人が塩顔イケメンに問いかけていた。
「先程、ヤベーブツに手を出していると聞こえたが、それは違法の魔法薬物の事かな?」
「…まさか、騎士団か?」
「騎士団に知り合いがいるものでね。旅のついでに見かけたら対処して欲しいと頼まれただけだよ」
賊の問いかけに乗じて対話を試みる塩顔イケメン。話を聞く限り、どうやらこの人は騎士団からの依頼でここに来たらしいようだが、ということは、賊がここに来ることを前もって知っていたのだろうか。
「騎士団の方には既に連絡してある。駐在所の者なら一日すれば到着するだろう。悪いがその間まで大人しくしててもらうよ」
「ちっ! クソが!」
騎士団にも既に連絡済みらしく、早ければ一日すれば到着するそうだ。なんと手際のよいこと。いや、事前に知っていたなら先に連絡はしてあるか。
「君も怪我はないかい?」
「…えっ!?」
そんなことを考えていると、塩顔イケメンは自分に向かって話しかけてきていた。一瞬忘れかけていたが、この人が来なければ自分は殴られていた所だった。
「は、はい、大丈夫です」
「そうか。それならよかった」
「あ、あの、助けてくれてありがとうございます」
「いやいや。君が勇気を出していなければ事態は余計に悪化していたかもしれない。私がもっと早く動いていれば、君も怖い思いをせずにすんだ。すまない」
「い、いえ、俺はなにも…」
塩顔イケメンに感謝の言葉を述べるも、少しだけ申し訳なさそうな顔を浮かべていた。塩顔イケメンは優しくフォローしてくれているが、今回の自分の行動は決して褒められるような事ではない。寧ろ反省するべきだ。
「あ、あの、お名前を伺っても?」
「ん?」
せめて恩人の名前ぐらいは知っておこうと、塩顔イケメンに名前を伺う。勇者の時は聞けなかったし、今度はちゃんと聞いておかないと。
「私はリーフ。リーフ・エンドレッドだ」
リーフと名乗る塩顔イケメンは、優しく微笑みながら握手を求めて来た。
「創造せよ、悪事を働く不届き者を制する捕具を」
「は?」
「【拘束《リストゥレイン》】」
「う゛っ?!」
途端に塩顔イケメンの方が魔法を詠唱。すると、賊の男が一瞬のうちに鉄製の縄のようなものに拘束されていた。
「んな゛っ!?」
「がっ!?」
「きゃあっ!?」
「ッ!?」
気が付けば他の賊も同じように拘束され、なにが起きたのかわからず人質にされていた女性達も困惑が隠せていなかった。
「よし、これで制圧は完了かな」
「ク、クソォ…」
「…」
僅か数秒足らずの出来事である。十数人に居た賊をたった一人で制圧してしまった。一人の犠牲も出すことなく。
「大丈夫ですか?」
「えっ?」
賊を制圧すると、すかさず人質に取られていた女性の元へ歩み寄り、手を差し伸べていた。
「あ、ありがとう、ございます」
思わず手を取る女性だが、何が何やらと顔に書かれていた。相当困惑しているな。
「な、なにもんだてめぇ?」
女性達を立たせ、賊から離れるよう促していると、賊の一人が塩顔イケメンに問いかけていた。
「先程、ヤベーブツに手を出していると聞こえたが、それは違法の魔法薬物の事かな?」
「…まさか、騎士団か?」
「騎士団に知り合いがいるものでね。旅のついでに見かけたら対処して欲しいと頼まれただけだよ」
賊の問いかけに乗じて対話を試みる塩顔イケメン。話を聞く限り、どうやらこの人は騎士団からの依頼でここに来たらしいようだが、ということは、賊がここに来ることを前もって知っていたのだろうか。
「騎士団の方には既に連絡してある。駐在所の者なら一日すれば到着するだろう。悪いがその間まで大人しくしててもらうよ」
「ちっ! クソが!」
騎士団にも既に連絡済みらしく、早ければ一日すれば到着するそうだ。なんと手際のよいこと。いや、事前に知っていたなら先に連絡はしてあるか。
「君も怪我はないかい?」
「…えっ!?」
そんなことを考えていると、塩顔イケメンは自分に向かって話しかけてきていた。一瞬忘れかけていたが、この人が来なければ自分は殴られていた所だった。
「は、はい、大丈夫です」
「そうか。それならよかった」
「あ、あの、助けてくれてありがとうございます」
「いやいや。君が勇気を出していなければ事態は余計に悪化していたかもしれない。私がもっと早く動いていれば、君も怖い思いをせずにすんだ。すまない」
「い、いえ、俺はなにも…」
塩顔イケメンに感謝の言葉を述べるも、少しだけ申し訳なさそうな顔を浮かべていた。塩顔イケメンは優しくフォローしてくれているが、今回の自分の行動は決して褒められるような事ではない。寧ろ反省するべきだ。
「あ、あの、お名前を伺っても?」
「ん?」
せめて恩人の名前ぐらいは知っておこうと、塩顔イケメンに名前を伺う。勇者の時は聞けなかったし、今度はちゃんと聞いておかないと。
「私はリーフ。リーフ・エンドレッドだ」
リーフと名乗る塩顔イケメンは、優しく微笑みながら握手を求めて来た。
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