【完結】死にたくないので婚約破棄したのですが、直後に辺境の軍人に嫁がされてしまいました 〜剣王と転生令嬢〜

I.Y

文字の大きさ
上 下
35 / 158

第35話 双子の可愛さ

しおりを挟む
 ラダベル、セリーヌ、ミアは、お目当ての物、簪を購入したあと、市場で食べ歩きの物を購入し、昼食を取った。その後、セリーヌとミアの買い物に付き合い、久々の外を満喫まんきつしたのであった。セリーヌとミアとの外出を心から楽しんでいると、既に太陽が空を赤く燃やす時間帯となっていた。

「そろそろ帰りましょうか」
「そうですね。あまり遅くなっては、旦那様に見つかってしまうかもしれませんし……」
「裏道からこっそり参りましょう」

 セリーヌ、ミアの顔を見て、ラダベルは頷く。城への道を帰ろうと、市場の出口へ向かう。するとひとりの男性と視線がかち合った。

「っ……」

 ラダベルは速攻そっこうで目を逸らした。しかし、時既に遅い。彼女だけでなく、セリーヌもミアも気づいたらしく、ごきゅりと喉を鳴らした。ラダベルはもう一度、恐る恐る男性を見遣る。するとそこには、私服姿のエリアスが立っていた。彼はラダベルをはじめとした三人の姿を目撃したからか、目を見張る。エリアスの両腕には、天使のような少年少女が抱かれていた。ラダベルの興味は、エリアスから少年少女に移る。女の子は、アッシュグレイの髪をツインテールにした、ブルーラベンダーの瞳が印象的の美少女。男の子は、アッシュグレイの髪に、スカイブルーの瞳が綺麗な美少年だ。少年少女は、瓜二うりふたつ。恐らく、双子だろう。またふたりは、エリアスにもよく似ていた。

「んでここに……」

 エリアスは現状を理解できぬまま、唖然と呟く。茫然自失ぼうぜんじしつとしていた。

「おにいちゃん? どうしたの?」

 女の子がエリアスを「おにいちゃん」と呼ぶ。

「………………」

 男の子は、エリアスの服をギュッと掴んだ。双子の仕草を見たラダベルは、に落ちたため首肯した。まさかエリアスに、こんなにも幼い双子の妹と弟がいるとは。軍の人間、それもエリアスと、会ってはいけない場所で会ってしまったため、どう切り抜けようか一瞬困惑したが、心配はいらなかったみたいだ。ラダベルは人の悪い笑みを浮かべて、エリアスに歩み寄った。セリーヌとミアは、彼女のまさかの行動に驚く。

奇遇きぐうですね、バート少尉。その子たちは、あなたのご家族かしら?」
「っ…………。だったらなんだよ」
「可愛い子たちね。お名前を教えてもらっても?」

 ラダベルが双子に問いかける。先程までの人の悪い笑みはどこへやら。彼女はいつの間にか、純度百パーセントのけがれなき微笑みを湛えていた。そんな彼女を見た女の子は、ラダベルに手を伸ばす。

「きれい……。おひめさまみたい……」

 エリアスが咄嗟に止めようとするが、その前にラダベルが女の子の手をしっかりと握った。

「私はラダベル。あなたもお姫様みたいで素敵ね。お名前はなんて言うの?」
「ラン。ラン・バート!」
「そう、ランって言うの。よろしくね」
「うん! ラダベルおねえちゃん!」

 ランと名乗った女の子は、白く小さな歯を見せて笑った。無邪気むじゃきという言葉が似合うランは、ラダベルの心を擽る。それに耐えかねていると、エリアスのもう片方の腕に抱かれた男の子からの視線を感じる。

「さて、あなたはランのお兄ちゃん? それとも弟くんかな?」

 続いて、男の子のほうへ問いかけてみる。ところが、極度の恥ずかしがり屋なのか、なかなか答えようとしない。様子を見る限り、ランの弟のようだ。

「あら……。その胸のバッチ、とってもかっこいいわね」

 ラダベルが褒めたのは、男の子の胸についていた子供用のバッチだった。良いところに目をつけたらしく、褒められた男の子は空色の目を輝かせた。

「ぼ、ぼく……レン……」
「ふふ、レン、よろしくね」
「………………」

 レンは返事をするのではなく、首を縦に振るに留まった。天真爛漫てんしんらんまんのランと恥ずかしがり屋のレン。可愛いにもほどがあるだろう。ラダベルは堪らなくなり、悶え苦しむ。瞬時に双子を懐に入れてみせた彼女に、エリアスはなんとも言えない顔をしていた。

「バート少尉。まさかあなたにこんなにも可愛い子たちがいるなんて……」

 ラダベルは頬に手を押し当て、うっとりとランとレンを見つめる。するとエリアスが顔を真っ赤にして叫んだ。

「オレの子じゃねぇ!」
「知っていますよ。妹さんと弟さんでしょう?」

 ラダベルがすんっと真顔になって答えると、エリアスがしてやられた、と舌打ちをかました。

「交換条件ね、バート少尉」
「………………」

 エリアスは黙り込む。どうやらラダベルが言いたいことを分かっているようだ。

「デレッデレの顔で可愛い可愛い双子の子守りをしていたと噂を流されたくなければ、私たちがここにいることを他言しないでくださいね」
「デレッ…………てねぇ……」

 なんとか反論するも、否定はできていない。どうやらエリアスの口止めに成功したようだ。ラダベルは、ひと安心する。

「じゃあ、またね。ラン、レン」

 ラダベルが手を振って微笑むと、ランとレンも手を振り返してくれた。
 緊迫感と安らぎの時間は、こうして終わりを遂げたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

処理中です...