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第149話 断罪の瞬間
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扉が開かれる音が響き渡る。会場が静寂に包まれる。光沢のある扉の奥、闇の中より現れたのは、ヴィオレッタが待ち望んだ男であった。冷々とした空気が迷い込み、鴉の羽のように美しい黒髪を揺らす。血で穢れた漆黒の騎士服に、はためく濃紺のマント。長い前髪の隙間から覗くターコイズブルーの眸子は、両腕を縛られているヴィオレッタを捉えたあと、彼女の前に佇むグリディアード公爵を見つめた。さすがのグリディアード公爵もルカが大舞踏会に乱入するとは考えていなかったのか、度肝を抜かれた形相をしていた。彼は、ルカの背後から現れたリアンナの顔を目撃するなり、「そういうことか」と呟いた。ルカは一歩、一歩進む。リアンナ、ユリウス、セージリア、マナ、そして第零番隊の隊員たちもそれに続いて歩く。貴族たちは、自然と道を開け、現時点においてヘティリガ最強の軍団の行進を見守った。誰も彼らの歩みを止めることができない中、勇敢とも言えるグリディアード公爵側の騎士たちがルカに斬りかかろうと剣を構える。
「う、うわぁぁぁ!!!」
「かかれー!!!!」
左右から斬りかかるふたりの騎士に対して、ルカは横に一振り。たった一閃で、ふたりの騎士の命を奪う。胴体を切り離された騎士たちは、いつ自分が死んだのかも分からぬまま儚い人生に幕を下ろす。ルカが振るう一本の黒剣は、血を吸収して禍々しく光る。簡単に人を殺すことのできる斬れ味のよさ、さらにはその剣を扱う技量を持つルカの剣技に、貴族たちは恐れ慄き絶叫する。
「何をしている! 貴様たち! さっさとあの化け物を止めんかっ!!!」
会場の端のほうで固まって怯えている大臣のひとりが声を荒らげる。我に返った騎士たちは、弱々しい雄叫びを上げて四方八方からルカたちに襲いかかった。だがしかし、影の女王、名無しの暗殺者、姫騎士、侍女にして最強の暗殺者のひとりに適うわけもなく。剣の切っ先がルカに届く前に、騎士たちの腕は斬り落とされていく。
「こ、この雑魚共がっ!!! 肉の壁を作ってでも止めろ!!! あの者たちをこちらにっ、グリディアード公爵に近づけるなっ!!!」
再び大臣のひとりが催促する。刹那、感じたこともない寒気が大臣たちの背筋を駆け上がる。背後から聞こえるのは、可憐な笑い声。
「豚の方々が何やら騒いでおられますわね~。あら、こんなことを言ったら豚さんに失礼だわ。たっぷり甚振って詰って殺したあと、豚さんの肥料にでもしましょうか」
大臣たちは、震えながら振り返る。バレヌブルーの眼球が狂気に満ちた光景を最後に、大臣たちの意識は消え去った。
「このわたしが、殺さずにおいて差し上げたのだから感謝してほしいものですわ」
リアンナは、アッシュブロンドの癖毛を指先にクルクルと巻いて、笑った。
騎士たちは大量の涙を流して、絶望の顔をしながらも、なんとか足腰を機能させてルカの前に立ちはだかる。ルカは足を止めない。不気味な靴音が反響する中、騎士たちが固唾を呑む。いつ仕掛けようか、タイミングを見計らっているのだ。ユリウスとマナはそれを好機と捉え、ルカの前に出る。たった一瞬、騎士たちが瞬きをする間、ユリウスとマナは猛攻を仕掛けた。人が人ではないかのように、騎士たちは無惨に蹴散らかされていく。血肉が舞い、文字通りの血の雨が降る。ルカはそれに構わず、歩き続ける。グリディアード公爵、皇帝、そしてヴィオレッタの前に立つ。ヴィオレッタはルカの顔を見つめ、一筋の涙を流した。
「ルカ……」
口紅が薄れてしまった唇から、縋る声が漏れる。それを聞いたルカは、今すぐヴィオレッタに駆け寄り、その体を抱きしめたいと衝動に駆られた。だがグリディアード公爵に隙を見せてはならないと、グッと我慢をする。ルカは、ヴィオレッタの隣で彼女と同様に腕を拘束されている皇帝に目配せをする。皇帝は、フッと鼻で笑ったあと、彼の代わりに玉座に座っている皇弟に目を向けた。それだけでルカは、理解をする。皇弟はグリディアード公爵を欺くため、わざと彼に従っているということを。そうでなければ、リアンナがルカを戦場まで呼びに来る必要性がない。ルカはグリディアード公爵に視線を移す。ラベンダーモーヴの瞳が光を宿した。
「さすがは私の息子だ、ルカ」
「テメェとの血の繋がりなんぞ、今すぐ切りてぇくらいだ」
ルカの本音に、グリディアード公爵は微笑む。ルカは今すぐにでもその面を恐怖に染めてやると覚悟を決め、口を開いた。
「グリディアード公爵家が当主、ジウベルト・レード・ティサレム・グリディアード。テメェの悪事を白日の下に晒し、断罪を決行する」
「う、うわぁぁぁ!!!」
「かかれー!!!!」
左右から斬りかかるふたりの騎士に対して、ルカは横に一振り。たった一閃で、ふたりの騎士の命を奪う。胴体を切り離された騎士たちは、いつ自分が死んだのかも分からぬまま儚い人生に幕を下ろす。ルカが振るう一本の黒剣は、血を吸収して禍々しく光る。簡単に人を殺すことのできる斬れ味のよさ、さらにはその剣を扱う技量を持つルカの剣技に、貴族たちは恐れ慄き絶叫する。
「何をしている! 貴様たち! さっさとあの化け物を止めんかっ!!!」
会場の端のほうで固まって怯えている大臣のひとりが声を荒らげる。我に返った騎士たちは、弱々しい雄叫びを上げて四方八方からルカたちに襲いかかった。だがしかし、影の女王、名無しの暗殺者、姫騎士、侍女にして最強の暗殺者のひとりに適うわけもなく。剣の切っ先がルカに届く前に、騎士たちの腕は斬り落とされていく。
「こ、この雑魚共がっ!!! 肉の壁を作ってでも止めろ!!! あの者たちをこちらにっ、グリディアード公爵に近づけるなっ!!!」
再び大臣のひとりが催促する。刹那、感じたこともない寒気が大臣たちの背筋を駆け上がる。背後から聞こえるのは、可憐な笑い声。
「豚の方々が何やら騒いでおられますわね~。あら、こんなことを言ったら豚さんに失礼だわ。たっぷり甚振って詰って殺したあと、豚さんの肥料にでもしましょうか」
大臣たちは、震えながら振り返る。バレヌブルーの眼球が狂気に満ちた光景を最後に、大臣たちの意識は消え去った。
「このわたしが、殺さずにおいて差し上げたのだから感謝してほしいものですわ」
リアンナは、アッシュブロンドの癖毛を指先にクルクルと巻いて、笑った。
騎士たちは大量の涙を流して、絶望の顔をしながらも、なんとか足腰を機能させてルカの前に立ちはだかる。ルカは足を止めない。不気味な靴音が反響する中、騎士たちが固唾を呑む。いつ仕掛けようか、タイミングを見計らっているのだ。ユリウスとマナはそれを好機と捉え、ルカの前に出る。たった一瞬、騎士たちが瞬きをする間、ユリウスとマナは猛攻を仕掛けた。人が人ではないかのように、騎士たちは無惨に蹴散らかされていく。血肉が舞い、文字通りの血の雨が降る。ルカはそれに構わず、歩き続ける。グリディアード公爵、皇帝、そしてヴィオレッタの前に立つ。ヴィオレッタはルカの顔を見つめ、一筋の涙を流した。
「ルカ……」
口紅が薄れてしまった唇から、縋る声が漏れる。それを聞いたルカは、今すぐヴィオレッタに駆け寄り、その体を抱きしめたいと衝動に駆られた。だがグリディアード公爵に隙を見せてはならないと、グッと我慢をする。ルカは、ヴィオレッタの隣で彼女と同様に腕を拘束されている皇帝に目配せをする。皇帝は、フッと鼻で笑ったあと、彼の代わりに玉座に座っている皇弟に目を向けた。それだけでルカは、理解をする。皇弟はグリディアード公爵を欺くため、わざと彼に従っているということを。そうでなければ、リアンナがルカを戦場まで呼びに来る必要性がない。ルカはグリディアード公爵に視線を移す。ラベンダーモーヴの瞳が光を宿した。
「さすがは私の息子だ、ルカ」
「テメェとの血の繋がりなんぞ、今すぐ切りてぇくらいだ」
ルカの本音に、グリディアード公爵は微笑む。ルカは今すぐにでもその面を恐怖に染めてやると覚悟を決め、口を開いた。
「グリディアード公爵家が当主、ジウベルト・レード・ティサレム・グリディアード。テメェの悪事を白日の下に晒し、断罪を決行する」
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