転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第3章 逆襲編

第3章ー㉗

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 爆撃が始まって数分後、ようやく勇者の攻撃が終わりを迎えた。

 「ふぅ」

 「…」

 地面が荒れに荒れ、魔物の死体があちこちに転がっており、中には身体の一部だけしかないものもいた。最早語彙力が無くなったのを通り越して言葉を失っていた。

 「…奴の姿はないな。野郎、上手い事逃げたか。しぶとい野郎め」

 「ッ!?」

 しかし、辺りを見渡してもそこにはエイシャの姿はなかった。これだけ地面を削られているにも関わらず、一向に出てくる様子もない。攻撃範囲になんとか逃れたのか。それとも地中のどこかに埋もれてしまったのだろうか。だが、勇者の魔力感知ですら見つけられない様子。そう考えると、前者の可能性の方が高いか。奴のことだ、あれで死んだ可能性は低そうだが。

 「まあいい。次会ったら仕留めてやるさ。それよりも君達、無事か?」

 「は、はい!!」

 奴の探索は早々に止め、こちらに話しかけてくる勇者。普通に話しかけているが、まだ手の出血が完全に収まってはいないようだ。

 「それより勇者さん。手の怪我が…」

 「ん? ああ、これか。これぐらいの傷なら問題ないよ」

 「…」

 勇者は平然を装った顔をしているが、剣も握れない状態で問題ないわけがない。また魔物に襲われるかもしれないし。

 「ミオ」

 「うん!」

 「?」

 そう思った自分は、ミオに指示を促そうとしたが、それを先に汲み取ったミオが鳥の巣から出て勇者の元に駆け寄った。どうやらこの魔法、外側からの攻撃は受け付けないようだが、内側から外に出るのは簡単らしい。

 「聖なる風の精よ、癒しの力をお恵みください。【小さき癒しの温風リトルヒート】!」

 「おっ?」

 外に出たミオは勇者に治癒魔法を施す。それを見た勇者は少し面を食らった顔をしていた。

 「治癒魔法か」

 「はい。サダメみたいな深い傷は治せないけど、これくらいの傷ならなんとか」

 「そっか。そりゃあ助かる」

 さっきまで問題ないと言っていた勇者だが、ミオの治癒魔法を受けると素直に感謝の言葉を述べた。やっぱり子供を前に無理していたのだろうか。

 「あっ、でも、この巣の中に入れば問題ないのか」

 「あっ」

 しかし、そのあとすぐにミオの親切心が無意味だったということに気が付く。自分が入っているこの巣の中に入ってしまえば手の傷ぐらいすぐに治せた。しまった。ミオに余計な魔力を使わせてしまったか。

 「いや、自分の魔法じゃ治癒効果は得られないようになってるんだ」

 「そう、なんですか?」

 「そういえば、お父さんがそんなこと言ってたような…」

 だが、治癒魔法の効果は他対象限定らしく、自分が乗っているこの魔法は勇者には効果対象外らしい。ミオも自身の父からそう教わっているようだし間違いないのだろう。そういえば、ミオも自身の魔法で治癒してるところ見た事ないな。
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