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第3章 逆襲編
第3章ー⑪
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全力で放った火球は、光球の倍近い大きさまで膨れ上がっていた。目くらましも効いているようだし、これだけの大きさなら当てられる。
「はああぁっ!!」
光球の消滅するタイミングで火球を振り下ろした。地上に着弾するまでわずか数秒。向こうは目くらましで状況を把握しきれてない筈。その間に着弾すればいくら奴とはいえタダではすむまい。
「『うっ、うぅっ…』」
着弾までおよそ3秒。奴はまだ動く気配がない。もう逃げられまい。
「『くっ、そぉぉぉぉぉっ?!』」
火球は見事にエイシャに向かって着弾。着弾すると、地上から激しい爆発音と共に物凄い爆風が吹き上がり、あまりの勢いで自分達の身体が少しだけ上昇した。
「ぐっ!?」
熱い爆風が目に入り、思わず涙が出て目を瞑ってしまった。あぶねー。今回は涙が出る程度で済んだが、もう少し近い距離で撃ってたら爆風で自分達ごと燃やしてしまったかもしれない。それほどまでに熱い。
「ミオ!」
「う、うん!」
爆風が収まり、地上まで十メートルもないタイミングでミオに合図を送り、再び風魔法を覆わせた。さっきは浮上する為に使ったが、今回は降下速度を減速させる為である。そのまま地上に着地したら流石に二人ともぐしゃっと逝ってしまうからな。
「ふう」
ミオの風魔法でゆっくりと下降し、優しく着地。無事に地上に降りる事が出来た。といっても、その前に多少の怪我はしているけどな。
「や、やったのかな?」
「さあ、う゛っ?!」
「サダメ?!」
奴の姿が見えず少しだけ安堵するが、急に両手に激痛が走る。何が起きたのかと思い、慌てて手のひらを見ると、手のひらの皮が両方ともズル剥けていた。全力で魔法を撃ったせいか。風に当たるとヒリヒリして痛い。この程度だけで済んだのは幸いなことだとは思うが。
「今治すね」
「ああ、悪ぃ」
それを見たミオが、慌てて治癒魔法を使ってくれた。本当に何から何までミオに世話になりっぱなしだな、俺。
「そういえば、皆は?」
「えっ?」
治癒を施して貰いながらミオに問いかける。あれだけ派手な魔法を使ったんだ。近くに居た皆の死体がどこかに吹き飛んでしまったのではないかと不安になる。皆には悪い事をしてしまったとは思っている。ただ、奴相手にそこまで気にする余裕がなかった。
「あっ、あそこ!」
「ッ!?」
ミオが辺りを見渡すと、目の前の方向を指さす。そこに視線を移すと、少し離れた場所に馬車の残骸があった。そこに皆の死体が密集している。あれだけ爆風も凄かったにも関わらず、あまり飛ばされてはいなかった。これも不幸中の幸いというべきか。
「はあ、よかった。皆まで巻き添えにしてたら申し訳が立たんな」
皆を助けられなかったが、せめて自分の手でちゃんと埋葬してあげたい。それが自分なりのせめてもの償いである。だから、皆の死体が奇跡的に残っている事にホッとしていた。
「『…うっ、う゛う゛っ』」
「…!?」
ホッとしたのも束の間、誰かの呻き声が聞こえてきた。まだ誰か生きていた? そう思いたかったが違う。この声は…
「はあ…はあ…ぅっそだろ?」
嫌な予感がした瞬間、背筋が凍り突然呼吸が乱れ始めた。息を荒くしながら恐る恐る後ろを振り返る。火球により地面が大きく抉られている。そこのど真ん中の場所から薄っすらと人型の影が現れた。
「はああぁっ!!」
光球の消滅するタイミングで火球を振り下ろした。地上に着弾するまでわずか数秒。向こうは目くらましで状況を把握しきれてない筈。その間に着弾すればいくら奴とはいえタダではすむまい。
「『うっ、うぅっ…』」
着弾までおよそ3秒。奴はまだ動く気配がない。もう逃げられまい。
「『くっ、そぉぉぉぉぉっ?!』」
火球は見事にエイシャに向かって着弾。着弾すると、地上から激しい爆発音と共に物凄い爆風が吹き上がり、あまりの勢いで自分達の身体が少しだけ上昇した。
「ぐっ!?」
熱い爆風が目に入り、思わず涙が出て目を瞑ってしまった。あぶねー。今回は涙が出る程度で済んだが、もう少し近い距離で撃ってたら爆風で自分達ごと燃やしてしまったかもしれない。それほどまでに熱い。
「ミオ!」
「う、うん!」
爆風が収まり、地上まで十メートルもないタイミングでミオに合図を送り、再び風魔法を覆わせた。さっきは浮上する為に使ったが、今回は降下速度を減速させる為である。そのまま地上に着地したら流石に二人ともぐしゃっと逝ってしまうからな。
「ふう」
ミオの風魔法でゆっくりと下降し、優しく着地。無事に地上に降りる事が出来た。といっても、その前に多少の怪我はしているけどな。
「や、やったのかな?」
「さあ、う゛っ?!」
「サダメ?!」
奴の姿が見えず少しだけ安堵するが、急に両手に激痛が走る。何が起きたのかと思い、慌てて手のひらを見ると、手のひらの皮が両方ともズル剥けていた。全力で魔法を撃ったせいか。風に当たるとヒリヒリして痛い。この程度だけで済んだのは幸いなことだとは思うが。
「今治すね」
「ああ、悪ぃ」
それを見たミオが、慌てて治癒魔法を使ってくれた。本当に何から何までミオに世話になりっぱなしだな、俺。
「そういえば、皆は?」
「えっ?」
治癒を施して貰いながらミオに問いかける。あれだけ派手な魔法を使ったんだ。近くに居た皆の死体がどこかに吹き飛んでしまったのではないかと不安になる。皆には悪い事をしてしまったとは思っている。ただ、奴相手にそこまで気にする余裕がなかった。
「あっ、あそこ!」
「ッ!?」
ミオが辺りを見渡すと、目の前の方向を指さす。そこに視線を移すと、少し離れた場所に馬車の残骸があった。そこに皆の死体が密集している。あれだけ爆風も凄かったにも関わらず、あまり飛ばされてはいなかった。これも不幸中の幸いというべきか。
「はあ、よかった。皆まで巻き添えにしてたら申し訳が立たんな」
皆を助けられなかったが、せめて自分の手でちゃんと埋葬してあげたい。それが自分なりのせめてもの償いである。だから、皆の死体が奇跡的に残っている事にホッとしていた。
「『…うっ、う゛う゛っ』」
「…!?」
ホッとしたのも束の間、誰かの呻き声が聞こえてきた。まだ誰か生きていた? そう思いたかったが違う。この声は…
「はあ…はあ…ぅっそだろ?」
嫌な予感がした瞬間、背筋が凍り突然呼吸が乱れ始めた。息を荒くしながら恐る恐る後ろを振り返る。火球により地面が大きく抉られている。そこのど真ん中の場所から薄っすらと人型の影が現れた。
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