転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第2章 脱出編

第2章ー㉒

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 「…」

 嵐をイメージしていみてるけど、風が激しく動くだけで中々上手くいかない。私の魔力が足りないのか、それともちゃんとイメージしきれていないのか、その両方?

 「はあ…はあ…」

 風魔法の影響で近くにある木箱と魔造種が散乱してる。そのせいか倉庫内の魔力の流れがかなり不規則な動きになり、たまにくる大きい魔力にぶつかって魔力酔いしそうになる。酔い止めの効果時間もそろそろ切れてきそうだし、早くなんとかしないと。

 「けど、どうやったら大きい風出せるんだろ?」

 私が出せるのはせいぜい大きめのボールサイズ。その程度じゃこの倉庫を壊すことが出来ない。せめてもっと大きく出来たらいいのに。

 「んんー!」

 大きい風、今度はとにかく大きい風をイメージしてやってみる。いきなり嵐は欲張りすぎたのかもしれない。せめて倉庫内の木箱を全て吹き飛ばすぐらいの勢いは欲しい。集中集中。

 「んっ、んーーーーー!!」

 手に汗を搔くぐらい集中しているはずなんだけど、まだまだ上手くいかない。これでもダメなの? やっぱり私の魔力が…

 「ダメ! 絶対あきらめないんだから!!」

 足りないなんて言い訳を押し殺し、必死に風を作る。魔力が足りないわけじゃない。治療魔法と風魔法を扱えるんだ。少ないわけがない。

 イメージをもっと明確化すればいけるかも。私を中心にして吹き荒れる小さな竜巻のような風をイメージしてみる。

 「はっああああああああああ!!!」

 私を中心に。風は私の手のひらから離れ、私の身を守るように吹いている。その風をもっと荒々しく。

 「ぁああああああああああ!!!!」

 目を閉じていても、風が荒々しく吹き荒れているのが音でわかる。いい調子。この調子でもっと大きく。

 「っっうっりゃああああああああああ!!!!!」

 木箱が激しくぶつったり、なにかが軋む音が段々聞こえてきた。もう少し、きっともう少しで…

 「はあああああああああっ!!!!!!」

 イケると思った瞬間、ふと目が開いた。最初に目に入ったのは床と自分の手。自分の手からは風がなくなっていて、手汗でぐっしょりになっていた。

 「…」

 倉庫がどうなったのはまだわからなくて、恐る恐る顔を上げた。ここまでやって壊れていなかったら最悪ね。

 「っ?!」

 そんな不安が少し過りながら顔を上げると、そこには私の想像以上の光景が広がっていた。

 「…ウソ…」

 思わず唖然としていた。いや、イメージ通りではあるんだけど、まさかここまで出来てしまうとは正直思っていなかった。

 気が付けば私が居た倉庫は跡形もなくなり、私を中心として小さな竜巻が吹き荒れていた。
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