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第3章 逆襲編
第3章ー⑨
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「『作戦会議は終わりましたか?』」
自分がミオに策を伝え終えると、エイシャはいつでも魔法を撃てるような状態で待機していた。随分と余裕そうだ。まあ、実力だけでいえば向こうが何倍も上であるのは明白。奴からすれば自分達は逃げ回る兎程度にしか思ってないのだろう。だが、それぐらい舐めて掛かってくれてる方がこっちにとっては都合がいい。見せてやるよ、兎の力を。
「いくぞ、ミオ!」
「うん!」
自分が背後に抱き着いているミオに合図を送る。合図と共にミオは自分達を覆う程の風を生み出す。相当集中しているのか、抱き着く力が強くなっていて若干苦しい気がするが、今は気にしている場合ではない。
「『黒影《ダーシャ》…』」
「はあっ!!」
などと心の中で言っていると、エイシャが攻撃魔法を放とうとしている。それを見て自分は、いつもより脚に魔力を込め、脱兎跳躍《ラジャスト》で真上に思いっきり跳ぶ。
「ううぅっ!!」
真上に跳んだ後、ミオの風魔法が勢いよく吹き荒れ、自分達を空高く浮上させた。思ってた以上に速度が速く、空気抵抗を激しく受けている。
「『多槍《メニスピア》!』」
「ッ!?」
そんな自分達に向かって攻撃魔法を放つエイシャだったが、野郎、自身の前からだけではなく、自分達の背後にもあの黒い槍を潜ませていやがった。こればかりは想定外。タイミングが遅れてたら二人とも背中から串刺しにされる所だった。
「『なるほど。上に逃げましたか』」
奴の影魔法は基本的に地面から発動している事が多い。故に奴は今みたいな不意打ちを多用する傾向がある。しかも厄介な事に地面に潜っている間は魔力感知が通じない為、視認するか奴の行動を先読みしなければ対処が困難。恐らく父はそれで対処していたのだろうが、自分にはそこまでの技量なんてない。
だが、対処する方法はそれだけではない。空中に逃げれば初速度で攻撃を受けることはない。見てからでも対処が可能になる。
「『しかし、上に逃げた所でこの数を避けきれますかね?』」
「くっ!」
とはいえ、問題はここから。対処しやすくなっても無数の黒い槍が自分達目掛けてどこまでも追いかけてくる。距離の制限はないのか? それともまだ射程範囲内なのか? 軽く10階建てのビルぐらいの高さは飛んでいるはずだが。
奴の攻撃の範囲外まで逃げるとなると色々リスクを伴う。そもそも射程範囲がわからないのもあるが、上に逃げれば逃げる程酸素が薄くなってくる。流石にそこまで逃げるのは不可能だ。ただでさえ夜の空気が冷たく感じてきてるのに、これ以上上に逃げたら凍死してしまう。その前にこの状況を打破しなければ。
「業火の炎よ。鉄より硬き剣《つるぎ》となり、我が元に顕現せよ、【業火剣《ヘルファード》】」
とにかく一旦気持ちを落ち着かせ詠唱を唱える。火球だけでは対処しきれないと判断し業火剣を選択。これで奴の攻撃を捌く。
「ミオ、解除!」
「う、うん!」
上昇してから数十秒。ミオに次の指示を出すと、先程まで自分達を飛ばしていた風魔法を解除させる。解除すると、自分達を覆っていた風があっという間に消え、その余韻で一瞬だけフワッとした後に下降。
「…ふぅ」
下降する最中、自分は一呼吸して無数の黒い槍に視線を集中させる。ここまではミオに任せっきりだったが、ここからは自分の番。黒い槍を空中で捌きながら奴に一撃を与える。一瞬たりとも油断出来ないなか、黒い槍が自分達に向かって来ていた。
自分がミオに策を伝え終えると、エイシャはいつでも魔法を撃てるような状態で待機していた。随分と余裕そうだ。まあ、実力だけでいえば向こうが何倍も上であるのは明白。奴からすれば自分達は逃げ回る兎程度にしか思ってないのだろう。だが、それぐらい舐めて掛かってくれてる方がこっちにとっては都合がいい。見せてやるよ、兎の力を。
「いくぞ、ミオ!」
「うん!」
自分が背後に抱き着いているミオに合図を送る。合図と共にミオは自分達を覆う程の風を生み出す。相当集中しているのか、抱き着く力が強くなっていて若干苦しい気がするが、今は気にしている場合ではない。
「『黒影《ダーシャ》…』」
「はあっ!!」
などと心の中で言っていると、エイシャが攻撃魔法を放とうとしている。それを見て自分は、いつもより脚に魔力を込め、脱兎跳躍《ラジャスト》で真上に思いっきり跳ぶ。
「ううぅっ!!」
真上に跳んだ後、ミオの風魔法が勢いよく吹き荒れ、自分達を空高く浮上させた。思ってた以上に速度が速く、空気抵抗を激しく受けている。
「『多槍《メニスピア》!』」
「ッ!?」
そんな自分達に向かって攻撃魔法を放つエイシャだったが、野郎、自身の前からだけではなく、自分達の背後にもあの黒い槍を潜ませていやがった。こればかりは想定外。タイミングが遅れてたら二人とも背中から串刺しにされる所だった。
「『なるほど。上に逃げましたか』」
奴の影魔法は基本的に地面から発動している事が多い。故に奴は今みたいな不意打ちを多用する傾向がある。しかも厄介な事に地面に潜っている間は魔力感知が通じない為、視認するか奴の行動を先読みしなければ対処が困難。恐らく父はそれで対処していたのだろうが、自分にはそこまでの技量なんてない。
だが、対処する方法はそれだけではない。空中に逃げれば初速度で攻撃を受けることはない。見てからでも対処が可能になる。
「『しかし、上に逃げた所でこの数を避けきれますかね?』」
「くっ!」
とはいえ、問題はここから。対処しやすくなっても無数の黒い槍が自分達目掛けてどこまでも追いかけてくる。距離の制限はないのか? それともまだ射程範囲内なのか? 軽く10階建てのビルぐらいの高さは飛んでいるはずだが。
奴の攻撃の範囲外まで逃げるとなると色々リスクを伴う。そもそも射程範囲がわからないのもあるが、上に逃げれば逃げる程酸素が薄くなってくる。流石にそこまで逃げるのは不可能だ。ただでさえ夜の空気が冷たく感じてきてるのに、これ以上上に逃げたら凍死してしまう。その前にこの状況を打破しなければ。
「業火の炎よ。鉄より硬き剣《つるぎ》となり、我が元に顕現せよ、【業火剣《ヘルファード》】」
とにかく一旦気持ちを落ち着かせ詠唱を唱える。火球だけでは対処しきれないと判断し業火剣を選択。これで奴の攻撃を捌く。
「ミオ、解除!」
「う、うん!」
上昇してから数十秒。ミオに次の指示を出すと、先程まで自分達を飛ばしていた風魔法を解除させる。解除すると、自分達を覆っていた風があっという間に消え、その余韻で一瞬だけフワッとした後に下降。
「…ふぅ」
下降する最中、自分は一呼吸して無数の黒い槍に視線を集中させる。ここまではミオに任せっきりだったが、ここからは自分の番。黒い槍を空中で捌きながら奴に一撃を与える。一瞬たりとも油断出来ないなか、黒い槍が自分達に向かって来ていた。
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