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第2章 脱出編
第2章ー⑭
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「えっ?」
「何? どういうこと?」
いきなりすぎるサダメの発言に皆困惑の顔をしている。かく言う私も困惑している。
「おい、ちょっと待てよ!?」
「ラエル?!」
皆が困惑の表情をうかべるなか、ラエルだけは怒った表情でサダメに歩み寄って来ていた。マズイ。また昨日みたいにケンカになっちゃう。
「突然帰って来たと思えば、訳のわかんねーこと言いやがっ、てっ!!」
「ぐっ!?」
「ッ?! ラエル、ダメ!?」
予想通りラエルはサダメの胸ぐらを掴んで問い詰める。私がまた止めようとするも、全然手を振りほどけない。折角サダメが帰って来てくれたのに、昨日みたいにケンカなんてしたら余計空気が悪くなって取返しのつかないことになっちゃう。サダメだって…
「ごめん」
「っ?!」
「言いたいことはわかる。けど、時間がないんだ。頼む、俺の言うことを聞いてくれないか?」
「…」
きっとされるがままになるのだと思ってた。しかし、今の彼の表情はとても穏やか。というより、真剣な眼差しをしている。昨日のサダメとはまるで別人だった。
「…ざけんなよ!?」
だけど、ラエルは納得のいっていない様子。そのせいか、胸ぐらを掴んでいる握力がさらに強まっている気がする。
「昨日死にたいとか言ってたやつが、今度は皆で村を出ようだあ?! ふざけんのも大概にしろよ?! てめえの自殺願望に皆を巻き込む気かよ?!」
「ちょ、ラエル!? 落ち着いて!!」
ラエルの怒りが収まらなくなってきた。自分より年下で、身体も一回りも二回りも違うサダメ相手にムキになり、怒声を浴びせたり身体を強く揺すり始めた。ダメ、これ以上ヒートアップすると殴り出してもおかしくない。そう思った私は必死に止めに入るけど、力でも言葉でも彼を止めることが出来ない。一体どうすれば…
「違う!」
「ッ?!」
そう考えていると、サダメは少し強めの口調で反論してきた。怒っているわけじゃない。にも関わらず、胸ぐらを掴んでいたラエルの腕から少しだけ力が抜けていた。
「この村は時期に捨てられる。この村を捨てるってことは俺達も用済みだ。奴等なら間違いなく俺達を皆殺しに来る」
「…」
「だから、その前にこの村から逃げよう! 死にに行く為じゃない! 生きる為に!!」
「ッ!?」
「サダメ…」
彼の言葉は皆の心に響いた…気がする。少なくとも私には響いていた。今の言葉はきっと心から出た本心だと思う。昨日まで死にたがっていた彼から出た本心。それが聞けて私は嬉しくなった。
「…けど…」
しかし、ラエルは戸惑っていた。さっきまで怒声を発していた彼の口調が少し弱くなっている。きっと、サダメの言葉を信じるべきかどうか悩んでいるのかもしれない。それに、この村から脱出するというのはものすごく難しいことだ。脱出する方法なんてほぼ無理。ラエルには年長者としての責任もあるだろうし、色々悩んでいるのだろう。今にでも頭の中がパンクしてもおかしくないと思う。
「脱出する方法、あるんだよね?」
「ッ?! ミオ、おまえ…」
だから、私はサダメに問いかける。脱出出来る方法があれば、彼も納得してくれるはず。
「ああ!」
私の問いかけにサダメは強く頷いた。嘘はついていない。そこまで彼のことを知っているわけではないが、なんとなくわかる。そういう人だってことぐらいは。
「わかった。私は信じるよ」
「なっ?! ミオ、なんで…」
「だって…」
それともう一つわかることといえば…
「今のサダメの目、生きたいっていう目してるんだもん」
「ッ?!」
今のサダメの目は、昨日みたいに死んだような目じゃなくなってるってことぐらいかな。
「何? どういうこと?」
いきなりすぎるサダメの発言に皆困惑の顔をしている。かく言う私も困惑している。
「おい、ちょっと待てよ!?」
「ラエル?!」
皆が困惑の表情をうかべるなか、ラエルだけは怒った表情でサダメに歩み寄って来ていた。マズイ。また昨日みたいにケンカになっちゃう。
「突然帰って来たと思えば、訳のわかんねーこと言いやがっ、てっ!!」
「ぐっ!?」
「ッ?! ラエル、ダメ!?」
予想通りラエルはサダメの胸ぐらを掴んで問い詰める。私がまた止めようとするも、全然手を振りほどけない。折角サダメが帰って来てくれたのに、昨日みたいにケンカなんてしたら余計空気が悪くなって取返しのつかないことになっちゃう。サダメだって…
「ごめん」
「っ?!」
「言いたいことはわかる。けど、時間がないんだ。頼む、俺の言うことを聞いてくれないか?」
「…」
きっとされるがままになるのだと思ってた。しかし、今の彼の表情はとても穏やか。というより、真剣な眼差しをしている。昨日のサダメとはまるで別人だった。
「…ざけんなよ!?」
だけど、ラエルは納得のいっていない様子。そのせいか、胸ぐらを掴んでいる握力がさらに強まっている気がする。
「昨日死にたいとか言ってたやつが、今度は皆で村を出ようだあ?! ふざけんのも大概にしろよ?! てめえの自殺願望に皆を巻き込む気かよ?!」
「ちょ、ラエル!? 落ち着いて!!」
ラエルの怒りが収まらなくなってきた。自分より年下で、身体も一回りも二回りも違うサダメ相手にムキになり、怒声を浴びせたり身体を強く揺すり始めた。ダメ、これ以上ヒートアップすると殴り出してもおかしくない。そう思った私は必死に止めに入るけど、力でも言葉でも彼を止めることが出来ない。一体どうすれば…
「違う!」
「ッ?!」
そう考えていると、サダメは少し強めの口調で反論してきた。怒っているわけじゃない。にも関わらず、胸ぐらを掴んでいたラエルの腕から少しだけ力が抜けていた。
「この村は時期に捨てられる。この村を捨てるってことは俺達も用済みだ。奴等なら間違いなく俺達を皆殺しに来る」
「…」
「だから、その前にこの村から逃げよう! 死にに行く為じゃない! 生きる為に!!」
「ッ!?」
「サダメ…」
彼の言葉は皆の心に響いた…気がする。少なくとも私には響いていた。今の言葉はきっと心から出た本心だと思う。昨日まで死にたがっていた彼から出た本心。それが聞けて私は嬉しくなった。
「…けど…」
しかし、ラエルは戸惑っていた。さっきまで怒声を発していた彼の口調が少し弱くなっている。きっと、サダメの言葉を信じるべきかどうか悩んでいるのかもしれない。それに、この村から脱出するというのはものすごく難しいことだ。脱出する方法なんてほぼ無理。ラエルには年長者としての責任もあるだろうし、色々悩んでいるのだろう。今にでも頭の中がパンクしてもおかしくないと思う。
「脱出する方法、あるんだよね?」
「ッ?! ミオ、おまえ…」
だから、私はサダメに問いかける。脱出出来る方法があれば、彼も納得してくれるはず。
「ああ!」
私の問いかけにサダメは強く頷いた。嘘はついていない。そこまで彼のことを知っているわけではないが、なんとなくわかる。そういう人だってことぐらいは。
「わかった。私は信じるよ」
「なっ?! ミオ、なんで…」
「だって…」
それともう一つわかることといえば…
「今のサダメの目、生きたいっていう目してるんだもん」
「ッ?!」
今のサダメの目は、昨日みたいに死んだような目じゃなくなってるってことぐらいかな。
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