転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第3章 逆襲編

第3章ー㉑

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 「はっ、炎魔法か。面白れぇ」

 勇者の炎を見てちょっとだけ興奮気味になるダークボルト。なんだか楽しそうだ。

 「不死鳥《フェニックス》、下がっとけ」

 「くえぇっ!」

 「うわっ?!」

 そんなダークボルトを余所に、勇者は自分達を守ってくれている鳥に指示を出すと、自分達を乗せた巣を優しく持ち上げ後ろに下がった。

 「聖なる守護神よ。絶対の防御を誇る御身の防壁で親愛なる者達を守りたまえ。【絶防結界《アブソディ・セマ》】」

 自分達を下がらせた後、勇者は結界を張り出した。自分達を危惧しての判断なのだろうか。

 「俺の炎でここら一帯を焼け野原にするわけにはいかねーからな。あの子達も巻き添えには出来ないし、構わねえだろ?」

 「はっ、本気でやれんなら別に構わねえよ。逃げも隠れもしねぇし」

 「そうか。なら…」

 結界を張って自分達と隔離した勇者は、炎をダダ洩れにした剣を引っさげダークボルトに立ち向かって行く。

 「はあっ!」

 「うらあっ!」

 二人は再びゼロ距離での近接戦を開始。だが、先程とは違い向こうは強化魔法を施している。スピードとパワーを兼ね備えた相手に炎の剣一本で立ち向かえるものなのだろうか。

 「ふっ!!」

 「くっ!?」

 「…」

 という不安もありながら二人の戦いを見守っていたのだが、ほぼほぼ互角、いや、僅かだが勇者の方が圧している気がする。

 「…そうか」

 その理由はすぐに察する事が出来た。炎の火力を活かしているのだ。よく見るとさっきより打ち合う速度が速くなっている。恐らく剣から噴き出す炎の勢いを駆使してスピードとパワーの両方を補っているのだ。父も脱兎跳躍と炎の噴射を利用してエイシャと渡り合っていたのを思い出した。そう考えると、炎魔法は万能に近い能力を有しているのだろうか。

 「へっ、俺とここまでやり合える奴は人間じゃあてめぇが初めてだぜ。だが…」

 僅かに勇者が優勢に見える状況だが、ダークボルトはまだまだ余裕の表情。奴はまだ余力を残しているのか。

 「■■■、●●、▲▲▲▲」

 「ッ!?」

 ここに来て初めてダークボルトが詠唱を唱えた。魔物の言葉だからか何を言っているのかは全くわからない。だが、なにかヤバイやつが来ることだけはわかる。それを察してか、勇者が後ろに跳んだ。

 「【黒雷天《こくらいてん》】!!」

 「これは…」

 「ッ!? 勇者さん?!」

 詠唱を唱えると紅天画撃から黒い雷のオーラのようなものが集結。それが肥大化していき、槍先にサッカーボールサイズの黒い球体が形成され、ダークボルトは勇者目掛けてその球体を放つ。すると、球体は黒い破壊光線へと変化し勇者を襲う。
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