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第5話 皇帝は理由を知りたい
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クラウディオという男の正体に、ヴェリーナはとどめを刺されたように、心臓辺りを押さえながらその場に膝を着いた。ダリアナは、普段滅多に働かせない思考を瞬時に巡らせた。
男性にあまり興味がないダリアナでも、一度は聞いたことがある。クラウディオ・セノル・ベネルティオン・レドリガー。聞いたことがあると言っても記憶に残っているのはフルネームのうちの、………ティオン・レドリガー公爵くらいであるが。尋常ではないほどに強い騎士であり、天災を思わせるかのような圧倒的な力を誇る騎士。
「圧倒的な、力………?」
思わず口に出す。
ダリアナは誕生日の夜の出来事を思い出していた。クラウディオは圧倒的な力を持っている割には、ダリアナに抱えられていた。それに、ダリアナに抵抗もできていなかったではないか。媚薬の影響もあるし、何よりダリアナが生まれつき力持ちであるという事実が大きいだろう。しかし、それでも黒騎士と呼ばれるほどの強さを誇っているのにも関わらず、自分のような女に抱えられて大丈夫なのかな?とダリアナは要らぬ心配をしてしまった。
「ダリアナよ。クラウディオというその男は、帝国でも珍しい黒髪に青い瞳をしていたか…?」
「………はい。とても美しい黒髪と青い瞳でした」
にっこりと微笑むダリアナに、皇帝もヴェリーナと同じように心臓辺りをガシッと掴み苦しそうに悶えてしまった。
「お前とレドリガー公爵は恋仲だったのか?」
「恋仲?いいえ、誕生日の夜に出会ったばかりです」
「つい最近じゃないか…。なぜ結婚しようと思ったのだ?」
ヴェリーナはダリアナに純粋な疑問をぶつけた。
気になるのも仕方ない。ヴェリーナにとってダリアナとは、目に入れても痛くないほどに、可愛い可愛い妹なのだ。そんな愛くるしい妹の結婚など、いわゆるシスコンと言われるヴェリーナからしてみれば、受け入れ難いもの。しかしながら、ダリアナももう18歳。高貴なるグリドルーシャ皇族の直系。結婚は必然的なものであり、受け入れなければならない。だが、その結婚相手とどう出会ったのか、そしてなぜ結婚したいと思ったのかを聞いておきたいというのは、姉としての本能だろう。
ダリアナは、そんなヴェリーナの思いも知らずして、迷いなくはっきりと告げる。
「クラウディオさんの…レドリガー公爵の巨根は私が受け入れなければならないと思ったからです」
恐ろしいまでの静寂の時が訪れる。心做しか、地に光を降らせていた太陽はすっかりと雲に隠れてしまい、天気が徐々に怪しくなってきた。グリドルーシャの血を引く者は天候まで操ることができるのだろうか。否、そんなことはありえない。だが、時として奇跡が起こることもある。本来の意味とは違った奇跡が。天候の悪化は、まさしく皇帝とヴェリーナから出た負のエネルギーによるものだろう。負のエネルギーの原因は、ダリアナの爆弾の威力にも負けない発言にある。
「きょこん…だと?」
「はい。巨根です」
「きょこんとは、巨根ということか?」
「はい。巨根です」
皇帝は、「ふむ…」と顎に手を当てる仕草をする。
25にもなって恋人や婚約者、妻の一人も作らないレドリガー公爵ことクラウディオに、何か下半身の問題があるのかと思っていたが、どうやら最強は下半身まで最強のようだ。しかしなぜ、ダリアナがクラウディオの巨根を受け入れなければならないのか。いや待ってくれ。そもそも、なぜ、クラウディオが巨根だということをダリアナが知っているのか…。
皇帝の青白い顔は、徐々に赤みを増していく。照れではない。怒りだ。皇帝は大きく息を吸うと、執務室の外にいる誰かに向かって叫んだ。
「レドリガー公爵を連れて来ぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!」
皇帝がこの世に生を受けた時以来の、魂の叫びであった。
男性にあまり興味がないダリアナでも、一度は聞いたことがある。クラウディオ・セノル・ベネルティオン・レドリガー。聞いたことがあると言っても記憶に残っているのはフルネームのうちの、………ティオン・レドリガー公爵くらいであるが。尋常ではないほどに強い騎士であり、天災を思わせるかのような圧倒的な力を誇る騎士。
「圧倒的な、力………?」
思わず口に出す。
ダリアナは誕生日の夜の出来事を思い出していた。クラウディオは圧倒的な力を持っている割には、ダリアナに抱えられていた。それに、ダリアナに抵抗もできていなかったではないか。媚薬の影響もあるし、何よりダリアナが生まれつき力持ちであるという事実が大きいだろう。しかし、それでも黒騎士と呼ばれるほどの強さを誇っているのにも関わらず、自分のような女に抱えられて大丈夫なのかな?とダリアナは要らぬ心配をしてしまった。
「ダリアナよ。クラウディオというその男は、帝国でも珍しい黒髪に青い瞳をしていたか…?」
「………はい。とても美しい黒髪と青い瞳でした」
にっこりと微笑むダリアナに、皇帝もヴェリーナと同じように心臓辺りをガシッと掴み苦しそうに悶えてしまった。
「お前とレドリガー公爵は恋仲だったのか?」
「恋仲?いいえ、誕生日の夜に出会ったばかりです」
「つい最近じゃないか…。なぜ結婚しようと思ったのだ?」
ヴェリーナはダリアナに純粋な疑問をぶつけた。
気になるのも仕方ない。ヴェリーナにとってダリアナとは、目に入れても痛くないほどに、可愛い可愛い妹なのだ。そんな愛くるしい妹の結婚など、いわゆるシスコンと言われるヴェリーナからしてみれば、受け入れ難いもの。しかしながら、ダリアナももう18歳。高貴なるグリドルーシャ皇族の直系。結婚は必然的なものであり、受け入れなければならない。だが、その結婚相手とどう出会ったのか、そしてなぜ結婚したいと思ったのかを聞いておきたいというのは、姉としての本能だろう。
ダリアナは、そんなヴェリーナの思いも知らずして、迷いなくはっきりと告げる。
「クラウディオさんの…レドリガー公爵の巨根は私が受け入れなければならないと思ったからです」
恐ろしいまでの静寂の時が訪れる。心做しか、地に光を降らせていた太陽はすっかりと雲に隠れてしまい、天気が徐々に怪しくなってきた。グリドルーシャの血を引く者は天候まで操ることができるのだろうか。否、そんなことはありえない。だが、時として奇跡が起こることもある。本来の意味とは違った奇跡が。天候の悪化は、まさしく皇帝とヴェリーナから出た負のエネルギーによるものだろう。負のエネルギーの原因は、ダリアナの爆弾の威力にも負けない発言にある。
「きょこん…だと?」
「はい。巨根です」
「きょこんとは、巨根ということか?」
「はい。巨根です」
皇帝は、「ふむ…」と顎に手を当てる仕草をする。
25にもなって恋人や婚約者、妻の一人も作らないレドリガー公爵ことクラウディオに、何か下半身の問題があるのかと思っていたが、どうやら最強は下半身まで最強のようだ。しかしなぜ、ダリアナがクラウディオの巨根を受け入れなければならないのか。いや待ってくれ。そもそも、なぜ、クラウディオが巨根だということをダリアナが知っているのか…。
皇帝の青白い顔は、徐々に赤みを増していく。照れではない。怒りだ。皇帝は大きく息を吸うと、執務室の外にいる誰かに向かって叫んだ。
「レドリガー公爵を連れて来ぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!」
皇帝がこの世に生を受けた時以来の、魂の叫びであった。
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