転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第1章 転生編

第1章ー⑰

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 「?! なん…だと?」

 魔物の聞き捨てならない発言に怒りが込み上げてくる。痴人だと? 自分達を守る為に命を掛けた父を侮辱されるのはこの上なく不快だ。

 「『私には3つの武器があります』」

 「ッ?!」

 「『一つはこの『陰魔法』。これで相手を直接殺す事が出来る』」

 しかし、魔物の方は上機嫌なのか、突然自分の話をし始めたり、自分の魔法をひけらかし出した。奴の話を聞く限り、陰魔法以外にも使える武器があるだと? 他にも使える魔法かあったということなのか?

 「『二つ目は『頭脳』。相手を殺す為の策を練るのに必要な武器』」

 「…」

 と思っていたが、奴は自分の頭を指差してそう語る。そういうことか。奴がいう武器というのは魔法だけではないようだ。だとすると、あと一つは…

 「『そしてもう一つは、『言葉』だ』」

 「ッ?!」

 考えるまもなく、魔物は最後に自分の顔を指差してそう答える。

 「『魔物と人類は敵対関係にあるのは言わずもがな、なぜ私達が敵対関係にある人の言葉をわざわざ発すると思いますか?』」

 「…」

 「『答えは単純、人を欺く為。人とは愚かで単純な生き物だ。同じ言葉を話すだけで我々の事を知った気になり、無意識のうちに緊張の糸を少しずつ緩めてしまう』」

 「で、デタラメなこと…いうな」

 しかし、ここで自分は魔物に反論する。父のショックがまだ残っていて呼吸は多少乱れていたが、あの状況で父がそんなことする訳がないと言わずにはいれなかった。

 「『…そうですね。後半の部分は適当に考えました』」

 「…は?」

 どう返すのか緊張の面持ちで魔物の様子を見守っていると、まさかの返しに思わず口から疑問符が出てしまった。何を言ってるんだ、こいつ。

 「『さっき言いましたよね? 人を欺く為に我々は人語を語っていると』」

 「…なにが言いたいんだよ、おまえ」

 なんだかおちょくられてるような気がして腹が立ってきた。一体こいつはなにがしたいんだよ。

 「『君は私の話を半信半疑で聞いていましたが、彼はどうだったでしょうか?』」

 「?」

 「『彼は私の言葉を鵜呑みにしてましたよ。彼の敗因はそこですね』」

 「はあ? お父さんがそんなヘマするわけ…」

 「『なら、私がどうやって君の父を殺せたのか教えて差し上げましょう』」

 「っ?!」

 ますます言ってる事がわからなくなってきた。どうやってって、あの強力な魔法をぶつけて押し勝った訳じゃないのか? いや待てよ。奴は自らの手で父の心臓を貫いていた。魔法の撃ちあいは互角で、あの煙に紛れて自分の手で直接殺したという事か?

 「『逃げたんですよ』」

 「…は??」
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