転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第3章 逆襲編

第3章ー㉖

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 「『そうですか。なら、遠慮はいりません。やっておしまいなさい!』」

 「オッシャアァァァァァ!!」

 「くっ!?」

 これはかなりマズイ。勇者は手を負傷している。その状態じゃ魔法どころか剣を振ることすら出来ない。

 「勇者さん。ここは逃げた方が…」

 そう思った自分は勇者に逃げるよう提案してみた。いくら十死怪を倒せる実力者とはいえ、剣も握れない状態じゃどうやっても戦えるわけがない。

 「大丈夫。一撃で終わらせれば問題ない」

 「えっ? 一撃?」

 しかし、勇者から信じられない発言が飛び出してくる。向こうは十人以上、目の前にはエイシャだって居る。そいつらを一撃で倒すって? いくらなんでも無理がある。その手で一体何が出来る?

 「降りそそげ、残り火の塵芥達」

 「『ん?』」

 そう思っていた矢先、勇者が魔法を詠唱し始めた。だが、手を構える様子はない。武器を出す素振りも見えない。ただ、急に空が赤く染まっているような気がした。まだ日が出る時間帯ではないはず。エイシャも違和感に気づいたのか、上に視線を移していた。それにつられるように自分も上を見上げる。

 「あっ」

 上を見ると、驚愕の光景が目撃。

 「【降火灰塵《ディセイア・ダスト》】」

 空から無数に降って来る火の玉の大群。まるで流星群の如く降り注いでくる。空が赤く染まり出したのはそれが原因か。しかし、これだけの数の火の玉を詠唱を唱える僅か数秒の間で生成出来るものなのか。魔法はイメージだ。火の玉を一から作り出すだけでも時間がそれ相応に掛かる筈なのに、それをどうやってこの数を…

 「…そうか、残り火!」

 という疑問はすぐに解消。さっきのダークボルト戦で放った一撃で残った上空の残り火。それがまだ残っていて、その火を利用して火の玉を生み出したのか。魔法の応用にしても、こんな使い方まで出来るとは思わなんだ。というか、あんな残り火だけでここまで凄い魔法を撃てるなんて、流石は勇者。

 「『ちっ』」

 「な、なんだありゃあ?!」

 「おいおいおい、やべーぞ! 早く逃げろーーー!!」

 「ま、待ってくれーーー!!!」

 少し遅れながら魔物の連中も上の異変に気付き、状況を理解した後散り散りに逃亡を図ろうとしていた。

 「もう遅せーよ」

 しかし、攻撃範囲があまりにも広く、半径五〇〇メートル以上は届きそうな程広範囲にまで降り注いでいた。

 「くっっっっそぉぉぉぉぉ!!」

 「『…覚えておけよ、勇者!』」

 降り注ぐ火の玉は次々と地面に着弾。着弾すると激しい爆発で魔物達を巻き添えにしていく。一つ一つの威力は想像以上に高く、地面を軽く吹き飛ばす程。最早爆撃に近しいような威力と化しており、自分達の周囲一帯が戦争のような地獄絵図と化していた。
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