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第148話 可愛い彼
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目が覚める。体が気怠い。列車の窓からは、眩い光が入り込んできている。どうやら、朝方のようだ。なんとか身を起こそうとするが、体を固定されているためまったく動けない。何事かと腰元を見ると、腹部に太い腕が回っているのが視界に入る。身を捩って背後を見ると、そこには無防備な寝顔を晒したジークルドがいた。
昨日の記憶が一気に蘇ってくる。夕食もろくに取らずに、ふたりは夜中までまぐわり続けていたのだ。ジークルドの精力は、底知らずで恐ろしい。昨日はそれを全てぶつけられ、何回体を繋げたのか途中から覚えていないほどだ。今もなお、体が火照っている。
ラダベルがひとり照れていると、背後のジークルドがもぞもぞと動く。
「ん、ラダベル……」
舌っ足らずな声で名を呼ばれ、ラダベルは振り向いた。白く長い睫毛が上がり、パープルダイヤモンド色の瞳が現れる。ジークルドは、何度か瞬きをして彼女をしっかりと視界の中心に捉えた。そして、ふにゃりと破顔する。
「おはよう、ラダベル」
ジークルドは朝の挨拶をして、ラダベルの頭にキスを落とした。
「ん゛ふっ……」
(幸せ~~~~~!!!)
変な声が出てしまったが気にしない。ラダベルはこれまでの人生で感じたことのない至上の幸せを抱く。
「ラダベル……。俺が、好きか?」
ジークルドはラダベルの首元に顔を埋めながら問いかける。熱い吐息がかかり、彼の所有印でいっぱいの体がずくりと疼いた。
「は、い……好きです……」
思ったままを告げると、ジークルドは控えめに顔を上げた。
「以前、侍女から報告を受けた」
「な、なんのですか?」
ジークルドが拗ねた様相となる。
「元帥と、お前が庭園で穏やかな時間を過ごしていたらしいな。俺が戦争に行っている間……眠る元帥の傍にお前がいたと、聞いた」
ジークルドにそう言われ、ラダベルは必死に記憶を漁る。彼が戦争に向かっている最中、高熱から回復したラダベルは、庭園で無防備に眠り、何かに魘されていたアデルの傍に暫し佇んでいた。
思い出したラダベルの顔色が段々と悪くなっていく。それを見たジークルドが、彼女を抱きしめる腕により一層の力を込めた。
「その話を聞いて、元帥に気持ちが戻ったのではないかと疑っていた……」
覇気のないジークルドを見て、ラダベルは清涼な笑みをこぼした。彼の髪を触る。
「そんなわけがありません。私はあなたのものですよ、ジークルド。私が好きなのは、あなただけ。確かに……そんなこともありましたが、幼馴染であった過去のことを懐かしんでいただけです」
「………………」
「本当に、私はあなたを愛しています」
純粋な真実を伝えると、ジークルドは拘束を解き、ラダベルの体をくるりと反転させる。正面から強く抱きしめた。ぴたりと触れ合う肉体。布を挟まないその感覚に、人間の体温に、心地良さを感じた。
「俺も愛してる、ラダベル。たとえお前が、この世界の人間でなかったとしても、そんなのどうでもよくなるほどに、お前を愛している」
ジークルドに唇を奪われる。すぐに舌が絡み合う。ラダベルが太腿を擦り合わせると、ジークルドのたくましい太腿がその間に割り入る。熱烈なアピールに、再びラダベルの体が熱を持った。昨日あれだけ体を繋げたというのに、まだ元気なのだろうか。ジークルドの底なしの性欲に恐れ慄きながらも、彼とのキスに溺れた。唇が離れる。
「きっと神が俺の運命に、出会わせてくれたのだな」
ジークルドは蕩ける笑顔となる。ラダベルよりもずっと年上の彼が、本当に愛されているか不安になってラダベルの愛を求めるなんて、可愛すぎるにもほどがある。ラダベルは、ジークルドが不安にならないようめいいっぱい愛してあげようと思うのだった。
昨日の記憶が一気に蘇ってくる。夕食もろくに取らずに、ふたりは夜中までまぐわり続けていたのだ。ジークルドの精力は、底知らずで恐ろしい。昨日はそれを全てぶつけられ、何回体を繋げたのか途中から覚えていないほどだ。今もなお、体が火照っている。
ラダベルがひとり照れていると、背後のジークルドがもぞもぞと動く。
「ん、ラダベル……」
舌っ足らずな声で名を呼ばれ、ラダベルは振り向いた。白く長い睫毛が上がり、パープルダイヤモンド色の瞳が現れる。ジークルドは、何度か瞬きをして彼女をしっかりと視界の中心に捉えた。そして、ふにゃりと破顔する。
「おはよう、ラダベル」
ジークルドは朝の挨拶をして、ラダベルの頭にキスを落とした。
「ん゛ふっ……」
(幸せ~~~~~!!!)
変な声が出てしまったが気にしない。ラダベルはこれまでの人生で感じたことのない至上の幸せを抱く。
「ラダベル……。俺が、好きか?」
ジークルドはラダベルの首元に顔を埋めながら問いかける。熱い吐息がかかり、彼の所有印でいっぱいの体がずくりと疼いた。
「は、い……好きです……」
思ったままを告げると、ジークルドは控えめに顔を上げた。
「以前、侍女から報告を受けた」
「な、なんのですか?」
ジークルドが拗ねた様相となる。
「元帥と、お前が庭園で穏やかな時間を過ごしていたらしいな。俺が戦争に行っている間……眠る元帥の傍にお前がいたと、聞いた」
ジークルドにそう言われ、ラダベルは必死に記憶を漁る。彼が戦争に向かっている最中、高熱から回復したラダベルは、庭園で無防備に眠り、何かに魘されていたアデルの傍に暫し佇んでいた。
思い出したラダベルの顔色が段々と悪くなっていく。それを見たジークルドが、彼女を抱きしめる腕により一層の力を込めた。
「その話を聞いて、元帥に気持ちが戻ったのではないかと疑っていた……」
覇気のないジークルドを見て、ラダベルは清涼な笑みをこぼした。彼の髪を触る。
「そんなわけがありません。私はあなたのものですよ、ジークルド。私が好きなのは、あなただけ。確かに……そんなこともありましたが、幼馴染であった過去のことを懐かしんでいただけです」
「………………」
「本当に、私はあなたを愛しています」
純粋な真実を伝えると、ジークルドは拘束を解き、ラダベルの体をくるりと反転させる。正面から強く抱きしめた。ぴたりと触れ合う肉体。布を挟まないその感覚に、人間の体温に、心地良さを感じた。
「俺も愛してる、ラダベル。たとえお前が、この世界の人間でなかったとしても、そんなのどうでもよくなるほどに、お前を愛している」
ジークルドに唇を奪われる。すぐに舌が絡み合う。ラダベルが太腿を擦り合わせると、ジークルドのたくましい太腿がその間に割り入る。熱烈なアピールに、再びラダベルの体が熱を持った。昨日あれだけ体を繋げたというのに、まだ元気なのだろうか。ジークルドの底なしの性欲に恐れ慄きながらも、彼とのキスに溺れた。唇が離れる。
「きっと神が俺の運命に、出会わせてくれたのだな」
ジークルドは蕩ける笑顔となる。ラダベルよりもずっと年上の彼が、本当に愛されているか不安になってラダベルの愛を求めるなんて、可愛すぎるにもほどがある。ラダベルは、ジークルドが不安にならないようめいいっぱい愛してあげようと思うのだった。
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