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第2章 脱出編
第2章ー⑥
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今日のサダメの様子がなんだかおかしい。正確には作業が終わって教会に帰って来てからだと思う。
帰って来た時に声を掛けても全く返事を返してくれなかった。それどころか聞いてすらいない様子。いや、多分私の声が届いていないのかもしれない。そんな風に見えた。
目の光も失っていて、まるでなにかに絶望しているような顔だった。その顔を見た時、私はゾッとした。あのサダメの顔が一生記憶に残る気がする。それほどまでに恐ろしい顔をしていた。
いちおういつも通りたき火に火を点けてくれてはいたけど、そのあとはたき火から離れて一人壁の端っこでずっとうずくまっていた。
「…」
そんな様子を見てみんな心配そうな顔を浮かべていた。そりゃあ私だって心配になるよ。あんなサダメなんて初めて見たんだから。
たしかに、彼は私達よりずっとひどい目に遭わされている。魔物達の気分転換に殴られたり蹴られたり悪口言われたり。
それでもサダメは私達に心配かけないように弱音なんか言わなかった。私達もそれを知っている。間違いなくサダメはこの中で一番強い子。だから、私達もなるべくサダメに余計な心配を掛けないように我慢している。昨日はつい言っちゃったけど。
サダメは私達にとって光になっていた。サダメが居ればきっとなんとかなるような気がするほど私達は彼に支えられている。そんな彼が闇に堕ちようとしている。
日々のストレスがとうとう限界を迎えたのか、それともとても嫌なものを見てしまったのか。なぜ彼がこんなことになってしまったのかはわからない。
「ッ!!」
私は気づかされた。彼だって私達とおんなじ人で子供なんだ。私達より辛い目に遭ってるんだから精神的にも肉体的にも限界はある。今までサダメが私達の光となってくれたように、今度は私達がサダメの光となってあげないと。
そう思った私は、立ち上がってサダメの所に歩み寄る。サダメの代わりは出来ないけど、私には私なりに出来る事がある。体を癒すだけじゃ駄目なんだ。サダメに必要なのは精神的な癒し。
まずはちゃんと話を聞いてあげること。私のお父さんも言っていた。薬は治癒魔法や処方薬だけじゃない、会話も時として立派な薬になるんだって。
「サダメ? 今日なにかあったの? あいつらにまた嫌なことされた? もしよかったら私が話聞いて…」
「…いい」
「…えっ?」
話を聞こうとサダメに話しかけると、サダメが弱弱しい声でなにかを呟いた。あまりにも聞こえづらくて思わず聞き返す。
「…もう、どうでもいい。もう、死にたい」
サダメの放った言葉は、とても冷たく、どことなく熱を感じない一言だった。
帰って来た時に声を掛けても全く返事を返してくれなかった。それどころか聞いてすらいない様子。いや、多分私の声が届いていないのかもしれない。そんな風に見えた。
目の光も失っていて、まるでなにかに絶望しているような顔だった。その顔を見た時、私はゾッとした。あのサダメの顔が一生記憶に残る気がする。それほどまでに恐ろしい顔をしていた。
いちおういつも通りたき火に火を点けてくれてはいたけど、そのあとはたき火から離れて一人壁の端っこでずっとうずくまっていた。
「…」
そんな様子を見てみんな心配そうな顔を浮かべていた。そりゃあ私だって心配になるよ。あんなサダメなんて初めて見たんだから。
たしかに、彼は私達よりずっとひどい目に遭わされている。魔物達の気分転換に殴られたり蹴られたり悪口言われたり。
それでもサダメは私達に心配かけないように弱音なんか言わなかった。私達もそれを知っている。間違いなくサダメはこの中で一番強い子。だから、私達もなるべくサダメに余計な心配を掛けないように我慢している。昨日はつい言っちゃったけど。
サダメは私達にとって光になっていた。サダメが居ればきっとなんとかなるような気がするほど私達は彼に支えられている。そんな彼が闇に堕ちようとしている。
日々のストレスがとうとう限界を迎えたのか、それともとても嫌なものを見てしまったのか。なぜ彼がこんなことになってしまったのかはわからない。
「ッ!!」
私は気づかされた。彼だって私達とおんなじ人で子供なんだ。私達より辛い目に遭ってるんだから精神的にも肉体的にも限界はある。今までサダメが私達の光となってくれたように、今度は私達がサダメの光となってあげないと。
そう思った私は、立ち上がってサダメの所に歩み寄る。サダメの代わりは出来ないけど、私には私なりに出来る事がある。体を癒すだけじゃ駄目なんだ。サダメに必要なのは精神的な癒し。
まずはちゃんと話を聞いてあげること。私のお父さんも言っていた。薬は治癒魔法や処方薬だけじゃない、会話も時として立派な薬になるんだって。
「サダメ? 今日なにかあったの? あいつらにまた嫌なことされた? もしよかったら私が話聞いて…」
「…いい」
「…えっ?」
話を聞こうとサダメに話しかけると、サダメが弱弱しい声でなにかを呟いた。あまりにも聞こえづらくて思わず聞き返す。
「…もう、どうでもいい。もう、死にたい」
サダメの放った言葉は、とても冷たく、どことなく熱を感じない一言だった。
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