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第3章 逆襲編
第3章ー⑬
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自分達の横に立っているのに、全く気付かなかった。いつから居た? 敵なのか味方なのか? そもそもこいつは誰なんだ? ようやく頭が冷静さを取り戻したというのに、この男の介入でまた頭が混乱し始めた。
二メートルは優に超える長身。滅茶苦茶逆立った金髪も相まって、三メートルいっててもおかしくなさそうだ。黒い鎧で全身を覆い、赤い槍を持っている。男の背丈と同じぐらいの長さの槍を片手で軽々と握っている。細腕なのにとてつもない腕力。こんな奴、村には居なかった。
「折角来てやったのに、なにやってんだよお前?」
「『だ、ダークボルト、貴様、一体何しに来た?』」
「おいおいおぉぉい、なんだよその言い方ぁ。助けに来てやったんだろぉ?」
「『き、貴様に助けを乞いたつもりは、ないぞ!?』」
「ばあぁか。お前が魔王様に援軍を送ってくれって言ったんだろぉ?!」
「『わ、私は魔王様に助言を貰いに行っただけで、援軍を頼んだつもりはない!?』」
「けど、もう来ちまったし。んだっはっはっはっはっ!」
「『貴様、まさか盗み聞きを…』」
「勘違いするなよ? ちゃんと魔王様から許可は貰ってある」
「『くっ!?』」
「…」
ダークボルトと呼ばれている男は、エイシャと親しそうに話し合っていた。といっても、エイシャの方は屈辱そうな素振りを見せている所から察するに、あまり良好的な関係ではなさそうだが。
だが、奴等の会話の内容で大体の状況は把握した。こいつは魔王軍、恐らくエイシャと同じ十死怪の一人。つまり自分達の敵。パッと見た感じは人の顔に見えたが、よく見ると笑った時に牙が生えているのが見えたし、目もちょっと猫っぽく瞳孔が細い。
それはさておき、マズイ状況になってしまった。まさかここに来て援軍が来るなんて。エイシャ一人ならまだしも、こいつの実力が未知数すぎて迂闊に手を出せない。流石に無理だ。クソ、どうにかして逃げなければ。
「なんかグランドのジジイも殺《や》られたみたいだし、魔王様的にもこれ以上戦力を失うわけにはいかないとの判断なんだろう」
「『…ダークボルト。さては貴様、勇者と殺《や》り合うつもりか? よく考えてみたらおかしな話だ。孤独を好む貴様が手助けなど考え得る訳がない』」
「信頼されてねーな俺って」
「…」
幸いな事に、ダークボルトはこっちを全く気にしていない。寧ろ自分達の存在を認識出来ているかも怪しいぐらい一度たりともこっちを見ない。エイシャとの会話に夢中になっているからか? なんにせよ、逃げるなら今のうちか。
「ミオ、しっかり俺の背中に捕まっとけ」
「えっ? う、うん」
ミオの耳元でボソリと自分の背中に乗るよう促した。未だに状況をよく理解出来ていないようだが、自分の指示に素直に従い、自分の背中にゆっくりと担がれる。まだ気づかれていない様子。あとはどう逃げるか。
「『ふん。日頃の行いが悪いから信用などされんのだ』」
「んだよ。なんかおめーに悪い事でもしたのかよ? いつ? どこで? なにを?」
「…」
後ろをチラッと振り返ると、自分達の乗っていた魔導馬が馬車の近くに居るが、あそこまで走って乗って走らせるまでにタイムロスが発生する。ここは全力の脱兎跳躍で逃げた方が早いか。
「『そんなしょうもない話を貴様とするつもりは…』」
「ッ!?」
奴等が下らない会話を続けている間に、自分は背を向け脱兎跳躍を使用。そのまま野原を全力で駆け抜けた。
「『ッ!? しまった?!』」
「んっ?」
駆け抜けた瞬間、エイシャがようやくこちらに気づいたようだが、一瞬でその場から数十メートル離れる事に成功。
「…皆、ごめん!」
その際、皆の死体を横切った。一瞬皆の死体を横目に見ながら自分は謝罪の言葉を述べ、走り過ぎていく。皆を安らかに眠らせきれない罪悪感はあったが、今は命が優先。そう自分に言い聞かせながら無我夢中で走った。
「…ほおぉぉぉお?」
二メートルは優に超える長身。滅茶苦茶逆立った金髪も相まって、三メートルいっててもおかしくなさそうだ。黒い鎧で全身を覆い、赤い槍を持っている。男の背丈と同じぐらいの長さの槍を片手で軽々と握っている。細腕なのにとてつもない腕力。こんな奴、村には居なかった。
「折角来てやったのに、なにやってんだよお前?」
「『だ、ダークボルト、貴様、一体何しに来た?』」
「おいおいおぉぉい、なんだよその言い方ぁ。助けに来てやったんだろぉ?」
「『き、貴様に助けを乞いたつもりは、ないぞ!?』」
「ばあぁか。お前が魔王様に援軍を送ってくれって言ったんだろぉ?!」
「『わ、私は魔王様に助言を貰いに行っただけで、援軍を頼んだつもりはない!?』」
「けど、もう来ちまったし。んだっはっはっはっはっ!」
「『貴様、まさか盗み聞きを…』」
「勘違いするなよ? ちゃんと魔王様から許可は貰ってある」
「『くっ!?』」
「…」
ダークボルトと呼ばれている男は、エイシャと親しそうに話し合っていた。といっても、エイシャの方は屈辱そうな素振りを見せている所から察するに、あまり良好的な関係ではなさそうだが。
だが、奴等の会話の内容で大体の状況は把握した。こいつは魔王軍、恐らくエイシャと同じ十死怪の一人。つまり自分達の敵。パッと見た感じは人の顔に見えたが、よく見ると笑った時に牙が生えているのが見えたし、目もちょっと猫っぽく瞳孔が細い。
それはさておき、マズイ状況になってしまった。まさかここに来て援軍が来るなんて。エイシャ一人ならまだしも、こいつの実力が未知数すぎて迂闊に手を出せない。流石に無理だ。クソ、どうにかして逃げなければ。
「なんかグランドのジジイも殺《や》られたみたいだし、魔王様的にもこれ以上戦力を失うわけにはいかないとの判断なんだろう」
「『…ダークボルト。さては貴様、勇者と殺《や》り合うつもりか? よく考えてみたらおかしな話だ。孤独を好む貴様が手助けなど考え得る訳がない』」
「信頼されてねーな俺って」
「…」
幸いな事に、ダークボルトはこっちを全く気にしていない。寧ろ自分達の存在を認識出来ているかも怪しいぐらい一度たりともこっちを見ない。エイシャとの会話に夢中になっているからか? なんにせよ、逃げるなら今のうちか。
「ミオ、しっかり俺の背中に捕まっとけ」
「えっ? う、うん」
ミオの耳元でボソリと自分の背中に乗るよう促した。未だに状況をよく理解出来ていないようだが、自分の指示に素直に従い、自分の背中にゆっくりと担がれる。まだ気づかれていない様子。あとはどう逃げるか。
「『ふん。日頃の行いが悪いから信用などされんのだ』」
「んだよ。なんかおめーに悪い事でもしたのかよ? いつ? どこで? なにを?」
「…」
後ろをチラッと振り返ると、自分達の乗っていた魔導馬が馬車の近くに居るが、あそこまで走って乗って走らせるまでにタイムロスが発生する。ここは全力の脱兎跳躍で逃げた方が早いか。
「『そんなしょうもない話を貴様とするつもりは…』」
「ッ!?」
奴等が下らない会話を続けている間に、自分は背を向け脱兎跳躍を使用。そのまま野原を全力で駆け抜けた。
「『ッ!? しまった?!』」
「んっ?」
駆け抜けた瞬間、エイシャがようやくこちらに気づいたようだが、一瞬でその場から数十メートル離れる事に成功。
「…皆、ごめん!」
その際、皆の死体を横切った。一瞬皆の死体を横目に見ながら自分は謝罪の言葉を述べ、走り過ぎていく。皆を安らかに眠らせきれない罪悪感はあったが、今は命が優先。そう自分に言い聞かせながら無我夢中で走った。
「…ほおぉぉぉお?」
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