バイバイ恋人

緑兎

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バイバイ恋人

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「あ」
割れたコップが1つ。
一人暮らしの部屋に転がりこまれ、同棲していた恋人と別れてから半年。マンションの契約更新を期に思い出のこの部屋から引っ越す事にした。
そしてその引っ越し作業中に見つかった同棲が始まって最初に買ったお揃いのコップ。途中から見なくなったと思ったらこんなことになっていたのか。
「結構気に入ってたんだけどなぁ」
恋人の割れたコップに比べて私のものは綺麗なものだった。大事に、大事に使っていたそれも片割れを見失ってから次第に使う回数が少なくなっていった。
そこからは結局適当なコップをバラバラに使って、それを真似するみたいにいつしか私たちもバラバラになってしまった。いや、私たちがバラバラになったのをコップが教えてくれたのかもしれない。
コップを割ってしまったことも言い出せなくなるくらい離れてしまっていたのなら別れてしまうのも仕方がなかったのかな。別に怒ったりはしないのに。
でも…もうそんなこともわからなくなってしまったのだ。

始まりは全部あなただった。
お揃いのコップを買おうって言ったのも、
同棲を始めようって言ったのも、
告白をしてきたのだってあなた。
そして
別れようって言ったのもあなただった。

私はただ「いいよ」っていうだけ。
それしか言えなかった。
それ以外は言ってはいけなかった。
嫌われたくないから。
好きじゃなくても、嫌いになってほしくなかったら。

でも、もう、意味がなかったみたい。

バイバイ恋人。
お揃いのコップはゴミ箱に。
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