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第2章 脱出編
第2章ー⑨
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翌日、自分は皆と離れ、いつもの作業をすっぽかしていた。もうどうでもいい。サボって罰を受けようがどうだっていい。それならいっそのこと殺して欲しいとさえ思ってしまう。
ふらふらとした足取りで村の端へと歩いていた。別にワンチャンに賭けて村を脱出しようだなんて微塵も考えちゃいない。ただ、死に場所を探してうろついているだけだ。
昨晩、ラエルに言われて皆の視界に入りそうにない場所を探していた。向こうからすればその方が自分のことをスッと忘れられるかもしれないしな。それぐらいの配慮はしておいた方がお互い後腐れがなくなるだろう。
この村には崖なんてないし、海もない。だから飛び降りや溺死はほぼ不可能。首吊りやリストカットも考えたが、色々と入用だし、そんな気力は既に残ってない。
もっと簡単に死ねる方法を模索していたらふと妙案を思いついた。その為に今、村の端へと向かっているのだ。
この村には魔障結界という結界とは名ばかりの霧が村を囲うように立ち込めている。この霧には濃密な魔力が込められており、濃密な魔力を浴びると人間は体に異変をきたし、最悪死に至ると奴が言っていた事を思い出した。
あの霧の中に入れば死ねるかもしれない。そう思った自分は魔障結界の方に向かっていたのだ。村の入り口の方にも魔障結界は掛かってるし近いが、あそこら辺は他の魔物がうろついている。見つかると色々面倒だし、ラエル達にも見られるかもしれない。余計に面倒なことになりかねん。
そういうことも含めて正反対の方向に向かっている。あそこはあまり開拓されていない森だったはず。魔障結界の影響でなにも変わっていなければの話だが。
魔障結界の先はなにも見えない。あの中で死んでしまえば自分の死体なんて見つけようもないだろう。そう考えると今の自分にとってこの霧は色々と都合がいい。
「…ふぅ…」
魔障結界の所までなんとか辿り着いた。結界の近くに居るだけでも異様な魔力を感じて吐き気もするし嫌な汗も噴き出てきた。魔造種の倉庫の比じゃないな。
「ッ?! ゲホッ!? ゲホッ!?」
ふと霧を吸ってしまい咳き込み出す。煙をモロに吸ってしまったような感覚で涙も出てくる。ちょっと吸い込むだけでこのざまだ。たしかに、こんな霧の中を歩いてたらほぼ間違いなく死ぬだろうな。
「ゲホッ、ゲホッ、…けど、丁度いい…」
だが、皮肉なことに自分は死を望んでいる。間違いなく死ねる方法があるのなら願ったり叶ったりだ。中に入るのは少しキツイが、覚悟はもう決まってる。
「…待ってて、お父さん、お母さん。俺もそっちに行くから」
はたして、死んだら両親に会えるのだろうか。こんな親不孝ものは地獄に落とされるだろうか。来世も記憶を引き継いだまま生まれ変われるのだろうかなどと考えつつ魔障結界の中に一歩足を踏み入れようとした。
「おい」
「ッ?!」
その時、背後から誰かに声を掛けられた。
ふらふらとした足取りで村の端へと歩いていた。別にワンチャンに賭けて村を脱出しようだなんて微塵も考えちゃいない。ただ、死に場所を探してうろついているだけだ。
昨晩、ラエルに言われて皆の視界に入りそうにない場所を探していた。向こうからすればその方が自分のことをスッと忘れられるかもしれないしな。それぐらいの配慮はしておいた方がお互い後腐れがなくなるだろう。
この村には崖なんてないし、海もない。だから飛び降りや溺死はほぼ不可能。首吊りやリストカットも考えたが、色々と入用だし、そんな気力は既に残ってない。
もっと簡単に死ねる方法を模索していたらふと妙案を思いついた。その為に今、村の端へと向かっているのだ。
この村には魔障結界という結界とは名ばかりの霧が村を囲うように立ち込めている。この霧には濃密な魔力が込められており、濃密な魔力を浴びると人間は体に異変をきたし、最悪死に至ると奴が言っていた事を思い出した。
あの霧の中に入れば死ねるかもしれない。そう思った自分は魔障結界の方に向かっていたのだ。村の入り口の方にも魔障結界は掛かってるし近いが、あそこら辺は他の魔物がうろついている。見つかると色々面倒だし、ラエル達にも見られるかもしれない。余計に面倒なことになりかねん。
そういうことも含めて正反対の方向に向かっている。あそこはあまり開拓されていない森だったはず。魔障結界の影響でなにも変わっていなければの話だが。
魔障結界の先はなにも見えない。あの中で死んでしまえば自分の死体なんて見つけようもないだろう。そう考えると今の自分にとってこの霧は色々と都合がいい。
「…ふぅ…」
魔障結界の所までなんとか辿り着いた。結界の近くに居るだけでも異様な魔力を感じて吐き気もするし嫌な汗も噴き出てきた。魔造種の倉庫の比じゃないな。
「ッ?! ゲホッ!? ゲホッ!?」
ふと霧を吸ってしまい咳き込み出す。煙をモロに吸ってしまったような感覚で涙も出てくる。ちょっと吸い込むだけでこのざまだ。たしかに、こんな霧の中を歩いてたらほぼ間違いなく死ぬだろうな。
「ゲホッ、ゲホッ、…けど、丁度いい…」
だが、皮肉なことに自分は死を望んでいる。間違いなく死ねる方法があるのなら願ったり叶ったりだ。中に入るのは少しキツイが、覚悟はもう決まってる。
「…待ってて、お父さん、お母さん。俺もそっちに行くから」
はたして、死んだら両親に会えるのだろうか。こんな親不孝ものは地獄に落とされるだろうか。来世も記憶を引き継いだまま生まれ変われるのだろうかなどと考えつつ魔障結界の中に一歩足を踏み入れようとした。
「おい」
「ッ?!」
その時、背後から誰かに声を掛けられた。
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