37 / 185
第2章 脱出編
第2章ー⑯
しおりを挟む
「おい、ガキどもがいねーぞ!?」
「あのクソガキども、どこに行きやがった!?」
状況を一度確認する為、建物の影に隠れながら聞き耳を立てていた。やはり自分達が居なくなったことは把握している様子。いつも様子見に来ることなんてなかったのに。本当に殺しにくるつもりだったのかもしれないな。
「さて、こっからどうするか」
隠れながらどうやって奴等を引き付けるかを考えていた。無難にわざと見つかって逃げるという手もあるが、ここには魔物が30人以上はいる。先回りされて囲まれるリスクが高い。出来れば何人か戦闘不能にしておきたい。ステルスゲーみたいに一人ずつ誘って落とすか? CQCは流石に学んでいないが、手刀で首をスパンッと出来たりしないものだろうか。
「…いや、そんなことするぐらいなら、こっちの方が手っ取り早いか」
しかし、やったこともないことを実践で出来るわけがない。そう思った自分は、ここに来る前に出しておいた業火剣《ヘルファード》を見つめる。敵を気絶させるより、この剣で斬った方が早い。
「ガキどもを探せ! 見つけ次第殺してもかまわん!」
「ッ!?」
そんなことを考えていると、魔物達が自分達の捜索に動こうとしていた。マズい。散り散りに動かれるのは余計にマズい。
他の皆には外回りで目的地に向かってもらう予定だ。とはいえ、あちこち探し回られればいずれ見つかってしまう。そうなれば作戦どころではなくなる。どうする。やはり自分からわざと見つかりに…
「クッソ! めんどくせーことになりやがった」
「ッ?!」
いこうかと動こうとした瞬間、自分を監禁していたあいつがこっちに向かって来ているのが見え、思わず隠れてしまった。流石に見られてはいないだろうが、一瞬心臓がドキッとさせられた。
「はあ…はあ…」
ドキッとさせられたせいか、息が少し荒くなってきた。落ち着け、一旦落ち着くんだ。
「…んっ、はあっ、はあっ」
落ち着こうと思えば思う程、心臓の動きが早くなってきた。ダメだ、こんな状況じゃ作戦どころじゃなくなる。
「んん?」
そんな状況のなか、奴はこっちに徐々に近づいてきている。なんだかこっちの様子を伺うような足取りで歩み寄ってきている気がする。ひょっとしたら今の声聞かれたか。
「…」
息を必死に殺そうとするが、必死になるあまり思考が回らなくなってきた。奴が段々近づいてくる。距離は約10メートル程。このタイミングで見つかりにいくのは流石にリスクが高すぎる。もういっそのこと…
「…んっ」
殺すか。その考えに至った頃には、足音はすぐそこまで迫っていた。剣を握っていた手から汗が噴き出してきた。
「…」
奴の姿が目の前に映った瞬間、頭の中が真っ白になり、気が付くと奴の心臓めがけ、剣を突き刺そうとしていた。
「ん?」
しかし、その判断は早計であると、その瞬間に思った。今自分は不思議な感覚に陥っている。自分の動きと相手の動きがゆっくりに感じる。まるでスロー映像を体験しているかの如く。にも関わらず、思考速度は普通の速度である。妙な感覚だ。
だが、いくら思考速度が普通の速度で身体がゆっくり動いても、一度動いた身体を引き戻すことは出来なかった。
「ぐへっ?!」
「ッ?!」
不思議な感覚を数秒すぎると、突然スローだった身体は時が戻るように普通に動き出した。動き出したものの、奴に向かって突き刺そうとしていた剣は僅かに位置がズレ、奴の目の前の虚空を突き刺していた。その拍子に自分は転んでしまった。
「いっ、てて」
勢いが少々強く、転ぶ際に軽く肘を打った。地味に痛くて、若干痺れがきて剣を放してしまった。最悪だ。こんなしょうもないミスを犯してしまうとは。自分は刺しに行ったつもりだったが、なんで虚空なんか…
「おい!」
「ッ?!」
などと考えていると、ドスの効いた声でこっちに呼びかけてくる。その瞬間、背筋がゾッとした。ヤバいと本能が言い聞かせてくるほどに。
「てめえがどうやってあそこから抜け出したのかはこの際どうでもいい」
「…」
「それより、今何をしようとした?」
「…」
ドスの効いた声で問いかけてくるが、背筋がゾクゾクしていてそれどころではなかった。普段おちょくるような高笑いがない。そのギャップが余計に恐怖を掻き立てている。
「言わなくてもわかる。俺を殺そうとしてたんだろ」
「…」
なんで剣が虚空に向かっていったのか、今ならなんとなくわかって気がした。気圧されたんだ。奴…というより、魔物の恐ろしさに。
「人間のクソガキ風情がいい度胸じゃねーか」
自分が浅はかであったと思い知らされた。漫画やアニメの世界では魔物を殺せるのは普通であった。この世界だってそうだ。父だって何度か魔物を殺していた。だから、自分だってこの程度の魔物ぐらいなんとか出来ると思いあがっていた。
身体は正直だ。怖い相手に身が竦むなんて当たり前のこと。自分は魔物を殺した経験なんかない。そんな奴がいきなり魔物と戦えるわけがない。少し考えればわかることだ。
「俺を殺そうとしたってことは、てめえも殺される覚悟は出来てんだよなあああ?!」
「ッッ!?」
恐る恐る奴の顔を見る。奴の顔を見て改めて思い知らされた。魔物がどれだけ恐ろしい存在かということを。
「あのクソガキども、どこに行きやがった!?」
状況を一度確認する為、建物の影に隠れながら聞き耳を立てていた。やはり自分達が居なくなったことは把握している様子。いつも様子見に来ることなんてなかったのに。本当に殺しにくるつもりだったのかもしれないな。
「さて、こっからどうするか」
隠れながらどうやって奴等を引き付けるかを考えていた。無難にわざと見つかって逃げるという手もあるが、ここには魔物が30人以上はいる。先回りされて囲まれるリスクが高い。出来れば何人か戦闘不能にしておきたい。ステルスゲーみたいに一人ずつ誘って落とすか? CQCは流石に学んでいないが、手刀で首をスパンッと出来たりしないものだろうか。
「…いや、そんなことするぐらいなら、こっちの方が手っ取り早いか」
しかし、やったこともないことを実践で出来るわけがない。そう思った自分は、ここに来る前に出しておいた業火剣《ヘルファード》を見つめる。敵を気絶させるより、この剣で斬った方が早い。
「ガキどもを探せ! 見つけ次第殺してもかまわん!」
「ッ!?」
そんなことを考えていると、魔物達が自分達の捜索に動こうとしていた。マズい。散り散りに動かれるのは余計にマズい。
他の皆には外回りで目的地に向かってもらう予定だ。とはいえ、あちこち探し回られればいずれ見つかってしまう。そうなれば作戦どころではなくなる。どうする。やはり自分からわざと見つかりに…
「クッソ! めんどくせーことになりやがった」
「ッ?!」
いこうかと動こうとした瞬間、自分を監禁していたあいつがこっちに向かって来ているのが見え、思わず隠れてしまった。流石に見られてはいないだろうが、一瞬心臓がドキッとさせられた。
「はあ…はあ…」
ドキッとさせられたせいか、息が少し荒くなってきた。落ち着け、一旦落ち着くんだ。
「…んっ、はあっ、はあっ」
落ち着こうと思えば思う程、心臓の動きが早くなってきた。ダメだ、こんな状況じゃ作戦どころじゃなくなる。
「んん?」
そんな状況のなか、奴はこっちに徐々に近づいてきている。なんだかこっちの様子を伺うような足取りで歩み寄ってきている気がする。ひょっとしたら今の声聞かれたか。
「…」
息を必死に殺そうとするが、必死になるあまり思考が回らなくなってきた。奴が段々近づいてくる。距離は約10メートル程。このタイミングで見つかりにいくのは流石にリスクが高すぎる。もういっそのこと…
「…んっ」
殺すか。その考えに至った頃には、足音はすぐそこまで迫っていた。剣を握っていた手から汗が噴き出してきた。
「…」
奴の姿が目の前に映った瞬間、頭の中が真っ白になり、気が付くと奴の心臓めがけ、剣を突き刺そうとしていた。
「ん?」
しかし、その判断は早計であると、その瞬間に思った。今自分は不思議な感覚に陥っている。自分の動きと相手の動きがゆっくりに感じる。まるでスロー映像を体験しているかの如く。にも関わらず、思考速度は普通の速度である。妙な感覚だ。
だが、いくら思考速度が普通の速度で身体がゆっくり動いても、一度動いた身体を引き戻すことは出来なかった。
「ぐへっ?!」
「ッ?!」
不思議な感覚を数秒すぎると、突然スローだった身体は時が戻るように普通に動き出した。動き出したものの、奴に向かって突き刺そうとしていた剣は僅かに位置がズレ、奴の目の前の虚空を突き刺していた。その拍子に自分は転んでしまった。
「いっ、てて」
勢いが少々強く、転ぶ際に軽く肘を打った。地味に痛くて、若干痺れがきて剣を放してしまった。最悪だ。こんなしょうもないミスを犯してしまうとは。自分は刺しに行ったつもりだったが、なんで虚空なんか…
「おい!」
「ッ?!」
などと考えていると、ドスの効いた声でこっちに呼びかけてくる。その瞬間、背筋がゾッとした。ヤバいと本能が言い聞かせてくるほどに。
「てめえがどうやってあそこから抜け出したのかはこの際どうでもいい」
「…」
「それより、今何をしようとした?」
「…」
ドスの効いた声で問いかけてくるが、背筋がゾクゾクしていてそれどころではなかった。普段おちょくるような高笑いがない。そのギャップが余計に恐怖を掻き立てている。
「言わなくてもわかる。俺を殺そうとしてたんだろ」
「…」
なんで剣が虚空に向かっていったのか、今ならなんとなくわかって気がした。気圧されたんだ。奴…というより、魔物の恐ろしさに。
「人間のクソガキ風情がいい度胸じゃねーか」
自分が浅はかであったと思い知らされた。漫画やアニメの世界では魔物を殺せるのは普通であった。この世界だってそうだ。父だって何度か魔物を殺していた。だから、自分だってこの程度の魔物ぐらいなんとか出来ると思いあがっていた。
身体は正直だ。怖い相手に身が竦むなんて当たり前のこと。自分は魔物を殺した経験なんかない。そんな奴がいきなり魔物と戦えるわけがない。少し考えればわかることだ。
「俺を殺そうとしたってことは、てめえも殺される覚悟は出来てんだよなあああ?!」
「ッッ!?」
恐る恐る奴の顔を見る。奴の顔を見て改めて思い知らされた。魔物がどれだけ恐ろしい存在かということを。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界でもマイペースに行きます
りーさん
ファンタジー
とにかくマイペースな少年、舞田理央。
ある日、異世界に行ってみないかという神の誘いを受ける。
詳しく話を聞くと、自分は魔力(魔素)を吸収する体質で、異世界で魔力(魔素)が多くなりすぎているから、回収してほしいらしい。
いつかはのんびりと暮らしてみたいと思っていたし、そのついでなら、ということで了承した。
伯爵家の次男として目覚めた彼は、とにかくのんびりマイペースをモットーにいろいろ好き勝手しながら、異世界に旋風を巻き起こしたり巻き起こさなかったりするお話。
ーーーーーーーーーー
『手加減を教えてください!』とリンクしています。これだけでも、話は成立しますが、こちらも読んでいただけると、もっと深読みできると思います。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる