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18話
しおりを挟む初めから、どうせ叶わないことは分かっていた。
美琴はカナタにとって女神のような存在だ。
深く傷ついてひび割れた心や汚れ切った過去を、そのやわらかい光で癒してくれる唯一の人。
でもそんなものは所詮カナタの勝手な理想に過ぎない。この狭い部屋に閉じ込めることで、彼女にそれを押し付け、強要している。自分でもよくわかっている。
いくら有り余るこの愛を伝えたところで、好きになってもらえる日は一生来ないだろう。その思いは今この瞬間も変わらない。美琴は自分の気持ちがわからないと以前言い、その言葉は確かに嬉しかったが、カナタにはわかっていた。彼女のような尊い存在が、こんな卑小な人間に振り向くわけがないのだ。
でも。
細い腕が、あろうことか自分の背中にまわされてる。美琴がこの胸に顔をうずめている。いつもしていることなのに、されるのは初めてで、カナタは恐る恐るそのやわらかい身体を抱きしめ返した。子猫のような、ともすれば絞め殺したくなるようなしなやかさ。肌からは甘くやわらかい香りが漂う。
美琴は俺の気持ちを受け止めてくれたのだろうか。
もちろん受け止めるのは、受け入れるのとは違う。ただそこにあることを認めてくれたというだけだ。でも充分すぎるほど幸せだった。今死んでも後悔はないくらいに。
カナタは美琴を抱きしめたまま、左手を伸ばして間接照明のスイッチを押す。オレンジ色のぼんやりとした光が、いつになく親密な空気を纏うふたりを照らし出した。
腕の中にすっぽりとおさまって見上げてくる潤んだふたつの瞳。視線が絡まり、ぞくぞくして本当に腕に力を込めてしまいたくなる。
思いとどまってひとつ息をつき、その黒くて細い髪を撫でてみた。
「……俺に言いたいことがあるんだよな」
戸惑ったように、頰を赤らめてこくりと頷くのが薄暗闇でもわかった。可愛すぎる。
密着している美琴の身体は火照っていて、こちらまで汗ばんできた。半開きの口からは唾液に濡れた赤い舌が見え、物欲しげな表情を浮かべている。今日の彼女は間違いなく発情しすぎている。
「カナタと、えっちなこと、したい」
理性が飛ぶ瞬間の、ぷつりと言う音をはっきりと聞いた。
不幸に彩られてきた自分の人生に、こんな幸せなことがあっていいのだろうか。
◇
「美琴、乳首すごく硬くなってるよ。なんか、おっぱいもいつもより張ってる感じ」
後ろから抱きかかえるようにして胸を揉み、時折その充血して大きくなった突起をいやらしく触ってみた。やわらかいふたつの胸は手のひらにちょうどよくおさまり、むにゅむにゅとされるがままになっている。美琴は身をくねらせ、いつにも増して切なげな甘い声を上げる。
「はぁ、んんっ……ぁ」
「もともと敏感だけど、今日特にヤバくない? 俺にこういうことして欲しかったの?」
「……」
声を上げずに、しかしちゃんと頷いたのをカナタは見逃さない。
いじらしくて愛おしくて、細い手首を押さえつけて思い切り犯してやりたくなる。
「……そんな素直になられたら俺がヤバイって」
膝に座る美琴を軽く抱えて、向き合うように座り直させる。さっきまではしたない声を上げていたのに、対面すると恥ずかしいらしく両腕で胸と下半身を隠そうとした。それを制して身をかがめ、再び乳首を舐める。感じさせようというより、単に自分が味わいたくて舐めているのだが、それで余計に感じてしまうらしい。
静かな部屋の中に、カナタが乳首を舐めたり吸ったりする音と、それに反応する美琴の喘ぎ声が響く。
「あん、も、だめ、そんなに舐めちゃ……」
「感じすぎ。かわいい」
「やだぁ、ほんとに、だめだよっ」
無視してもう一度ちゅうううっと音を立てて吸い、舌先で舐めながら下半身に手を伸ばすと、そこはもうどうしようもないくらい濡れていた。
狭いところに中指を突き入れ、また乳首を吸うと、ひときわ大きな声を上げて、美琴が果てた。
◇
「これ見て」
信じられないほど硬く勃起したカナタのそれは、大きく反り返ってボクサーパンツから顔を出している。いつも以上に興奮している自覚があった。美琴が息を飲む気配がする。
「今日は美琴のここに全部挿れるよ?」
中指でぬるぬるのそこをなぞると、彼女の目にははっきりした怯えとわずかな期待の色が浮かんだ。
「いいよね? こんなに濡らして誘ってくる美琴が悪いんだし。さすがに俺ももう我慢できない」
ゆっくりと指を挿入する。それに合わせて、あぁ、と、薄桃色の唇が喘いだ。
自分で尋ねておいてなんだが答えは聞いていないので、手早く押し倒す。抵抗らしい抵抗もないということは彼女もそれを望んでいるのかもしれない。嬉しいことだ。
枕元に置いているコンドームを右手でひとつ取り、袋を口にくわえて噛み切る。丁寧に開封する心の余裕がなかった。これ以上ないくらい濡らしているくせに、そのときまた、奥から蜜が溢れるのがわかった。もともと解放するつもりなんかないけど、やっぱり美琴をこの家から出すわけにはいかない。こんなに感じやすくて可愛い子を、自分以外の男がたくさんいる外の世界なんかに出せるわけがない。
つぷ、と、先の方は簡単に飲み込んだ。最近慣らしていたからだ。気持ち良さそうな顔で喘ぎ、それに合わせてやわらかい肉が収縮する。
「力抜いて」
「うぅ、こわいよぉ……」
「大丈夫、優しくするから」
安心させるように手を繋いで、おでこに唇をつけた。中がまた反応し、カナタのものを締め付けた。
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