61 / 186
第3章 逆襲編
第3章ー⑬
しおりを挟む
自分達の横に立っているのに、全く気付かなかった。いつから居た? 敵なのか味方なのか? そもそもこいつは誰なんだ? ようやく頭が冷静さを取り戻したというのに、この男の介入でまた頭が混乱し始めた。
二メートルは優に超える長身。滅茶苦茶逆立った金髪も相まって、三メートルいっててもおかしくなさそうだ。黒い鎧で全身を覆い、赤い槍を持っている。男の背丈と同じぐらいの長さの槍を片手で軽々と握っている。細腕なのにとてつもない腕力。こんな奴、村には居なかった。
「折角来てやったのに、なにやってんだよお前?」
「『だ、ダークボルト、貴様、一体何しに来た?』」
「おいおいおぉぉい、なんだよその言い方ぁ。助けに来てやったんだろぉ?」
「『き、貴様に助けを乞いたつもりは、ないぞ!?』」
「ばあぁか。お前が魔王様に援軍を送ってくれって言ったんだろぉ?!」
「『わ、私は魔王様に助言を貰いに行っただけで、援軍を頼んだつもりはない!?』」
「けど、もう来ちまったし。んだっはっはっはっはっ!」
「『貴様、まさか盗み聞きを…』」
「勘違いするなよ? ちゃんと魔王様から許可は貰ってある」
「『くっ!?』」
「…」
ダークボルトと呼ばれている男は、エイシャと親しそうに話し合っていた。といっても、エイシャの方は屈辱そうな素振りを見せている所から察するに、あまり良好的な関係ではなさそうだが。
だが、奴等の会話の内容で大体の状況は把握した。こいつは魔王軍、恐らくエイシャと同じ十死怪の一人。つまり自分達の敵。パッと見た感じは人の顔に見えたが、よく見ると笑った時に牙が生えているのが見えたし、目もちょっと猫っぽく瞳孔が細い。
それはさておき、マズイ状況になってしまった。まさかここに来て援軍が来るなんて。エイシャ一人ならまだしも、こいつの実力が未知数すぎて迂闊に手を出せない。流石に無理だ。クソ、どうにかして逃げなければ。
「なんかグランドのジジイも殺《や》られたみたいだし、魔王様的にもこれ以上戦力を失うわけにはいかないとの判断なんだろう」
「『…ダークボルト。さては貴様、勇者と殺《や》り合うつもりか? よく考えてみたらおかしな話だ。孤独を好む貴様が手助けなど考え得る訳がない』」
「信頼されてねーな俺って」
「…」
幸いな事に、ダークボルトはこっちを全く気にしていない。寧ろ自分達の存在を認識出来ているかも怪しいぐらい一度たりともこっちを見ない。エイシャとの会話に夢中になっているからか? なんにせよ、逃げるなら今のうちか。
「ミオ、しっかり俺の背中に捕まっとけ」
「えっ? う、うん」
ミオの耳元でボソリと自分の背中に乗るよう促した。未だに状況をよく理解出来ていないようだが、自分の指示に素直に従い、自分の背中にゆっくりと担がれる。まだ気づかれていない様子。あとはどう逃げるか。
「『ふん。日頃の行いが悪いから信用などされんのだ』」
「んだよ。なんかおめーに悪い事でもしたのかよ? いつ? どこで? なにを?」
「…」
後ろをチラッと振り返ると、自分達の乗っていた魔導馬が馬車の近くに居るが、あそこまで走って乗って走らせるまでにタイムロスが発生する。ここは全力の脱兎跳躍で逃げた方が早いか。
「『そんなしょうもない話を貴様とするつもりは…』」
「ッ!?」
奴等が下らない会話を続けている間に、自分は背を向け脱兎跳躍を使用。そのまま野原を全力で駆け抜けた。
「『ッ!? しまった?!』」
「んっ?」
駆け抜けた瞬間、エイシャがようやくこちらに気づいたようだが、一瞬でその場から数十メートル離れる事に成功。
「…皆、ごめん!」
その際、皆の死体を横切った。一瞬皆の死体を横目に見ながら自分は謝罪の言葉を述べ、走り過ぎていく。皆を安らかに眠らせきれない罪悪感はあったが、今は命が優先。そう自分に言い聞かせながら無我夢中で走った。
「…ほおぉぉぉお?」
二メートルは優に超える長身。滅茶苦茶逆立った金髪も相まって、三メートルいっててもおかしくなさそうだ。黒い鎧で全身を覆い、赤い槍を持っている。男の背丈と同じぐらいの長さの槍を片手で軽々と握っている。細腕なのにとてつもない腕力。こんな奴、村には居なかった。
「折角来てやったのに、なにやってんだよお前?」
「『だ、ダークボルト、貴様、一体何しに来た?』」
「おいおいおぉぉい、なんだよその言い方ぁ。助けに来てやったんだろぉ?」
「『き、貴様に助けを乞いたつもりは、ないぞ!?』」
「ばあぁか。お前が魔王様に援軍を送ってくれって言ったんだろぉ?!」
「『わ、私は魔王様に助言を貰いに行っただけで、援軍を頼んだつもりはない!?』」
「けど、もう来ちまったし。んだっはっはっはっはっ!」
「『貴様、まさか盗み聞きを…』」
「勘違いするなよ? ちゃんと魔王様から許可は貰ってある」
「『くっ!?』」
「…」
ダークボルトと呼ばれている男は、エイシャと親しそうに話し合っていた。といっても、エイシャの方は屈辱そうな素振りを見せている所から察するに、あまり良好的な関係ではなさそうだが。
だが、奴等の会話の内容で大体の状況は把握した。こいつは魔王軍、恐らくエイシャと同じ十死怪の一人。つまり自分達の敵。パッと見た感じは人の顔に見えたが、よく見ると笑った時に牙が生えているのが見えたし、目もちょっと猫っぽく瞳孔が細い。
それはさておき、マズイ状況になってしまった。まさかここに来て援軍が来るなんて。エイシャ一人ならまだしも、こいつの実力が未知数すぎて迂闊に手を出せない。流石に無理だ。クソ、どうにかして逃げなければ。
「なんかグランドのジジイも殺《や》られたみたいだし、魔王様的にもこれ以上戦力を失うわけにはいかないとの判断なんだろう」
「『…ダークボルト。さては貴様、勇者と殺《や》り合うつもりか? よく考えてみたらおかしな話だ。孤独を好む貴様が手助けなど考え得る訳がない』」
「信頼されてねーな俺って」
「…」
幸いな事に、ダークボルトはこっちを全く気にしていない。寧ろ自分達の存在を認識出来ているかも怪しいぐらい一度たりともこっちを見ない。エイシャとの会話に夢中になっているからか? なんにせよ、逃げるなら今のうちか。
「ミオ、しっかり俺の背中に捕まっとけ」
「えっ? う、うん」
ミオの耳元でボソリと自分の背中に乗るよう促した。未だに状況をよく理解出来ていないようだが、自分の指示に素直に従い、自分の背中にゆっくりと担がれる。まだ気づかれていない様子。あとはどう逃げるか。
「『ふん。日頃の行いが悪いから信用などされんのだ』」
「んだよ。なんかおめーに悪い事でもしたのかよ? いつ? どこで? なにを?」
「…」
後ろをチラッと振り返ると、自分達の乗っていた魔導馬が馬車の近くに居るが、あそこまで走って乗って走らせるまでにタイムロスが発生する。ここは全力の脱兎跳躍で逃げた方が早いか。
「『そんなしょうもない話を貴様とするつもりは…』」
「ッ!?」
奴等が下らない会話を続けている間に、自分は背を向け脱兎跳躍を使用。そのまま野原を全力で駆け抜けた。
「『ッ!? しまった?!』」
「んっ?」
駆け抜けた瞬間、エイシャがようやくこちらに気づいたようだが、一瞬でその場から数十メートル離れる事に成功。
「…皆、ごめん!」
その際、皆の死体を横切った。一瞬皆の死体を横目に見ながら自分は謝罪の言葉を述べ、走り過ぎていく。皆を安らかに眠らせきれない罪悪感はあったが、今は命が優先。そう自分に言い聞かせながら無我夢中で走った。
「…ほおぉぉぉお?」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説


Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※


特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気が付くと見知らぬ部屋にいた。
最初は、何が起こっているのか、状況を把握する事が出来なかった。
でも、鏡に映った自分の姿を見た時、この世界で生きてきた、リュカとしての記憶を思い出した。
記憶を思い出したはいいが、状況はよくなかった。なぜなら、貴族では失敗した人がいない、召喚の儀を失敗してしまった後だったからだ!
貴族としては、落ちこぼれの烙印を押されても、5歳の子供をいきなり屋敷の外に追い出したりしないだろう。しかも、両親共に、過保護だからそこは大丈夫だと思う……。
でも、両親を独占して甘やかされて、勉強もさぼる事が多かったため、兄様との関係はいいとは言えない!!
このままでは、兄様が家督を継いだ後、屋敷から追い出されるかもしれない!
何とか兄様との関係を改善して、追い出されないよう、追い出されてもいいように勉強して力を付けるしかない!
だけど、勉強さぼっていたせいで、一般常識さえも知らない事が多かった……。
それに、勉強と兄様との関係修復を目指して頑張っても、兄様との距離がなかなか縮まらない!!
それでも、今日も関係修復頑張ります!!
5/9から小説になろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる